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午前の測定がすべて終了し、訪れた昼食の時間。 一緒に行く相手などいるはずもない僕は、一人静かに安価で質の悪いパンを握りしめ、人目を避けるように静まり返った裏庭へと向かった。
しかし、そこに佇んでいたのは――あの透き通るような白髪を纏った、才氷様その人だった。
「あっ、人が来た……」
「す、すみません! すぐに移動しますので……」
居心地の悪さに慌ててその場を立ち去ろうとした僕に、彼女は感情の起伏がない声で淡々と呼びかけてきた。
「いいよ、別に」
「っ……?」
「ここは私の場所じゃない。誰が使ってもいいところ。だから、そこで食べていけば」 「わかり、ました……」
気まずい沈黙が流れる中、彼女は静かに高級そうなサンドイッチを一口ずつ口に運んでいる。その押し潰されそうな重苦しい空気に耐えかね、僕は少しでも場を繋ごうと口を開いてしまった。
「あ、あの……どうして一人で食べているんですか? 入学式の時に一緒にいたお友達の皆さんは……」
「あれは友達じゃない。裏では私のことを妬んでいるだけ」
「そ、そうなんですか……」
「そう。友達なんて、私にはいない。……あなたは?」
「僕も、馴染めそうになくて。平民で、弱いですから」 「そう……」 「でも、才氷様は強くて人気者なんですから、本当なら友達だってたくさんいるんじゃないですか?」
僕の軽率な言葉に、彼女は氷のように冷ややかな青い瞳を向けた。
「強いからこそ、いないの。……だから、弱い人はいいよね。群れられるから」
その無体な言葉が、傷つき擦り切れていた僕の心に深く、鋭く突き刺さった。 才能に恵まれ、自分の力だけでどこまでも高く飛べる圧倒的な強者が、なぜそんな残酷な言いぐさができるのか。胸の奥底からフツフツと湧き上がるドロドロとした感情を抑えきれず、激しい言葉が溢れ出していた。
「どうして……そんなことが言えるんですか!」
「私が、強いからだよ」
「弱い人の気持ちなんて分かりもしないくせに! そうやって上から見下しているだけじゃないか!」
「何言ってるの……! 才能なんて、あっても良いことばかりじゃない! 何にも知らないくせに……っ!」
拒絶するように叫ぶと、才氷様は怒りと悲しみの混ざった表情を浮かべ、背を向けてその場から走り去っていってしまった。
「分かるわけ無いじゃないか……僕に才能なんて無いんだから……」
ぽつりと溢れた僕の惨めな呟きは、誰に届くこともなく、静まり返った裏庭の空気に虚しく消えていった。




