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5

主人公の名前を少し変えました。

中庭へ生徒たちが次々と集まり始めた頃、その賑やかで活気あふれる景色の裏側では、人知れず不穏な事態が刻一刻と動き始めていた。


「第二学年火のクラスCに侵入者あり。本校の生徒ではない。教官陣は生徒の安全を最優先とし、直ちに対処にあたれ」


学院内の緊急通信網を駆け巡る緊迫した警報。その呼びかけに、即座に低く重い了解の応答が幾重にも重なる。 だが、そんな危機が目前に迫っていることなど知る由もない僕たちは、ただ能天気に中庭でこれから始まる実技の能力テストを待っていた。


「これより能力テストを行う。二人一組となり模擬戦だ。使用を許可する魔法は殺傷能力の低いものに限る。……もっとも、ここにそこまでの高位魔法を扱える者がいるとは思わんがな。理解したら迅速にペアを作れ」


サーラン先生の容赦ない冷徹な号令が響くと、周囲からは威勢の良い返答が返ってくる。 自分のような平民の落ちこぼれと組んでくれる物好きなどいるはずもない――そう半ば諦めかけていた僕だったが、予想に反して周囲の生徒たちが次々と群がってきた。


「一緒に組もうよ」

「いや、俺と組まないか?」


殺到する声に一瞬だけ期待で胸を弾ませたものの、すぐさまその浅はかな希望は打ち砕かれた。 (ああ、そうか。よく考えれば分かりきったことだ……) 僕は平民で、圧倒的に弱い。実力主義のこの学院において、模擬戦で自分より弱い者から勝利を収めれば、易々と手軽な実績が手に入る。勝ち星を確実に拾うための絶好の「標的」として、誰もが僕と組みたがっているのだ。 周りを見渡せば、あの学年トップの才氷様の周囲には人っ子一人近づこうとしない。あまりにも圧倒的に「強い」からこそ、皆から敬遠されているのだ。

「そこの平民。この俺が組んでやる。文句はないな?」

クラスの中でもひときわ目を引く、淡い水色の髪をした美男子――赤鉄鉱(ヘマタイト)が、蔑むような嘲笑を浮かべて声をかけてきた。周囲からは容赦のない不躾なささやき声が酷く鮮明に聞こえてくる。


「かわいそうに、ヘマタイト様とだなんて……」

「まあ仕方ないでしょ、手頃な弱者と組みたがる奴は多いんだから」

「それもそうね」


容赦なく突き刺さる言葉の刃が、僕の惨めな心を深く、鋭く抉っていく。


「わ、かりました……」


消え入るような声で応じるのが精一杯だった。


「おおむね決まったか。……天青石(セレスタイト)、まだ決まっていないな。では柘榴石(メラナイト)と組め」 「はい」


教官の指名に、周囲から一斉に息を飲む音が漏れた。 「このクラスのトップ1、2が当たるんですって! でも、勝つのはやっぱり才氷様でしょうね」 あの二人がこのクラスの頂点なのかと、僕はどこか他人事のように虚ろな心地で納得していた。


「では、模擬戦を開始する」


二組ずつ中央へ呼び出され、全生徒の視線が注がれる中で次々と試合が繰り広げられていく。 周囲の生徒たちは、己の持つ最高水準の魔法を誇示するように必死で放っていた。水球を鋭く飛ばし、あるいは水の刃を放つ。しかしいずれも殺傷能力は低く、相手に軽い打撲を負わせる程度のものにしかならない。 だが―




―才氷様の試合だけは、完全に次元が違っていた。




「用意、はじめ!」


開始の合図が響いた瞬間、彼女の姿が視界から消え去った。 昔から動体視力だけは良かったからこそ、僕はその一瞬の出来事を奇跡的に目で捉えることができたのだ。彼女は己の足元から相手の足元まで瞬時に水路を発生させ、己の靴が触れる部分だけを滑らかな氷へと変質。猛烈な水の勢いに乗って、滑るように一瞬で距離を詰めた。

息を呑むほどの速度。しかも、相手が一つ詠唱するまでに5つは詠唱できそうなほどの速さでの詠唱。僕とは天と地ほどの格差がそこには存在していた。

寸分の狂いもなく作られた氷の剣が、相手の喉元わずか数ミリの場所でピタリと止まる。


「こ、降参です……!」


対戦相手の情けない悲鳴を聞くや否や、才氷様は氷の剣を脆く霧散させ、一切の感情を交えずに観戦席へと引き上げていった。

そのあまりに高次元な魔法の精度に圧倒されていると、無情にも僕の名が呼ばれた。


「スピネル、ヘマタイト」 「「はい」」


結果は、あまりにも一瞬だった。 僕が必死になって呪文を紡ぎ、血を吐くような思いで拙い詠唱を繰り返している最中に、ヘマタイトは易々と魔法を発動させ、僕は手も足も出ずに一蹴されたのだった。


(ああ……もう、諦めた方がいいのかな。僕には才能なんて、最初から一かけらもなかったんだ)



奇跡や好転など、何ひとつ期待できる状況ではなかった。けれど、無理をして高価な制服や教材を揃えてくれた両親への激しい申し訳なさと罪悪感から、実気に帰るという選択肢すら今の僕には残されていなかった。 もう、何もかもが嫌で仕方がなかった。




模擬戦が終わり、負けて悔しさに顔を歪める者、当然の勝利として鼻で笑う者、弱い者を踏みにじって優越感に浸る者――そして、底なしの絶望に沈む者がその場に残された。

セレスタイト→才氷様

ヘマタイト →淡い水色髪の美男子

メラナイト →黄土色の髪の少女

主人公マクト→スピネルへと変えました。

こんな感じの名前です。名前がわかりにくくてすみません

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