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診断書が突きつけられた日のことを、今でも鮮明に覚えている。
世界最高峰と謳われる「魔法学院エレキトリーネ」の入学許可証を手にした歓喜と、その手で同時に抱えることになった、余命三年半という非情な現実。
死の恐怖はもちろんあった。けれど、僕はどこかで高を括っていたのだ。
(大丈夫だ。だって僕は、この物語の主人公なのだから)
実力主義のエレキトリーネでは、優秀な者なら飛び級で早く卒業できる。
三年、いや、いっそ二年で最速卒業して見せればいい。「平民出身の奇跡の天才」として歴史に名を刻んでやるのだ。そうすれば、僕も、家族も、これまでのすべてが報われるはず。それが僕の背負った使命なのだと信じて疑わなかった。
強いて言えば、もっと時間に余裕があれば良かった。四年しっかり通って、そのあとも魔法の真理を探求する長い人生が欲しかった。だが、限られた残りの寿命でこれほどのチャンスに恵まれたこと自体、奇跡ではないか。
もし、許可証が届かなければ?
もし、この世界が実力主義でなければ?
もし、早期卒業の道が閉ざされていたら?
もし、僕に魔力が宿っていなければ――?
すべての偶然が、まるで僕を祝福するように噛み合っていた。嬉しくて、誇らしくて、たまらなかった。
「あなたは才能があったの。この家系のヒーローよ」
両親は僕を強く抱きしめて喜んでくれた。陰で人知れず涙を流していたことを知っていたからこそ、僕は彼らのヒーローでいなければならなかったのだ。
翌日、決して裕福ではない我が家にしては無茶をして、仕立ての良い制服と私服、そして新品の勉強道具を揃えてくれた。まるで、世界で一番特別な「主人公」を送り出すかのように。
それからの半年間、僕は取り憑かれたように魔法の訓練に励んだ。来る日も来る日も、身を削るような思いで魔力を練り上げた。
「ここまで魔法を使いこなす人は見たことがないわ」 「しかもこの年齢だぞ! マクトは本当に才能があるな!」
両親の弾んだ声が誇らしく、胸を満たす確信が僕の背中を強く押した。
そしてあっという間に半年が過ぎ、ついに迎えた入学式。
式自体は学院長の簡素な挨拶と、教室で教材を受け取るだけの素っ気ないものだった。
だが、そこで一人の少女が僕の目を奪った。学年首席として壇上に立った、透き通るような白髪の少女。息を飲むほどに美しく、見とれているうちに彼女の挨拶すら耳に入ってこなくなるほどだった。
(こんなすごい人たちと一緒に、魔法を学べるんだ)
胸を躍らせ、僕の心は希望で満ち溢れていた。
――これから出会う「本物の天才たち」の存在が、自分を底なしの絶望へと突き落とすことになるとも知らずに。




