第4話
《受付嬢 アンジェリカ・ダ・ベント》
「な、何これ……こんなステータス、ありえるわけが……」
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アリス・アリソン
Lv:99
HP:……
……
……
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「レベルカンストぉおおお!?」
この世には、『レベル』という摂理が存在する。
モンスターを討伐したり、仕事をしたり様々な経験を積むことで『経験値』を得、それが一定量溜まるとレベルが上がる。
特に、モンスターを討伐するためには高いレベルが必須となる。
アンジェリカが受付嬢になるうえで学んだ常識は、次のとおりだ。
・Fランク冒険者……適正レベルなし。
一角ウサギなど、野生動物に毛が生えた程度のモンスターを討伐することができる。
・Eランク冒険者……適正レベル10以上。
ゴブリンなど、低ランクモンスターを討伐することができる実力の持ち主。
低ランクモンスターは、集団で襲いかかられると村が壊滅する程度の、そこそこの脅威。
・Dランク冒険者……適正レベル30以上。
オークなど、中ランクモンスターを討伐することができる実力の持ち主。
中ランクモンスターは、1体現れただけでも村が壊滅するほどの脅威。
・Cランク冒険者……適正レベル50以上。ちなみにワータイガーのガウリンはレベル50代半ばとのこと。
オーガなど、高ランクモンスターを討伐することができるほどの、卓越した実力の持ち主。
高ランクモンスターは、集団で現れたら城塞都市ですら危機に陥るほどの深刻な脅威。
・Bランク冒険者……適正レベル70以上。
上位種モンスターや特ランクモンスターを討伐できるほどの、準英雄的存在。
上位種モンスターとは、ゴブリン・ジェネラル、オーク・ジェネラル、オーガ・ジェネラルなどモンスターの軍団を組織し、国を興すことができるモンスターのこと。
特ランクモンスターとは、キュクロプスやトロールのような巨人種や、リッチのようにアンデットを操ることができるマジシャン種など、冒険者単独や冒険者パーティーではなく、軍隊で挑むべき災害レベルモンスターのこと。
これらのモンスターが現れたら、城塞都市や小国が滅ぼされる恐れがある。
・Aランク冒険者……適正レベル90以上。
ドラゴン、フェンリル、ケルベロス、グリフォンなど伝説的・半神話的魔獣を倒すことができる、まぎれもない英雄。
伝説的魔獣が人前に現れることは滅多とないが、現れた場合はその国が滅ぶ。
・Sランク冒険者……適正レベル99。
魔王、魔神、神、天変地異などを鎮めることができる、現人神。
王国を建国した初代国王が、唯一のSランク冒険者として語り継がれている。
……という事前知識を持っている状態で目にした、『Lv:99』の文字である。
「しーーーーっ」
幼女アリスが、珍しく慌てた様子でアンジェリカの口をふさいだ。
「このことは秘密にしておいてほしいの。ほら、騒ぎになったら面倒でしょう?」
この場には今、アンジェリカとギルドマスターとアリスしかいない。
アンジェリカはギルドマスターに目配せする。
ギルドマスターが若干青ざめた顔で、コクコクとうなずいた。
「そ、それもそうですね」
思わず敬語になってしまうアンジェリカだった。
「かしこまりました。このことは、墓まで持っていくことといたします」
「お願いね」
幼女がウインクした。
ものすごく男前なその仕草に、アンジェリカの胸が少女のように高鳴る。
「レベルのことは承知しましたが、それにしたって、このかたよったステータスは……こんなので、どうしてあの大剣を扱えるんですか?」
「いや、このステータスだからこそさ」
ギルドマスターが訳知り顔でうなずいた。
受付嬢としての教育を受けているアンジェリカは、レベルやステータスについても詳しい。
まず、人には次のとおりのステータスが存在する。
・HP……ヒットポイント。体力。0になると死ぬ。最大値は9999。
・MP……マジックポイント。魔法や一部のスキルを使う際に消費する力。1秒に1ポイントずつ自然回復するほか、ポーションを飲んだり支援魔法を受けることで回復速度が向上する。最大値は9999。
・STR……腕力、物理攻撃力。最大値は999。
・VIT……体の頑丈さ、物理防御力。最大値は999。
・INT……知力、魔法攻撃力。最大値は999。
・MEN……精神力、魔法防御力。最大値は999。
・AGI……素早さ。命中率、回避率にも影響。最大値は999。
・DEX……器用さ。攻撃力に若干影響し、弓や遠距離魔法の命中率にも影響するが、戦闘面ではほぼ死にステと言われているステータス。
一方、職人など手先の器用さを求められる職業や、曲芸師など体の器用さを求められる職業では重宝されるステータス。
最大値は999。
そしてレベルアップ時、人は神から20ポイントのボーナスを受け取ることができる。
ポイントはその人が常日頃から関心を持っていることや、神に対して祈っていた内容に沿って、神がその人のステータスに振ってくれる。
STR~DEX値までは、1ポイント付与で1ポイントのプラスに、
HPとMPは1ポイント付与で10ポイントのプラスになる。
だから、「強い戦士になりたい」と願っている人や、もっと具体的に「STRに振ってくれSTRに振ってくれSTRに振ってくれ!」と念じている人には、神は20ポイント中のほとんどをSTRに振ってくれる。
とはいえ、たとえSTR値が最大の999に到達した人であっても、VITが初期値である5のままでは一角ウサギに突かれただけでも死んでしまうので、そこは神がいい感じに振ってくれる。
冒険者ギルドではそのあたりの塩梅についても研究が進んでいて、「日頃どういう鍛錬を積んで、どういうことを神に祈っていれば、どういうステータスに成長しやすい」というノウハウが蓄積されていたりする。
そもそもレベル99に到達できる人が存在しないが(今、目の前にたたずんでいる謎の幼女のことは置いておいて)、仮に到達できると仮定した場合、最終的に得られるポイントは98 * 20 = 1,960ポイントだ。
そして、レベル1の初期ステータスは次のとおり。
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Lv:1
HP:100
MP:10
STR:5
VIT:5
INT:5
MEN:5
AGI:5
DEX:5
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もっとも平均的に成長した場合、レベル99で次のようになる。
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Lv:99
HP:2540
MP:2530
STR:249
VIT:249
INT:249
MEN:249
AGI:249
DEX:249
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ただ、普通、冒険者はファイタータイプかアーチャータイプかマジシャンタイプに成長する。
典型的なファイタータイプなら次のようになるだろう。
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Lv:99
HP:2,000
MP:500
STR:881
VIT:400
INT:20
MEN:200
AGI:230
DEX:20
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前衛職なので、HPは必須。
【アイテムボックス】での物の運搬や攻撃スキル使用のために、MPは最低でも500は欲しい。
近接攻撃のかなめなので、何を差し置いても攻撃力(STR)が欲しい。
前衛職である以上、防御力(VIT)も必須。
知力(INT)は最低値でよいが、どれだけ『要らない』と祈っていても、運次第で多少は振られてしまうもの。
魔法防御力(MEN)もやはり必要。
どれだけパワーがあっても攻撃が当たらなければ意味がないので、素早さ(AGI)も必須。
DEXは死にステなので、不要。
ひるがえって、大剣使いアリスのステータスは次のとおりだった――。




