光の中で
「た...たすけ...」
打撃が振るわれる。夏目とDが避ける。男はまた俯いてしまう、巨大な鬼のような顔には釣り合わないほどの長髪が顔を隠し落ち武者のような印象を醸し出す。眼には泣きはらした痕のようなものがある。
「こいつ...どうなっているんだ」
「船の乗組員にこんな化け物は居なかった。となると連れてこられたか船員の誰かが」
「AAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
鬼が向かってくる。
「鉄魔法 巨大鉄共和国」
Dが床から鉄柱を発生させ、鬼を捕縛する。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「長くはもたない...鏡崎!」
「鏡魔法 鏡転身」
「鏡射千乱斬」
鉄の錆びが回っていない所に転身し、鬼に斬撃を加える。鏡に映った場所を斬ると対応した鬼の部位にダメージが入る。鬼は苦悶の声を上げる。
「くそっ...硬いな...」
「光魔法 日閃光」
鬼が額から巨大な閃光を放つ。
「ぐああっ!」
夏目が鏡から出てくる。Dも眼を抑える。その後鉄が破壊される音が聞こえた。
「クソッ...鉄共鳴」
夏目を左手で抱え、右手で横の壁を思い切り叩く。そして音で敵の位置を割り出す。壁の向こうの生物の位置を探るくらいにしか使わないが視界の代わりに使うのは初めてだ。
「来いよクソ野郎」
「鉄魔法 矩形的排他鉄」
鉄の柱が大量に生成され、鬼を攻撃する。鬼の突進を押しとどめてはいるが突破されるのは時間の問題だろう。
「新沢達は一体何をしてるんだ...?」
「GIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!」
「おあっ!?」
少し離れた場所で新沢と春は細身の鬼と闘っていた。Dの援護に行こうとしたら突然ダクトから現れた。鬼は剣を二本持って斬りかかってくる。とても素早い身のこなしでこちらを翻弄する。二人は防御がやっとだ。
「くそっ早い」
「鏡魔法 半確定鏡晶拘束」
鬼の足元に硝子の棘を生やして動きを止める。足に突き刺さったらしく鬼が悲鳴をあげる。
「そのまま抑えてろよ!鏡崎」
「創造魔法 暗黒街の大銃撃」
地面に大量の銃を創造し、一斉放火する。鬼はいくつかの銃弾を剣ではじくが全く追いついていない。
「GAAAッ!」
鬼が跳躍し、刀を振り下ろす。
「創造魔法 宝刀八咫烏」
新沢が刀を作り、それを受け止める。だが止めきれず、後ろにさがる。剣も衝撃で振動している。
「鏡魔法 銀雨」
春が後ろから鬼に硝子の破片を当てる。鬼がひるむが決定打にならない。鬼が一歩離れ、威嚇する。もっと威力の高い攻撃がいる。
「このままじゃジリ貧だ。鏡崎、俺に作戦がある」
新沢が春に耳打ちする。鬼が向かってくる。
「乗った」
「GAAAAAAAAAAA!!!」
「鏡魔法 鏡反射」
統が鬼の打撃に合わせて魔法を使う。
「鏡崎!目覚めたか?」
Dがうなずく統を地面に下す。統は地面に降り立ち鬼と対峙する、鬼は反射された打撃の痛みで手を抑えている。
「D!仕留めるぞ」
「鏡魔法 鏡晶拘束」
鬼の足元に棘が生成される。鬼が悲鳴をあげる。
「鉄魔法 転んだ先の剣」
地面から巨大な剣が生成され、鬼の胸を貫く。鬼の悲鳴は一層大きくなるが、間もなく静かになった。
「Aァ...いヤだ...シにたクNAいよ...」
鬼が崩れ落ちる。
「こんなものだろう」
Dが座り込んでため息をつく。
「アルゴは完全に復活している...それを報告しないとな」
「おい見てみろよ。こいつ」
夏目が鬼の方を見る。鬼の皮のようなものが剥がれ、中から一人の人間が出てくる。身体中に痛々しい青あざが出来ていて、顔は悲哀に満ちた状態で固まってしまっている。
「こいつは船の船員の一人だ。戦闘員じゃない...」
「死体は必要だ、連れていく」
「鏡崎!デカイ棘作れるか?」
「ええ、少し時間を頂戴」
「よし、向こうの壁に一個作れ」
「創造魔法 仁王の妙薬」
新沢が魔法で作った薬を飲む。鬼が棘を突っ切り、突進してくる。新沢は正面から剣を受け止める。先ほどとは違い余裕の表情だ。
「早くしろよ!」
新沢は鬼に斬りかかる。鬼は双剣で受け流す。間髪入れず新沢は左手で鬼の顔を殴る。鬼は特にひるむ様子を見せない。
「しかし硬いなこいつの顔は、石でも詰まってんのか?」
新沢の手に血が滲む。
「じゃあこういうのはどうだ」
新沢は剣を口に咥え、左右にステップしながら鬼に斬撃を加える。鬼は攻撃を受け止めるが防御がやっとでじりじりと後ろに追い詰められていく。動きが早く、目で追うことすら困難になる。
「ゴアアアア」
鬼の斬撃速度が上がる。少しづつだが新沢の動きを捉えつつある。
「鏡崎!まだか!」
新沢が剣を咥えたまま器用に話す。
「もう少し...いくわよ!」
「了解!」
新沢が鬼の足を斬り、鬼の足に剣を突き刺して離脱する。
「鏡魔法 鏡晶大迷宮」
巨大なガラスの鍾乳石が鬼を貫く。鬼はしばらく水晶を引き抜こうとするが、しばらく経って水晶から手がダランと垂れる。新沢は水晶の目の前で倒れこんでいた。
「す...まないな...これ使うと動けなくなるんだ」
新沢が座り込んだまま弱弱しく笑う。




