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武闘派のセシルは清楚可憐な姫様になりたい   作者: siro


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8/83

王都にいる両親達は

 レオンは眉間を揉み解しながら王都の館に帰宅した。先ほどまで参加していた議会に頭を悩ませつつ、館にはいれば、使用人たちが出迎えた。

「お帰りなさいませ。旦那様。」

「ただいま。シュゼットは?」

上着を従者に渡しながら聞けば、執事が答えた。

「奥様は、まだお戻りではございません。サムディ家のお茶会のあと、王子様方をお迎えに王宮に向かわれますでの、4時過ぎには戻られるかと」

「そうだった。忘れていたよ」

「お疲れのようで、市民議会で何か問題が?」

「なかなか、難しい事がおきているみたいだね、ディマンシュ達が大切に育てた食物や家畜が何者かに奪われる事件が発生しているそうでね、一部他国のものが暗躍してるとか。襲われ者もいるらしい、我が家から何人か派遣するかもしれん。お前達も気をつけてくれ」

「かしこまりました」

その返事にうなづきながら、首元を緩め、ソファに座り一息つくと、目の前にお盆が差し出された。


「それと、旦那様。お手紙が届きました」

そう執事が差し出すお盆の上に乗せられていたのは普通の手紙とは違っていた。シワが入った、お世辞にも綺麗とは言えないもので、宛名書きは木炭で描かれたおり、パパへというものと、ママへという2通と、ペンで書かれた、お父様へ、お母様への合計4通。それに気づいた時、レオンの頬は思わずほころんだ。


「これは、もしかしてセシルとジョゼフかい?」


「はい、なんでも郵便屋さんという絵本を読んで、セシル様がお手紙を出したいとご希望されたそうです。他のお兄様方宛にも届いております。」

「そうか、アランのは学院に届けてやってくれ。移動中ずっとセシルが心配だと言っていたからな〜」

「はい、ではそのように」

 レオンは手紙を受け取り、拙い文字を眺めた。領地に残して来た息子と娘を思うと心が休まった。二人を連れて来れればいいのだが、王都と領地の距離は長く、また子供は基本5歳〜6歳になるまでにマナを安定させないと領地から出さないのが普通だった。土地とマナは繋がっている、マルディ家のマナは炎が主体のため、炎の力が強い土地でマナが安定するまでは領地から出さず、お留守番となる。


 レオンはまず、セシルの手紙をひらけいた。大きな字で”ぱぱへ”と書かれぐにゃぐにゃとした文字が続いている。文字が反転してる物もあったが、下に描かれた○に棒が生えた二人は、きっとセシルとジョゼフを描いているのだろう事がうかがえた。元気一杯のセシルを表しているようで、思わず顔がにやけてしまった。一緒に綺麗に折りたたまれた紙には、大人の字でセシルが何を描きたかったか、説明書きを添えてあった。

「ははは、そうか、ジョゼフといつも一緒に探検しているのか。ん〜早く帰って来てねっか・・・帰りたくなってしまうな〜困った」

まだ王都について2日しか経っていないのに、レオンは娘のお願いを叶えたくなってしまった。そんなことを思っていると、侍女が扉をノックして入って来た。

「旦那様、失礼致します。奥様がお戻りになりました。」


「おぉ、戻って来たか。息子達と一緒に、この部屋に連れて来てくれ」

「かしこまりました。」


しばらくすると、息子達の声と一緒にシュゼットの声が聞こえて来た。

「貴方、ただいま戻りました。」

「「お父様、ただいま戻りました!」」

「おかえり」


「お父様、何を読んでるの?」

ウジューヌが飛び込むようにレオンの膝の上にダイブして来た。

「ん?セシル達のお手紙を読んでいたんだよ。お前達にもあるぞ」

「セシル?」

ウジューヌが振り返れば、ちょうど執事がまたお盆に手紙を乗せて持って来たところだった。

「こちらでございます。ウジューヌ様」

「汚い字!」

そう言いながらも、ウジューヌは嬉しそうに受け取った。

「ウジューヌ兄様!そういう言い方ないと思う!セシルはまだ文字を習ってないんだから」

「エドガーの方がお兄ちゃんね」

 二人のやりとりに、シュゼットはため息をつきながらも、自分に届いた手紙を受け取った。みんなで手紙を読めば、同じように頬を綻ばせた。


「ふふふ、セシルはジョゼフと仲良く遊んでるみたいですね。でも寂しいから早く帰ってきてね。だなんて、来たばかりなのに、もう帰りたくなって来てしまったわ。」

「お母様、これは、強力な魔法だね!」

エドガーが言えば、二人は思わず顔を見合わせて吹き出した。

「確かに、これは強力な魔法だな」

「そうね」

 二人で笑いあい、手紙の内容を見せ合いっこすれば、ちゃんと中身が違う。母親であるシュゼットには寂しくて少し泣いちゃったということが書かれていた。ジョゼフは、セシルと遊んだ内容や、いたずらした内容の報告が入っていた。


「ジョゼフったら、しっかりとお兄ちゃんになってるわ」

「本当だな」


「僕、返事書く!」

エドガーが言えば、ウジューヌも同じように賛同しました。

「では、私たちも書きましょうか」

「そうだね、寂しくないように、お人形も添えてな」

「ふふふ、そしたら明日はお買い物ね」



その日の晩餐では、レオンは息子達から聞こうと思っていたことを聞いた。

「そうだ。エドガー、王太子様はどうだった?」

「ん〜気さくで、とても頭の良い方に見えました。」

「なるほど。これから一緒に過ごせそうかい?」

今日は王太子との顔合わせであって、正式なご学友になるかどうかは本人次第となっているのだ。王太子からは色よい返事が帰って来ているとは、エドガーの従者からレオンは聞いて居た。

「どうでしょうか?ウジューヌお兄様もついているし、ラザール様もマルセル様もついていらっしゃるし。僕でいいのでしょうか?」

不安そうに考えながら話すエドガーに、ウジューヌは気楽に返した。

「エドガー、騙されんな。あいつ、結構やんちゃなんだぜ」

ウジューヌが訂正を入れて来たことにエドガーは驚いた。

「やんちゃ?」

「そう、今日は初日の顔合わせだから猫かぶってたけど、あいつ俺と同等に遊ぶからな」

胸を張って言うその言葉にレオンは頭を抱えた、ウジューヌと王太子は仲がいいのだが、あまり良く無い方向に仲がいいのだ。

「ウジューヌ、お前は王太子よりも年上なのだから、同等に遊ぶとかするな。あと悪知恵を教えるな!」

「教えてない!聞いてくるから答えただけ!」

「答えるな!」

「王太子に逆らっちゃいけないって教師も言ってただろ」

胸を張って言い返して来た息子にレオンは青筋を立てて怒鳴った。

「それを言い訳にするなっ!教師の嫌いな虫を用意したのはお前だとわかってるんだからな!!」

「なんでバレたし!」


父親と兄のやりとりを聞いて、エドガーはこっそり母親に聞いた。

「お母様、もしかして僕って兄様のストッパー係?」

 その言葉に、母親であるシュゼットは苦笑いをしてしまった。アランが学院に通っている現状、ウジューヌを止められるのは弟のエドガーだけでだという家族の認識なのだ。誤魔化そうかと思ったが、シュゼットはやめた。

「ん〜そうとも言うわね。前まではアランが居たけど、今は休日にしか出仕しないからね〜。きつそうだったらやらなくていいのよ?本来なら一家から何人も使えさせる事はないから。ただ・・・」

「お兄様を止められる者がいないんですね。」

「そうなのよ・・・最悪、ウジューヌを外すかっていう話もあるけど、王太子様が気に入られてるし。せっかく仲の良い関係を崩すのもね」

「悪友・・・」

「・・・」

息子から漏れた言葉に、シュゼットは思わず遠い目をしてしまった、その様子にエドガーは母親も兄で頭を悩ませてることが伺え、思わずため息をついてしまった。だが、大好きな母親のためにも、暴走する兄をとめようと決心した。

「わかりました。がんばります。」

「エドガー、あんまり無理しちゃダメよ?」

「大丈夫です。腹が立ったらウジューヌ兄様を攻撃するんで」

 そういえば、息子達はこうだったわっと心の中でつぶやいたシュゼットは、やっぱり女の子がいると平穏なのねっと小さくため息をついた。息子達は賑やかで楽しいのだけれど、時々大人を驚かせる悪戯をするし、自分では止められないほどの兄弟喧嘩もするのだ。

 セシルがいるだけで、息子達は今までの悪戯っ子な性格が鳴りを潜め、お兄ちゃんとして振舞っていてくれていた事を痛感した。長男であるアランは最初っからそうだったが、他の兄弟は自由気ままなのだ。


「来年、セシルを連れてきたいわ〜」

思わずつぶやいた母親の言葉に、エドガーは聞こえなかったふりをした。

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