夜明けの夢は
ヴィルジニー姫やお兄様たちと一緒に遊ぶ夢を見ました。そこにアンヌ姉姫も来て、抱っこしてくれます。セシルはアランお兄様に抱っこして欲しいのに。
「ううーー」
背中をぽんぽんされました。顔に柔らかい感触。お母様のおっぱいと違います。ふわふわじゃないです。イネスとも違います。イネスより大きいです。ちょっと汗臭い。でもいい匂いもします。
なんだかうるさいです。遠くの方でガヤガヤしてます。
「大丈夫、大丈夫ですよ」
「じーにゃ・・・なうあう」
ヴィルジニー姫が頭を優しく撫でてくれます。そうですみんなで絵本を読んでもらうのです。ウジューヌお兄様とヴィルジニー姫と一緒に!
*
アラン達は玄関ホールで非常用の毛布にくるまり雑魚寝していました。その周りを見張りの青年騎士や騎士達が静かに立っています。交代の時間になると、寝ている人を起こして空いたその場所で寝ていきます。
アランの番になった時、一緒に眠っていたアルファが起き上がりました。
「?!」
アルファが匂いを嗅いだ瞬間、その青年騎士の足に噛み付きました。
「うわ!!この!!」
アルファは素早く避けました。その青年はすぐさまアランが抱きしめる子供に向かってナイフを振り上げましたが、そのナイフは剣によって塞がれました。
「なっ」
見れば、並んで眠っていた青年騎士の剣です。
「見ない顔だな。いつのまにゼルフィスと入れ替わった?」
声をかけてきたのはアランです。自分の周りで休む人間はアランが信頼している人で固められていたのです。周りで眠っていた人達が立ち上がり、青年を囲みます。
アランも起き上がった瞬間背後を振り返りました。黒ずくめの人間が子供を抱き上げて、後ろに投げ飛ばしたのです。
「なっ!アルファ!」
アランが叫ぶとアルファが勢いよく飛び出しました。入り口の方に飛ばされた子供の先には、男が一人立っていました。そして、その男は子供を抱きとめようとした瞬間、子供はくるりと回転してその勢いのまま、男の顔面に蹴りをお見舞いしました。
「ぐはっ!!!」
綺麗に着地すると、もう一人男が現れて後ろから頭を掴まれました。
「セシル!」
アランが叫びます。暴れるセシルと呼ばれた子供は、懐から投げナイフで後ろに投げつけ、男の肩にナイフがうまく突き刺さりました。痛みで男の手が緩んだ瞬間、腕を殴って脱出すると、顔を隠していたフードがずれ落ちてしまいました。赤い長い髪の毛がふわりと浮かびます。
ずれ落ちたフードを気にせず騎士達の元に駆け寄ろうとした瞬間、先ほど蹴りを入れた男に髪の毛を掴まれてしまいました。
「あっ」
髪の毛はずるりとずれ落ちて、ショートヘアに変わり、顔もはっきりと見えてしまいました。
「偽物?!」
男が叫ぶと同時に屋敷の騎士が取り押さえました。セシルのふりをしていたルーシーはしっかりと、本物の屋敷の騎士にかばわれています。
「よくやった」
ルーシーの頭を撫でたのはアランでした。
「・・・アラン様」
震えるルーシーを抱き上げて、背中を優しく撫でました。
「見事な蹴りだったぞ」
「俺、や、やった!」
震える声でルーシーは答えました。しばらくするとキララがきてルーシーを抱きしめました。
「よくやったよ。襲撃者に蹴りを入れたんだって」
「うん」
「キララ、しばらく側いてあげ、褒めてあげて」
「はい、アラン様」
周りの人も騒ぎで徐々に目が覚めていました。
「俺たち舐められてた?」
「これでも騎士見習いだっつうのー。」
ブツブツと言いながら、襲撃してきた男達を締め上げました。
「ちょうどいい、もう朝方だ。朝食の準備をしてくれ。外に出たところで焚き火していいから」
アランが言うと、他の青年達が不満を唱えました。
「えーーー!アラン様のお屋敷で食べれないんですか」
「美味しい料理期待してたのに」
「・・・この人数の料理を賄えと?そんな備蓄あるわけないだろう?この家には今、僕の妹と使用人数人しか滞在してないんだ、それに俺たちにはもともと野営用の食料が日数分配布されてるんだ。これも訓練の一環」
「あーー!!申し訳ありませんでした!すぐ準備します」
アランの笑顔が黒くなってきたのを察して青年達は急いで身支度を整えて外へと飛び出しました。
*
その頃セシルは、なんかいつもと違うことに気づいて目が覚めました。
目の前には、白いシャツです。そして、豊かな。
「おっぱい?」
触ったらママと違います。
「ママじゃない」
「ふふふ、大胆ですわね。セシル様。私です。アンヌですよ」
そういって抱き上げられました。見上げたら、一族の集まりにいる姉姫達の一人、アンヌ姫です。
「ふぇ?」
後ろを振り返ったらヴィルジニー姫もいます、騎士みたいな格好をしてます。昨日のことは夢じゃなかったみたいです。周りはみんな知らないお姉さん達が眠ってます。といいますか、ここは騎士の間ですね。みんな雑魚寝してます。セシルはアンヌ姫に抱っこされてます。アルファもいません。手ぶらです。
「アランお兄しゃまはーふぇーーアランお兄しゃまのミーナーがぁ」
「え?!あお、落ち着いてくださいな。ヴィルジニー、イネスさんをお呼びして。あと、皆さん。起きてますわね。早く身支度を整えなさい。ウジューヌ様を中に入られるまでにね。ということで、ウジューヌ様も直ぐに入れてちょうだい」
アンヌ姉姫が言った途端、お姉さん達が勢いよく起き上がりました。
「はい」
「え!待って」「待って待って!」「ちょ!!アンヌ様」「え、ズボン!ズボン」
あちこちで声が上がって、バタバタし始めました。慌てるお姉さん達の間をヴィルジニー姫が進んでいきます。若干邪魔されてたりしてますけど。
「うぅー」
「はいはい、大丈夫ですよ」
落ち着かないです。ミーナちゃんもいなくなってます。アランお兄様に会いたいです。アンヌ姉姫の気分じゃないんです。
「失礼。入るよ?」
「「きゃー待って!あと30秒!!」」
ウジューヌお兄様の声に、一部のお姉さん達が悲鳴をあげて身支度を整えました。ちなみに、アンヌ姉姫は騎士さんみたいなジャケットを羽織ってるだけです。
しかもアンヌ姫は大きな声でカウントダウンし始めました。0って言った瞬間扉が開きました。でも皆さん凄いです着替え終わりました。
「アンヌ、セシルが目覚めたって」
「はい」
「うーーあらんおにいしゃまのミーナ〜」
この際、ウジューヌお兄様でもいいです。両手を広げたらウジューヌお兄様が抱っこして、朝の挨拶のキスをしてくれました。おでこに頬にお鼻、最後にウジューヌお兄様だけおでこグリグリをします。
「どうしたー、ぐずって。もうちょっと寝てても大丈夫だぞ?」
「やーー。セシルは起きるのー。アランお兄しゃまに抱っこしてもらうのー。ミーナもー」
「・・・」
ウジューヌお兄様が目線だけ周りを見渡しました。無視ですか?もっとおでこグリグリしてあげます。
「ミーナって。セシルがアラン兄様から貰った女の子のお人形か?」
それ以外何があるっていうんでしょう。おでこをグリグリしながら。頷きました。
「それなら、アラン兄様が預かってるよ。取りに行こうか」
「セシルもーあらんおにいしゃまにだっこー」
ウジューヌお兄様のおでこを離れて、セシルは首にしがみつきました。
「俺は逃げないって。ちゃんと連れてくよ。じゃーアンヌ姉姫。ありがとう。」
「いえいえ。眼福でした〜」
「ほら、セシルもありがとうって言おうか」
「ありがとー」
ウジューヌお兄様にくっついたままお手手を振ったら、アンヌ姉姫以外のお姉さん達も振ってくれました。
廊下を出て、ホールに着くとお兄さん達がいっぱいです。
「あ、セシル。起きたの?」
アランお兄様が駆け寄ってきました。
「ミーナちゃん〜」
「あぁ、これだね。」
アランお兄様がミーナちゃんを渡してくれました。ぎゅっとしてからアランお兄様に両手を伸ばしたら、抱っこして朝の挨拶です。
「よく眠れた?」
「セシル。みんなと遊ぶ夢みたよー」
「そうか。よかった」
「わっふ!」
「あ、わんわんだー」
アルファがアランお兄様の足元でおすわりしました。
「アランお兄様とあったし、イネスのところで着替えるぞ」
ウジューヌお兄様が両手を差し出してきました。
「・・・」
「セシル。行くぞ。パジャマのままお外は恥ずかしいだろ?」
「そうだね。お姫様はちゃんと着替えないと。ローブだけじゃ寒いよ」
「うーーー」
アランお兄様にも言われちゃいました。ウジューヌお兄様に移動して、イネスに会いにいきました。
なぜかお部屋に戻らず、近くの談話室でお着替えです。髪の毛も綺麗にとかして、今日は二つに結んで三つ編みしてくるくるです。リボンを巻いて可愛いです。
「おー」
「可愛いですよ」
「ねぇねぇ、イネス。」
「はい」
「なんでお兄様達帰ってきたのー?知らないお姉さんとお兄さんもいっぱい」
「雲クジラが迷子になってこちらにきてしまったため、追い出してくれたんですよ」
「くもくじら?」
「はい、本来なら王都の向こう側。水源にすむ大きな空飛ぶクジラです。そのためにここ最近雨が降り続いていたんです。」
「ほえー」
「騎士を目指す生徒達で編成を組んで対応したんですよ。数人、大人の方の騎士もサポートとして入っていますが。基本は生徒達で対応です。それに、男子はアラン様がリーダーです。女性側はちょうと最年長でリーダーシップを取れる方がいなかったため、アンヌ様が騎士団より派遣されていらっしゃったそうですよ」
「おーーアランお兄様はレイモンみたいに偉い人?」
「そうです」
流石アランお兄様です。
「アランお兄様は、強くてかっこいい!!頭もいいでしょ?だからリーダー!」
「おいおい、俺も強くてかっこいいだろ?」
そう言ったのはウジューヌお兄様です。
「ウジューヌお兄様はいたずらするからダメなんだよぉー」




