嵐の夜に
ピカッと光ってゴロゴロゴロゴロ、お外は雨が続いてます。夜になったらどんどん酷くなってます。
「ひぃーーー!!わんわん!イネス!!」
一緒にベットにいるアルファにしがみついても怖いです。
「セシル一人は嫌なのー!」
「わふ」
「イネスがこないー」
そうなのです、さっきからイネスって呼んでも隣の部屋に居ないみたいで来ないんです。お部屋にある紐を呼び鈴用の引っ張っても来ないです。ピエピエ泣いてたら、アルファがベットから降りて、お人形を取りに行きました。セシルのお人形、お部屋にもあるんです。棚にジャンプしてうまくお口で掴むと、セシルのベットに投げ入れます。
「いたい」
顔面に当たりました。
そのあとも、ラパンフラムとかお人形を持ってアルファも戻ってきました。
「ベットにぬいぐるみは一つだけって約束なんだよ?」
そう、ベットにいっぱいぬいぐるみやお人形を持ち込むと怒られるのです。ダニが増えるからって。でも今日は誰もこないですし、アルファも気にせずセシルの周りに配置し始めたので大丈夫ですね!!いざとなったら、アルファがやってくれたって言えばいいのです!
ドッカーンっとまた凄い雷がなりました。
流石にアルファも驚いて飛び上がりました。
「わんわんも一緒にねんね!」
「わふっ」
アルファもセシルと一緒に並んで急いで布団をかぶりました。一緒に寝れば大丈夫です。アルファは優秀な番犬だって言ってましたし、雷もへっちゃらなはずです。
アルファのおなかは柔らかくて暖かいです。ふわふわするお腹にセシルは安心して眠りました。
夢の中ではお母様やお父様、お兄様たちがセシルと一緒に子供部屋で遊んでます。楽しいです。お人形いっぱい。って思ったらお人形がだんだん大きくなってきました。え、ちょっとそこまで大きいと怖いです、とか思ってたら倒れてきました。苦しいです。助けてー!
「わっふ!」
アルファの声です。目を開けるとアルファがセシルのお腹に足を乗せてます。そして揺らしてます。
「わんわん・・・」
アルファが乗ったからくるしい夢をみたんですね。
「むーーんーーー」
まだ眠いです。お外も暗いです。雨は止んでるみたいですけど湿気がすごいです。
「わふ」
小さくアルファがなきました。なんでしょう、セシルはもう一眠りしたいんです。寝ようとしたら、アルファにおそで引っ張られてベットから下されました。抱っこしてたうさちゃんは重いからセシルの代わりにおねんねです。お布団かけてあげます。アランお兄様からもらった女の子のお人形、ミーナちゃんを抱っこしたら、またアルファが背中を押してきます。もしかしておトイレですか?アルファは一人で行けないんですかね?セシルも一人で行けないですけど。しょうがないです。付き合ってあげます。
テコテコ歩いて行ったら扉が開いてました。アルファが開けたんでしょうか。
「?」
首を傾げてたら頭を撫でられました。セシルの横から誰かが指差してます。お部屋の外に何かるんでしょうか?
わんわんにおそでを噛まれて引っ張られちゃいました。続きの間の扉も開いてました。ダメですね。イネスちゃんと閉めなかったんですね。
廊下はちょっとひんやり、暗いです。
「おしっこ」
いきたいです。お手洗いの方向に行こうとしたら、またアルファにお袖を引っ張られました。いつものお手洗いの方向じゃない方向にアルファは進んでいきます。アルファ用のおトイレに行くんでしょうか?
頭がフラフラします。セシルはまだ寝てたいです。お手洗いもいきたいけどねむいです。
それにしても、誰も居ないです。イネスがいれば抱っこしてもらえるのに、ルーシーはおんぶして走りそうですよね。それは危険です。とか思いながら、アルファに引っ張られて歩いていると廊下の先が騒がしいです。なんか明るいです。
「ん?」
アルファの足が速くなってきてます。進んだ先は玄関ホールです。結構歩いてたみたいです。そんなにセシルあるいてたっけ?誰かに背中をポンポンっておされました。2階のバルコニーみたいな見晴らしの良い場所に出ました。下を見れば、玄関ホールには人がひきしめあってます。みんなローブを羽織ってずぶ濡れです。
「ひとがいっぱーい」
手すりの柱の隙間から覗きながら言ったら、数人振り返りました。その人たちの横でフードをとった人の頭がセシルの知ってる人ですあれは。
「あ!ありゃんおにいしゃまだー」
セシルの声に振り返りました。
「セシル?!」
アランお兄様が気づいて、隣にいひたとに何か指示すると階段を急いで登ってきました。
「どうしたんだい?お部屋にいないとダメだろ?」
「ウーーーわっふ!」
「アルファ?」
「おにいしゃまーおしっこー」
「え?トイレ?ちょっとまって、アルファついてこい」
お兄様が慌てて階段を降りてお手洗いに連れてってくれました。危なかったです。お兄様のおてて冷たくって漏れそうになりました。
ホールに戻ってくると、みんなローブを脱いで暖炉に火が灯されてました。侍女さんたちや騎士さんたちが大慌てでタオルから飲み物と配ってます。
「アラン兄様。居た。部屋の指示は終わった。点呼も済んだ」
お兄様が振り返ると、ウジューヌお兄様も居ました。いつもと違って、二人は小声でやりとりしてます。
「わかった。体力のある奴は見張りを、女性陣は希望者以外は全員休ませて。使用人達も固まって行動するように伝えてくれ。あとルーシーを連れてきてくれ。」
「おう。」
「うじゅーにゅおうぃえあ」
うまく言えないです。セシルは眠さの限界です。
「セシル。良かった。無事だったんだ。スッゲェ寝ぼけてるな」
ウジューヌお兄様が頭を撫でてくれました。ウジューヌお兄様の手も冷たいです。
「あぁ、アルファが連れてきたみたいだ」
「凄いな。アルファ」
そう言ってウジューヌお兄様はしゃがんでアルファをガシガシ撫でました。
「セシル、眠かったら寝て良いよ」
「うーー」
アランお兄様にポンポンされたら、また寝ちゃいそうです。
*
「寝たのか?」
ウジューヌはアランの腕の中で眠ったセシルを見ながら聞きました。
「うん。寝たね。重くなった」
「それにしても、アルファお手柄だな。」
そう言いながら、セシルの濡れてしまった袖に触りました。そこにはアルファの牙で開いてしまった穴があります。
「セシルはどうする?イネスとキララはさっき急いでセシルの部屋に向かったけど。」
「アルファが何かに気づいて連れてきたんだろう、鉢合わせしたとしてもキララがいる。何かあればイネスが笛を吹くからわかるさ。」
二人で会話してる間にも、廊下の奥から悲鳴が聞こえました。
「イネスだ」
その場に対応していた騎士の一人が、素早く確認してきますっと言って駆け出した。
「ウジューヌ急いで準備を」
「わかった」
ウジューヌは頷くと屋敷の奥へと走り出しました。その後をアランはゆっくりと進みます。すると数人アランに声を掛ける人たちが居ました。
「アラン様、点呼終わりました。疲労が多いものから順次休みに入らせています。」
「わかった。見張りは2時間おきに」
「はっ」
「負傷者の応急処置終わりました。」
「わかった。君も休んでくれ」
「はい」
「女性陣は全員騎士の間に移動済みです。廊下は男性騎士が対応しています。」
「わかった」
報告を聞き終わると、アランは廊下に出ました。騎士や従者達が走り回っています。
「アラン様、連れてまいりました。」
レイモンがローブを羽織らせた子供を連れてきました。そして片手に持っていた同じローブをアランに手渡しました。そして二人はすぐすばにあった小部屋に入りました。レイモンの腕にいた子供は降りて、無言でアランの横に立ちました。その間、アランは渡されたローブを片手でセシルに着せました。レイモンは部屋の中を確認し終えると廊下に出て、誰かを呼び止めました。
「こっちだ」
そう言って入ってきたのは、汚れた騎士服に身を包んだヴィルジニー姫とアンヌ姫、そしてウジューヌでした。
「アラン様」
「アンヌ、この子を頼む。そしてヴィルジニー君と一緒に行動してくれ。布団で被せても平気だ。時々潜ったまま寝てるから」
「「かしこまりました。」」
アランは腕に抱っこしていたセシルをアンヌに渡しました。
「んーーーー」
すこし愚図ったセシルに、アランは落ち着かせるように頭を撫でておでこにキスをしました。
「大丈夫。セシル。アンヌ姉姫と、セシルの大好きなジーナお姉ちゃんが一緒だ。3人で仲良くおやすみ」
そう優しく声をかけると、セシルはうんうん唸ってから、みんなで遊ぶのーっとつぶやいて、また深い眠りについてしまいました。
「アルファ、お前は俺と一緒にこい。ウジューヌ体力は?」
「余裕」
「なら、女性達が眠る騎士の間の守りをやれ。」
「はっ」
「俺は、セシルと一緒にホールで休む。できるな」
そういうと、セシルが握っていた人形を足元にいた子供に渡しました。無言で頷くと両腕を上げました。アランはセシルにやるように、その子を抱き上げました。
「やはり、ルーシーでは少し大きすぎるような」
レイモンが抱っこされた息子、ルーシーを見て言いました。
「しょうがない、今年齢が近い子供はこの子しかいないんだ。周りもちらっとしか見ていない。ローブであればある程度ごまかせるさ」
「うん」
ルーシーも頷きました。アランとアルファ、そしてセシルの影武者になったルーシーは玄関ホールへと戻りました。セシルはウジューヌとレイモンの後ろについてアンヌとヴィルジニーが隠すように女性達が休んでいる騎士の間へと戻りました。もうそこでは女性陣達は休んでいる人たちばかりで起きている人はいません。
「では、ルーシーを預かりますね」
アンヌは小声でレイモンにいうと、中に入ってヴィルジニーと一緒に並んで休みました。腕にはしっかりとセシルを抱きしめたまま。
*
イネスは生きた心地がしませんでした。いきなり夜中に召集されたかと思ったら、学院の子供達と騎士見習いの人たちが避難してくるという連絡がきたのです。その対応をしている間に、セシルにはキララかイネスのどちらかがいつもついているのですが、お互い連絡が来た時には相手が向かっているという話を聞かされていたのです。
なので、避難してくる騎士達を出迎えているホールでキララと遭遇した時には二人とも叫んでしましました。
「「セシル様は?!」」
二人はハッとして、すぐ近くにいた同僚に声をかけて駆け出しました。
急いで駆けつけると扉のノブが壊されていました。そして中に入ればベットにナイフが突き刺さっているではないですか。
「きゃー!!セシル様?!」
イネスが慌ててシーツを剥がそうとして手を止めました。
「どう・・・ぬいぐるみ?」
キララも驚いて近づくと、ナイフが突き刺さっている布団の下には大きなぬいぐるみがあるだけです。その周りにも人形やらぬいぐるみでモコモコしていますが、一部壊されていました。
「セシル様じゃない・・・よかった・・・」
「暴れた形跡もないね。しかもこの壊し方。八つ当たりっぽいね。犯人も挿した感触で気づいたんだろう」
その言葉にイネスは顔を青ざめました。
「そ、そんな。早くセシル様を探さないと」
イネスが立ち上がったところで騎士がきました。
「大丈夫ですか?!」
「は、はい。いえ、ダメです。セシル様が」
「セシル様なら今アラン様が保護しました。急いで戻ってください」
その言葉にイネスはホッとしました。
「そうかい、私たちも戻るよ。」
キララはイネスを急かして急いでホールに戻りました。そこにちょうどアランが戻ってきました。足元にはアルファも一緒です。
「よ、よかった。アラン王子、大変申し訳ございません。」
「大丈夫だ。セシルはこの通り無事だし。今夜は僕が守るから、イネス達も女性達がいる騎士の間で休んでいてくれ。何か会った時に指示がしやすい」
「かしこまりました。」
二人は礼をすると、騎士の間に向かいました。
「キララさん。大丈夫でしょうか」
イネスはすぐにアランが腕に抱いている子供がセシル出ないことに気づきました。あの体格はこの屋敷ではただ一人だけです。
「大丈夫さ。曲がりなりにもマルディ族だよ」
キララは安心させるようにイネスの背中を優しく叩きました。




