セシルは秘密の郵便屋さん
「うーーーー違う!!」
ポーンとウジューヌお兄様の手か紙が飛びました。珍しくお兄様がお部屋にこもって机に向かって何か書いてます。
お部屋に入ると怒られるから、扉をうっすら開けて中をのぞいてるんですけど、いつもなら気配で気づかれちゃうのに今日は気づきません。
「ウジューヌお兄様勉強してる?」
上を見上げてお兄様達に小声で聞いたら、楽しそうに見てるエドガーお兄様が答えてくれました。
「セシル、違うよ。あれは恋文を書いてるんだ」
「おぉ?」
「なんであんなに悩んでるの?エドガーお兄様」
ジョゼフお兄様もわかんないみたいです。
「・・・ヴィルジニー姫に好かれたいからだろ?」
「「??」」
エドガーお兄様はセシルとジョゼフお兄様の顔をみてため息をつきました。ひどいです。頭ポンポンされました。
「お子ちゃまは、まだ知らなくて良いよ」
「むー」
「お子ちゃまじゃないもん」
ジョゼフお兄様が小声で抗議してます。セシルはウジューヌお兄様が気になります。
またポーンって紙が飛んで、セシルの足元まで転がってきました。広げたら色々書いてあります。しかも綺麗な紙です。
「紙がもったいないよ。ばあやが紙は高級品だから無駄遣いしちゃだめて言ってたよ。」
「それは、セシルが遊んだからだよ。まーお兄様もあれ以上ゴミを出したら婆やが怒りそうだね」
エドガーお兄様が扉から離れちゃいました。セシルとジョゼフお兄様も一緒に離れます。今日はウジューヌお兄様とは遊べなさそうです。
「ご満足いただけましたか?」
笑いながら、お兄様の従者、デジレが言いました。
「「うん」」
「ねぇ、どうするの?エドガーお兄様。ウジューヌ兄様は遊べないよね。アランお兄様はお父様とお出かけ中だし」
ジョゼフお兄様が不満そうに言いました。セシルはお兄様が捨てた紙が気になります。
「ゔぃ ・る・じー?可愛い?綺麗?」
「セシル様、人のお手紙を読んではいけませんよ」
イネスに注意されちゃいました。でも、お兄様が捨てた紙はもったいないです。
「あ、セシル、ジーナお姉ちゃんにお手紙書く」
いいこと思いつきました。ばあやを見つけてお願いすると、セシルが持ってる紙に気づきました。
「まぁ、セシル様。これはどうされたのです?」
「ウジューヌ兄様がポーンってしたお手紙。恋文?」
「・・・この紙の裏側を使いましょうか」
「え?!コンスタンスさん?!」
イネスが驚いてます。セシルも驚きです。
「デジレに頼んで、こっそり拾ってきてもらいましょう。」
「えぇ?!」
「もちろん、使うのはセシル様だけですよ。」
「僕は?」
「ジョゼフ様だと、流石に大げんかになりますから。セシル様ですと、甘いですしね」
「確かに」
なんだか、それはいいことなんでしょうか?
お部屋で待ってたら、デジレがウジューヌお兄様が捨てた紙を持ってきました。そしてなぜか、お母様も一緒です。
「ママ?」
「ふふふ、なんだか楽しそうなことしてるから、ついてきちゃったわ」
「流石奥様。それで、デジレ、ウジューヌ様はお手紙書けたかい?」
「えぇ、結局悩みに悩んで、とてもそっけない文章になっておりました。」
「あらあら、こんなに素敵な文をしたためたのに?」
そう言いながら、お母様はくしゃくしゃになったお手紙を丁寧に広げていきます。
「さぁ、セシル。この裏にお手紙を書いちゃいましょう。もちろん、誰かが恥ずかしがって捨てた紙を使ってるってちゃんと書くのよ」
「ほえ?」
お母様の言葉に、ジョゼフお兄様とエドガーお兄様はちょっと後ずさりしてます。どうしたんでしょうか?
セシルがお手紙を書いてる間に、お兄様たちもヴィルジニー姫あてに書くことになりました。今度遊びに来た時に何をするかとか色々です。
そのお手紙をばあやが一つの封筒に入れて、ウジューヌお兄様のお手紙と一緒に送るそうです。
「いいのかなー?」
エドガーお兄様が心配そうに呟きました。
「大丈夫ですよ。セシル姫をドレスの中に隠しちゃうお姫様ですから」
そう言ったのは、デジレでした。セシルはちょっと用事を思い出しました。静かに、そろそろと離れることにしましょう。
後ろでイネスがクスクス笑ってます。振り返ったら負けです。
「あ、アランお兄様だ」
廊下の先にアランお兄様を発見しました。
「あ、セシル。お母様を知らない?」
「ママは、談話室にいるよー。さっきまでお手紙をお兄様と書いてたー」
「お手紙?」
「うん、ジーナお姉ちゃんに」
「そうなんだ。」
アランお兄様が抱っこしてくれました。
「お父様とのお勉強終わったの?」
「うん。終わったよ。」
「やったーセシルと遊ぼう!」
「んーセシルと遊ぶ時間はないかなー。ごめんね。今は休憩時間なんだ。このあと視察のレポート書かないとけないんだ。」
思わずぷくーって頬を膨らませちゃいました。最近、アランお兄様と遊べないです。
「ふふふ、かわいい」
そう言ってお兄様はセシルの膨らんだ頬にキスしてきました。アランお兄様とまたお母様たちがいるお部屋に戻れば、お茶をしていました。
「あら、お帰りなさい。アラン。ふふふ、セシルも」
「ただいま戻りました。」
「「おかえりなさーい。アランお兄様」」
「ただいま。ウジューヌは?」
「ウジューヌお兄様は、きっとお部屋で悶々としてるよ」
エドガーお兄様が答えました。
「へー・・・何か楽しいことでもあった?二人とも顔がにやけてるぞ」
その言葉にエドガーお兄様とジョゼフお兄様が顔を見合わせて笑いあってます。
「ふふふ」
「にひひひ」
「私から説明するわ」
お母様も楽しそうに、ヴィルジニー姫にお手紙を書いたことを説明しました。
「なんだ、僕も参加したかったなー」
「あら、アランはダメよ。本当に口説きにかかりそうですもの」
「やだな、弟の婚約者を口説くわけないでしょ?」
「ふーん。・・・お茶会」
「・・・」
アランお兄様とお母様が笑顔で固まってます。
そんなこんなで、ヴィルジニー姫のお返事が返ってくるまでセシルたちはいつも通り。ウジューヌお兄様はなんか枕に向かってブツブツ言うようになりました。
そして、セシルにお手紙がきました。ジーナお姉ちゃんからです。
「むっふー!!」
ウジューヌお兄様が悔しそうな顔をしてます。
「なんで、セシルに」
「セシル、ジーナお姉ちゃんにお手紙書いたんだもーん」
「・・・」
「「僕たちも送ったー!」」
「はぁ?!」
ウジューヌお兄様が叫んでます。もちろん、ウジューヌお兄様の手にはちゃんとヴィルジニー姫からお手紙がきてます。
「わーい。かわいい絵が入ってるー!みてみて!イネス見て!」
セシル宛にはかわいい絵手紙がはいってました。お花とお姫様がかいてあります。
「わぁ、本当ですね。あ、セシル様。これ仕掛け絵ですよ。ほらここを引っ張ると」
「おおおお!!」
ひっぱるとお花がくるくる動きました。
「・・・なんかセシルの手紙の方が豪華」
「ウジューヌお兄様、嫉妬は醜いですよ」
エドガーお兄様が冷たく言ってます。
「なんで、おれの婚約者なのに」
そう言いながらも、お手紙読んでる顔はデレデレです。
「パパとおんなじ顔」
セシルが呟くと、ジョゼフお兄様もエドガーお兄様も頷きました。
セシルには、お手紙ありがとうございますって書いてありました。とっても素敵なお手紙で、これからも同じ紙でくださいって書いてあります。お兄様が捨てたラブレターでってことでしょうか?小声でイネスに聞いたら、そうですって返ってきました。
ジョゼフお兄様とエドガーお兄様も、セシルのお手紙をみてニヤニヤしてます。お兄様たちも同じような事がかいてありました。
「ま、僕たちは時々お兄様が失敗した時だけだね。」
エドガーお兄様が小声でいうと、ジョゼフお兄様はちょっと不満顔でした。
「ジョゼフ。ヴィルジニー姫はウジューヌお兄様の婚約者」
「はーい」
そんなやりとりをしているのに、ウジューヌお兄様は一人背を向けて、なんか嬉しそうに手紙を見つめてます。そのままふらふらと子供部屋から出て言っちゃいました。
「デジレ、ウジューヌお兄様が変!」
「そうですね。恋は盲目といいますか」
デジレは苦笑しながらウジューヌお兄様のあとを追いかけていっちゃいました。




