こんにゃくしゃ?
「「「こんや(にゃ)くしゃ?」」」
「そう、婚約者候補の方々よ」
お母様が朝食の時間にそう言いました。お兄様たちも驚いてます。セシルはびっくりしてスプーンの位置がずれちゃいました。
「セシル、ほっぺは口じゃないよ」
そう言いながらアランお兄様が顔を拭いてくれました。というか、アランお兄様冷静ですねというか、お母様のお話聞いてます?ウジューヌお兄様は驚いてます。
「え?なんで俺も?!アランお兄様だけでいいじゃんか」
「あら、別にウジューヌの年齢で、婚約者がいてもおかしくないからよ。アランの時は、ほらセシルが生まれたばっかりだったし、アランも嫌がったからね」
へ?そうだったんですか?確かにアランお兄様は跡取りなのに婚約者の話を聞いたことなかったですね。
「別に今も必要だと思わないです。ねーセシル」
同意を求められてもセシルは困ります。お兄様があーんってしてくれますけど良いんですか?お母様の方向かなくて。思わず癖で食べちゃいましたけど。
「アラン」
お父様がため息をつきなが呼んでますよ。それもがっつり無視です。あ、果実水飲みたいですとか思ったらアランお兄様がすかさず取ってくれました。アイコンタクトで通じるって楽ですよね。
「おい、無視をするな、アラン。そんなに嫌なら、気になってる女性でもいるのか?」
お父様の問いに、アランお兄様は何故かセシルの顔をみたまま答えました。
「・・・セシルです。ねー」
「ねー?」
キラキラ笑顔で同意を求められましたけど、それってどう言う意味でしょうか。セシルはもう一人で食事できますよ。さっきはちょっと驚いてミスをしただけです。
「アラン!お前は、ほっといたら一生結婚しない気だろう」
「まさか、そんなことはありませんよ父上」
アランお兄様の嘘くさい笑顔を初めて見ました。お父様はこめかみに青筋が立ってます。お母様は頭を抑えてますし。
お兄様たちは小声で何か話してます。
「怪しいな」
「怪しいよね。」
「そういえば、アランお兄様から女の子の話聞いたことない」
「だな」
「そもそも興味あるの?」
「異性でセシル以外に甘い顔をしてることないよね」
「やっぱりエドガーもそう思うか?」
「うん」
「まさかお兄様」
「「・・・・」」
なんでしょう、セシルとウジューヌお兄様達と少し離れてて聞こえないです。
「ウジューヌ、僕にそんな趣味はないよ」
今度は怖い笑顔でウジューヌお兄様に言いました。ウジューヌお兄様は何か怒らせること言ったんでしょうか?
「ひぃ!じょ、冗談だよー!」
「そう思われたくなかったら、婚約者を決めろ。お前は跡取りなんだぞ」
「わかってます。」
「婚約者候補の令嬢を呼んだお茶会を開く、ちゃんとしっかりと全員と会話するように」
「・・・はい」
「気になる人がいたら言うんだぞ。」
「わかってます」
なんだかピリピリしてます。
「アランお兄様?・・・パパ?」
「大丈夫だよ。セシル。そんな泣きそうな顔をしないで」
アランお兄様が優しく頭を撫でてくれました。
「ウジューヌも婚約者決めに入ってるの忘れるなよ」
「あ・・・」
朝から何だか波乱の予感です。
*
そして、あっという間に婚約者候補の人たちを呼んだお茶会が開かれました。セシルとエドガーお兄様とジョゼフお兄様はお茶会にいっちゃダメだそうです。小さい子供は社交場に行っちゃダメなんですって
「つーまーんーなーいー」
「きーにーなーるー」
ジョゼフお兄様と手を繋いで、エドガーお兄様が通せんぼする扉の前で押し問答です。
「しょうがないだろ。二人とも怒られるよ」
「セシルお姫様のお茶会みたいー」
「エドガーお兄様は気にならないの?義理のお姉さまが決まるかもしれないんだよ?」
「ダメだったら。」
「おいしいお菓子が出るんだって!セシル食べたい!」
「僕もお菓子食べたい!」
「お菓子は僕たちにも出されてるよ。」
エドガーお兄様が後ろを指差しました。確かに机の上にお菓子が並べられてます。でも、お茶会に出してる方を食べたいんです。お外でお茶会してるらしいですよね。見に行きたいじゃないですか。
「「ちょっとだけー」」
「お部屋からみるからーいいでしょ?」
「「おねがーい」」
「ダメだって!僕たちは子供部屋でお留守番!!そう言われただろ!」
「「けちー」」
「けちじゃない!」
エドガーお兄様が動いてくれません。せっかく今、イネスもバジルもコームもお手伝いで駆り出されていないのに!ジョゼフお兄様と積み木や兵隊さんを並べて作戦会議です。
「エドガーお兄様どいてくれない。ジョゼフお兄様どうしよう〜」
「だね、どうしょっか。まずやってる庭がここ。僕たちがここ」
「反対側!」
「そう、だから、屋敷の中を移動した方が早い。」
「おー」
「でも、扉はエドガーお兄様が塞いでる。」
「うん」
「つまり、ウジューヌお兄様の戦法でいくしかない」
それは一つしかないじゃないですか。
「・・・窓」
「そう窓」
ちらりと見れば、エドガーお兄様が扉の前で、本を読み始めてます。
「セシルはウジューヌお兄様みたいに飛び降りれないよ?壁づたいにしか降りれない。途中で絶対エドガーお兄様に見つかっちゃう」
「そこなんだよね〜僕もウジューヌお兄様みたいに飛び降りたことないんだよね。できるかな?・・・うまく降りれば」
「ジョゼフお兄様・・・危ないよ」
前に真似っこしようとして婆やに怒られたんですよね。セシル達がやったら足の骨が折れるって、あれはウジューヌお兄様だから出来る事なんですーって。
「いや、できる。シーツを使えば。王都で買った本にあったんだよね。熱気球っていうのが」
「ほえ?」
気球ってあの気球ですかね?セシルなぜか知ってますけど、簡単にできるんですか?ジョゼフお兄様がベランダの窓を開けて、急いで戻るとお昼寝用のベットからベットカバーを剥ぎ取りました。
「こうゆうのは勢いが大切なんだよセシル。」
「うん?」
「端っこ持って」
「あい」
「手を繋いで」
「うん」
「一緒に走る!」
「あい!」
二人一緒にベランダに向かってかけながら、ジョゼフお兄様が炎の球体を作りました。ふわっと浮かんだベットカバーのままジャンプです。炎の球体はカーバーの中でホワホワしてます。
「ジョゼフ!!セシル!!!」
エドガーお兄様が叫んでます。
「うわーー!!」
「きゃーーー!!」
二人一緒に落ちていきます!でもゆっくりふわっとです。セシルの手からベットカバーが外れそうなタイミングでジョゼフお兄様が気づいて持ってくれました。二人一緒に倒れるように地面に着地です。
「やった!」
「しゅごーーーい!!こわかったーたのしかったー!」
「よし!行こう!!」
「うん!」
「バジルー!!!二人が逃げ出したー!!!ばあやー!!!」
「「げっ」」
エドガーお兄様が大きな声で叫んでます。
「二人ばらばらで逃げよう!」
「うん!!」
「集合場所は、お茶会のテーブルの下!」
「あい!」
「どっちが早く着けるか競争だよ!」
「わかった!」
*
その頃お茶会では、長いテーブルにお姫様達が座っていました。そのテーブルにアランとウジューヌが離れた場所で対角線状の先に座っています。二人とも普段のやんちゃな少年ではなく、ちゃんと王子様としてにこやかにお話をしながらお姫様と会話していました。
するとウジューヌが何かに気づきました。ほんの少し深く座りなおし、意味深に唇に指を当てます。お姫様達は首を傾げながら黙っていると。
「わっ!!!」
なんと、ウジューヌの足の間からテーブルクロスが勢いよく上がりました。出てきたのは女の子、セシルです。
「!!!」
お姫様達は口に手を当てて声をこらえてます。勢いよく出てきたため、そのままウジューヌの腰にセシルはぶつかりました。ウジューヌはセシルの両方の頬をつまんで言いました
「この、いたずらっ子め。今日は大人しく子供部屋じゃないのか?」
「あれ?驚かないの?」
セシルはウジューヌの腰にしがみつきながら首を傾げてます。その様子にウジューヌは笑いを堪えました。実は、机の下からセシルの悪巧みしてる時の笑い声が聞こえたので気づけたのです。
「俺に同じ手は通用しないんだよ。あと、笑い声がしたしな。そうだ、セシル。アランお兄様の所にやりに行けよ」
「アランお兄様もこのテーブルにいるのー?」
「あっちにいるぞ」
そう行って指差した方向に、セシルはまたテーブルの下に潜り込んで向かいました。アランはすでに、ウジューヌの行動でセシルがいることに気づいてます。同じように椅子に深く腰掛けなおして、同じように唇に指を当てて静かにするようにすれば、お姫様達は興味津々に見てきました。そして、テーブルの下からセシルが飛び出して腰にしがみつきました。
「わっ!!」
「いたずらっ子なお姫様。子供部屋は飽きたのかな?」
「むーアランお兄様も驚かないー」
「ふふふ、僕たちは驚いてないけど、お姫様達は驚いてるよ」
「お?」
左右を見れば楽しげに見ているお姫様達がいました。橙色の髪の毛や赤い色、ピンク色っぽい人もいます。アランの横にいたお姫様が聞きました。
「可愛らしいお姫様、アラン様の妹君ですか?」
「うん。ウジューヌに似ていたずらっ子なんだ。セシル、ジョゼフとエドガーはどうしたの?」
「エドガーお兄様は〜けちなのーお部屋から出ちゃダメって言うから、ジョゼフお兄様と抜け出したんだよ?」
「抜け出しちゃったのか。じゃージョゼフは?」
「エドガーお兄様が大きな声出したから、ばらばらにきたよ〜どっちが早くお茶会のテーブルの下にこれるか〜競争〜!セシル一番?」
「はははは、そうかテーブルの下が集合場所だったのか、そうだね、一番だね。」
アランは優しく頭を撫でながら答えました。
すると遠くの方でエドガーの”いたーー!!”という声が聞こえました。どうやらジョゼフは庭に出る前に見つかったようです。
「ねぇねぇ、ご褒美は?」
「ご褒美?そうだね〜お菓子かな」
そういうとアランはテーブルの上にあったマカロンをとってセシルの口に入れてあげました。
「〜!!おいしぃ〜」
「そう、良かった。」
「あ」
何か気づいてセシルがまたテーブルの下に入り込みました。するとちょうど給仕係の人がお茶を足しにきたのです。そのあとに慌てたようにエメが駆けつけて、アランに耳打ちしました。
「アラン様、セシル様が脱走したそうです。ジョゼフ様は確保済みで、口を割らせたところ庭を目指しているようので、お見かけしたらお知らせください」
「あぁ、わかったよ」
アランはそう答えると、エメが去っていきました。そのやりとりにお姫様達はくすくす笑っています。
「だってよ、セシル。どうする?」
そう声をかけるとまた、机の下からセシルが顔を出しました。
「セシルはまだここにいたいー子供部屋つまんないんだもーん。イネスもお手伝いでいないしーお兄様はお人形遊びしてくれないしー」
そう言うとまた机の下に潜ってしまいました。反対側でウジューヌの目線が下に行くのを見て、どうやら向こうに移動したようです。
「ウジューヌお兄様ー」
「おう、どうした」
「何か楽しい遊びしてー」
「おい、俺は今お茶会に参加中。遊びはできないんだよ」
そう言いながらウジューヌはセシルの鼻をつまみました。開いた口に、すかさずすっぱい木苺をいれます。
「〜〜〜〜!!!!」
「大きな声を出すとバレるぞ〜」
セシルは涙目になりながらウジューヌのお腹をパンチします。
「あはははは、いたずらっ子にはちょうどいいだろ」
「ウジューヌお兄様は意地悪なのー!こんにゃくしゃにー嫌われればいいのー」
「まだ婚約者は決まってないぞーアホセシル」
「そうなの?でも、ばあややイネス達が言ってたもーん。お兄様は好きな子をいじめるタイプだから、女の子に嫌われるってー」
「おい、なっつう会話してるんだ」
「女子の秘密のお茶かいって言ってたー」
「あ?」
セシルは横にいるお姫様に気づきました。楽しげに見ている様子に、セシルはそのお姫様に言いました。
「ウジューヌお兄様の弱点はねー・・・わき!」
そう言うとジャンプしてウジューヌの脇めがけてチョップをしました。
「うぉっ!!!」
そしてそのまま机の下に逃げていきました。
「まぁ、ウジューヌ王子大丈夫ですか?!」
「ウジューヌ王子」
「あの、バカセシルめ・・・」
セシルはまたトコトコと机の下を通ってアラン王子のところにいきました。
「ばぁ〜!」
「やぁ、セシル。派手にやったねー」
アランが頭を撫でながら苦笑してます。
「えぇ、そのおかげで見つけられましたが。やはり黙っておられましたね」
そう言って横からぬっと出てきたのは。
「バルナベ・・!!」
伸びてくる手に気づいて、しゅっとセシルはまた机の下に潜り込みました。
「セシル姫!!」
「あははは、素早くなったな〜」
「アラン様・・・ちゃんとセシル姫を捕まえておいてください。」




