お姫様は甘いもので気づきません
「ん〜・・・」
ドラハは唸りました。先日、ドミニクに化けて侵入して来た者は何も語らずに自害してしまいました。他にも数人不審者を捉えたのですが、それも同じ結果でした。
「どう思う?」
ドラハのつぶやきに机を取り囲むように、ドミニクとピエールとそしてレイモンが同じように思案顔でいました。
「今までも、神の庭の子を狙う者達はいましたが、ここまで執拗に狙って来ていなかったと思います。」
ピエールの言葉に、他の人たちも頷きました。
「我が家の姫だから、っていう理由にしてもしつこいのよね。しかも、こんな悪どい事をしてまで?」
ドミニクも机の上に置かれている報告書を指で叩きながら言いました。何よりも自分の姿でセシルを唆そうとしたのが許せません。
「ふーむ。今までにない事態です。セシル姫と王太子はやはり他の子供達よりも狙われているそうです、むしろ記憶が薄い子は、完全に狙われなくなったとも報告が来ているようです。といっても、油断はできませんが」
レイモンの言葉にドラハ目尻を指で揉みほぐしました。
「さっぱり分からんな。何が目的だ。セシルの記憶なんぞ違う世界だというじゃないか、王太子のは知らんがな。イネスが持っていた記憶と似ているという話だぞ。」
「・・・となると、記憶なんて関係ないじゃないかしら。」
ポツリと呟かれたドミニクの言葉に、みんな顔をあげました。
「関係ない?」
「あの子、火のマナが強いでしょ?孫達も溺愛しているわ、マナだけをみたらあの子を欲しがる一族はいるんじゃない?それに王太子もかなり強いマナを持っている」
「・・・神の庭の子というのはいい隠れ蓑になっているという事か?そうなると、種族問題に発展するぞ。・・・セシルを鍛えるか」
ドラハは天井を見上げてつぶやきました。でも、セシルは素直に学んでくれるのか悩みどころです。レオンも無理に教えるつもりがない様子ですが、この状況では、何かあった時自力で戦えるようになっていた方が良いと思うのです。武闘派一族だからこその考えですが。
「それとなく、遊びながらでしょうかね・・・」
レイモンがつぶやきました。
「誰が適任か・・・、とりあえずイネスやデジレにも話を通そう。あとレオンにもな」
「「かしこまりました。」」
*
「なーにそれ?」
居間に不思議なものができてます。案山子みたいな。お腹みたいな丸い部分の上には頭見たいな小さめの丸が乗ってます。お腹っぽいところからは、にょろーんと腕と足っぽい紐がでてます、先端はお星様。
「んー、こないだ行った街でな見かけたんじゃよ。これをこの剣で叩いて遊ぶそうじゃよ」
お祖父様がそう言ってセシルにピンクに塗られた木の剣を持たせて、不思議な案山子の前に立たせました。
「・・・叩く」
「そう、膨らんでる腹を叩くんじゃ。突いてもいいぞ。壊れると中からお菓子やオモチャがでてくるんじゃ」
ほれほれって催促されちゃいました。え、逃げられない感じです。これってセシルのために用意したって事ですよね、じゃーこれって叩くまで移動できないですよね?軽く突くとするとグワーンと揺れたけど、それだけです。
「もっと強くじゃ」
「えー・・・」
お祖父様がニコニコで言って来ます。頑張って木の剣で叩いたら、藁みたいな素材で破けて来ました、中からプロスベールがくれたキラキラなショコラが出て来ました。
「ショコラ!」
「ほらほら、もっと叩いて壊してだすんじゃぞー」
引き抜こうとしたら取れません。むーなんか魔法がかかってるみたいです。つっついたり、叩くととちょこっとずつ出て来ます。
「えいえいえい!!」
キラキラショコラがポロポロ落ちて来ました。でも、もう腕が疲れたし手が痛いです。
「もう手が痛いー。ショコラたべるー」
落ちたショコラをとったらお祖父様が頭をなでなでしてくれました。
「ふぉっふぉっふぉ、すごいすごい。いっぱい出て来たなー。じゃーそのショコラでお茶をしよう」
「・・・セシルがとったの」
「大丈夫じゃよ、取らないぞ?」
「・・・一個だけならいいよ」
「優しいの〜」
お祖父様が頭をなでなでしてくれました。ちょっと楽しかったから、またやってもいいかなーって思いました。次は違うお菓子を入れるってお祖父様が言ってますし。
別の日には、中庭にいっぱい風船が浮かんでました。
「風船!!!」
「ふふふ、どう!セシル!!お祖母様と一緒にこの風船割りゲームをしましょう!」
「風船割りゲーム?」
でも、風船はセシルの背より高い場所にあって手が届かないです。どうやって割るんですか?と思ったらお祖母様が弓を持って来ました。
「これで当てるのよ!本当はシュゼットの方が得意なんだけどね、いい?見てて」
そう言ってお祖母様が中庭に浮かぶ風船の一つを弓矢で落としました。するとパンっと割れて紙吹雪がまいました。
「きゃーーー!!綺麗!!!」
「当たりにはお菓子が入ってるのよ。やる?」
「やるー!!セシルもやるー!」
お祖母様からセシル用にってピンクの可愛い弓矢をもらいました。可愛いです!魔法少女とかにある、おもちゃみたいです。最初は当たらなかったけど、お祖父様も来て当て方を教えてもらったら、ポンポン当たって楽しいです。
半分くらい割ったら腕が疲れちゃいました。
「腕ちゅかれたー・・・もっとわりたいー」
「んーもう、無理ね〜セシルの可愛い腕がプルプルしているわ。マッサージしないと明日は筋肉痛ね。」
「えー。」
「ふふふ、でも凄いわ〜セシル!半分も割れたわよ!」
「むっふーセシル凄いのー!お菓子とおもちゃ!全部セシルの?」
落ちてるぬいぐるみやお菓子をイネスが回収して来てくれてます。風船にはお菓子以外にもぬいぐるみも入ってました。
「えぇ、全部セシルのよ」
「やったー!!」
なんでしょう、最近お祖父様とお祖母様からいっぱいお菓子やおもちゃがもらえます。しかも楽しい遊びばっかりです。
「イネスイネス!ラパンフラムいっぱい!みて、いっぱい!」
風船から出て来た手のひらサイズのラパンフラムのぬいぐるみはシリーズみたいで、耳にリボンがついてたり、尻尾にリボンがついてたりして可愛いぬいぐるみです。
「まー本当ですね。いろんな色のリボンをつけてるんですね。」
「イネスー腕上がらなーい」
ラパンフラムを手に持ちたいのに、腕がプルプルして上がらないです。
「そうですね。今日はいっぱい遊ばれましたからね。」
イネスが優しくセシルの腕をマッサージし始めました。
「おーきもちぃー」
「明日も頑張りましょう」
「ん?」
「ふふふ、明日もいっぱい遊びましょう。」
「うん!」




