隣人の王子
今日は授業も終わって自由時間です。お屋敷の中を探索してたら、お祖母様の話し声が聞こえました。
「バーバの声ー」
「今はお仕事中ですから、お邪魔しちゃダメですよ」
イネスがそう言って着ました。お祖母様のお仕事ってそういえばなんでしょう?気になります。
「ちょっとだけー」
そう言ってかけだしたら、アルファも一緒に駆け出しました。
「そうか・・・で・・・ある」
「**** *** * ** *****」
漏れて聞こえる声に聞き覚えがあります。うっすらと開いていた扉から覗き込むと赤い炎の壁が、鏡みたいに机の上に上がっていました。
「ん?どうした姫」
お祖母様がこっちに気づきました。
「誰とおしゃべりしてるのー?」
「姫も良く知る人だよ。」
<お?フィー姫がいるのか?もう体調は平気か?>
「あぁ、もう平気さ。おいで姫。」
お祖母様のお膝によじ登ると、赤い炎の壁はこっちから見ると窓みたいに別の世界が映ってました。
「あ!ばるとろー!」
「そうじゃよ。よく覚えてたのー」
お祖母様が頭を撫でてくれました。
<元気そうでよかった。こっちにいたときは痩せて弱々しかったからな。見せてくれてありがとう>
「いや、なに。ずっと気にしてるようじゃったからな」
バルトロが話す言葉がよくわかりません。バルトロもどこかのお部屋にいるみたいです。後ろの窓の外は知らない風景です。
「ねぇねぇ、カルロはー?」
「あやつも元気じゃよ。ふむ、バルトロ、カルロは頑張っておるか?」
<あー頑張ってるぜ。フィー姫とお話しするんだーってな>
「なるほど、それで成果はいい感じかな?」
<王子としてはまだまだ・・・だが、父親として言わせれば、俺の子にしちゃー優秀な息子さ。>
「なるほど・・・」
お祖母様が思案顔です。そうだ、カルロにお礼もお返しもしてないです。お姫様はプレゼントをもらったら、お返ししないといけないんだって習いました。
「ねぇねぇーセシルもプレゼントするー。カルロからオモチャもらったでしょーんとー」
何か持ってなかったでしたっけ?ポケットを漁ったら、イネスと一緒に作った手遊び歌の石のうさぎが出てきました。
「可愛くできたけど、これカルロにあげるー」
お祖母様に見せると、受け取ってくれました。
「んーこれは一緒に作ったのかな?」
「はい、姫様と一緒に作らせていただきました。」
「なら、良いか。よし、バルトロ、お主の息子が良い王子になろうとしてるんじゃ、少しはご褒美も必要じゃろう、姫が作った石か、今姫と少しだけ逢瀬をするか、選ばせてやろう」
お祖母様がニヤリと笑みを浮かべて言いました。
<それは面白いな。よし、少し待て。いっつも俺が会話するときにしつこくくっついてくるんだよ・・・おい、カルロ!!お前にフィーから褒美があるぞ>
バルトロが炎の前からいなくなっちゃいました。声だけは聞こえますが、何言ってるかわからないです。
「ばーばー何言ってるのー?」
「ん?今、カルロに選ばせてるんだよ。姫とお話しするか、お話ししないで姫からのプレゼントを受け取るかね」
「ほえ?どうしてお話しとプレゼント一緒にしちゃだめなの?」
「その方がやる気が出るからじゃよ。あの国は不安定じゃ、たとえ不純な動機であろうとも、勉学に励む幼い王子が良き道に進むのであれば、それは我々にとっても良い。我らが手を貸すときは戦の時ばかり。しかも、我らが手を貸せば、あの土地のマナはどういうわけか乱れる。」
「ほう?」
「少し難しかったかの。お、どうやら カルロは選んだようだぞ」
<待たせたな。カルロは姫と話す方を選んだぞ>
そう言って、バルトロはしゃがむと、カルロを抱き上げて見せました。赤茶色の髪の毛は少し伸びています。でも何よりも、びっくりしたのはきりりとした瞳や顔つきも大人びていました。
<〜〜〜〜!!!フィー姫!!!!!元気になったんだね!!>
その顔もすぐに、セシルと目が合った瞬間にとろけるように優しい笑顔に変わりました。
<お、落ち着け、炎の鏡に触るな。やけどする!>
<フィー姫!!元気にしてた?!僕、いっぱい勉強頑張ってるんだ!!>
「カルロ?おにいさんになってる?元気ー?」
<可愛い!!フィー姫可愛い!!>
「あー、そうだね、カルロはここ最近成長が早いらしいからねぇ〜」
<ドミニク様!姫は何て言ったの?!>
「ん?かっこいいお兄さんになってるって言ったんだよ」
<本当!!!?>
カルロが嬉しそうです。
<フィー姫!!僕いっぱい勉強頑張るから!!魔法も武術も!!それで良い王様になるから!!だから、大きくなったら僕と結婚してね!!>
「<ちょ・・・まてまて>」
「なんと・・・」
「?」
バルトロが慌ててます。あれ?言葉がわかります。何が違うんでしょう?というか、お祖母様もなんだか驚いてます。
「カルロ、何て言ったの?」
「ん〜・・・それは秘密じゃ。カルロや、いっときの感情で結婚などと口にするんじゃないぞ。・・・まぁ、大きくなればわかるだろう」
<僕は本気です!>
「<わかってくれると良いんだがな〜初恋は実らないって言うしな>」
「初恋?」
<フィー姫!!>
「なあに?」
カルロがなんか真剣な顔で見つめてきました。なんだかドキドキしちゃいます。
<僕、一目見たときから君のことが忘れられないんだ!ずっと君のことを思ってる!!今は通じないかもしれないけど、絶対に契約をして君とお話しできるようになるから!そんで僕と結婚してね>
「<うぉおお・・・どこでそんなセリフ覚えた>」
<お母様が読んでる小説!>
「<なるほど・・・>」
セシルは思わず目をパチクリしちゃいました。なんだか真剣にお話ししてくれたのに、セシルにはさっぱりわからないです、なんだかそれが悲しいです。お祖母様をみても教えてくれる様子がないです。首を横に振られちゃいました。
「カルロ・・・せ・・・んと、私何言ってるかわかんないけど。カルロが何言ってるか知りたい。」
じーっとバルトロを見ても、首を横に振られちゃいました。
「バルトロも教えてくれないの?・・・あのね、カルロからもらった木のおもちゃ、大切にしてるよ。宝箱にしまってるの。あのね、本当は私もプレゼントしたかったんだけど、ダメだって・・・だから今度は渡しても良いもの探して・・・カルロにあげたいの・・・また一緒に遊ぼう?」
前は体が動かなかったからちょこっとしか遊べなかったです。
「<フィー姫はお前から貰ったオモチャ、大切にしてるってよ。俺たちが教えられるのはそれだけだ>」
バルトロはそういうと、カルロの頭を撫でました。その言葉にカルロは寂しそうに、でもしっかりとセシルを見ながら言いました。
<・・・フィー姫。僕頑張るよ。君とお話しできるように!>
「よく勉強すると良い。カルロよ。姫や、もうおしまいだよ。手を振りなさい」
「もう終わり?」
「あぁ」
「<そうだな、ありがとうドミニク、フィー姫も>」
「バイバイ、カルロ。バルトロ」
<バイバイ、フィー姫>
「では、また」
そうお祖母様が言うと、炎の鏡は消えちゃいました。
「ばーば。カルロは何を言ってたの?」
「ん〜決意表明さ。姫は・・・気にすることはないよ」
「?・・・カルロにはまた会える?」
「そうさね、カルロの努力次第かな。隣人に会うには資格が必要なんじゃよ」
「しかく?」
「そう、間違いが起きないようにね。さぁ、セシル。ばーばと一緒に遊ぼうか」
「え”」
「なんじゃ?そんなに嬉しいのか、そうかそうか」
「へいき!セシルは平気!!!わんわんと遊ぶ!!」
がっしりとお祖母様に捕まってしまいました。おかしいです。そのまま中庭に連れて行かれちゃいました。お祖母様とまさかの体術が始まるなんてこのときは思いもしなかったです。
「いっ・・・こわいの!」
しゅっしゅっとパンチがきます。
「大丈夫〜ほらほら、避けて!」
「ひぃーイネス〜!!」
「アルファ、危なくなったら助けてあげて、私は大旦那様をお呼びしてくるから」
「わん!」
イネスがどこかに行っちゃいました。セシルはお祖母様のパンチやキックを必死に避けて、逃げ回るしかないです。それはイネスがお祖父様が助けてくれるまで続きました。
「ごわ”がっだの”ーーーー!!」
「おーよしよし、ドミニクや。やりすぎじゃ」
「おほほほ、つい楽しくなっちゃって。この子やっぱり凄いわよ。手加減してたとはいえ、全部避けたのよ」
「なんと、それはすごいな・・・・ってレオンに怒られるじゃろうが」
「えー・・・言わなければ」
「セシル様はお手紙に全て認めております。」
イネスが静かに言うと、お祖母様が笑顔で固まりました。
「ねぇ、セシル。明日はセシルが好きなお菓子を用意させるわ。それに可愛いお人形も街で探してくるから」
「ほえ?」
「ドミニク・・・」
「だから、今日のことはお祖母様とセシルだけの秘密にしましょう?」
「ひみつ?」




