セシルは泣きそうです。
「セシル泣いちゃうんだから!!」
「もうすでに泣いてるけどな」
「こら、ウジューヌ」
「セシルも一緒に行く!!」
「セシルは一緒にはいけないんだ。」
「やだぁあああああ」
ひどいです。みんなセシルを置いて王都に行っちゃいます。セシル一人お留守番なんて耐えらんないです。床で暴れても、お兄様達にひっついても、一緒に連れてってくれる様子がないです。
アランお兄様がハンカチで顔を拭ってくれますけど嫌です。
「セシルもいっしょがい”い”い”いぃ”」
「僕たちが王都に行くのは明後日なのに・・・」
ジョゼフお兄様が頭を撫でながら言って来ます。でも明後日には皆んな行っちゃうじゃないですか。
「去年までは荷物纏めてるの目についてても平気だったのにね」
「エドガー、それは今まではちゃんと理解してなかっただけだろ。王都もよくわかってなさそうだったしな。」
ウジューヌお兄様が頭を掻きながら言ってますけど、今まではお兄様も一緒だったです。一人じゃないです。
「セシル一人はいやあああああ」
「困ったね。セシルはまだ幼いから王都のマナは毒なんだよ。それに、イネスも他の使用人達も残るし、お爺様達もこの館に滞在するから大丈夫だよ?寂しくないよ。」
「やだぁああ」
「セシル。こればっかりはダメ」
アランお兄様が強い口調でいって来ました。
「うぐ・・・ひっく・・・」
お兄様達もダメです。お母様にお願いしたら、抱っこしてくれたけどダメって言われました。
「やああだぁああ」
「ダメよ。それに、王都ではセシルを狙う人たちがまだいるかもしれないの。イネスとお留守番してて?」
「やだー」
「王都のマナはセシルに毒なのよ?セシルが攫われた場所みたいに、体が弱ってしまうの。ママはそんなセシル見たくないわ。セシルはママを悲しませたいの?」
「うぅ〜」
攫われた場所のことを思い出すと怖いです。お母様は無理でした。しかも途中からなんか美味しいお菓子くれて忘れちゃうし。
ここはお父様にお願いしようとしたら逃げられちゃいます。明日にはみんな王都に行っちゃうのに。
「あ、ぱぱ!!」
廊下の先で見つけても追いかけるといないです。みんなに聞いても、お父様にお願いしちゃダメって言います。
「セシル様。ご当主様を困らせてはいけませんわ。」
イネスまでそういって来ます。
「パパにあえないぃいい」
「ご当主様はセシル様が泣いてる姿が辛くて会えないそうですよ。笑顔でお呼びしましょう?」
笑顔なんてできないです。ひどいです。お父様はひどいです。
「うぅ・・・パパなんてきらーいぃいいいいわああああああ」
「あぁ〜セシル様」
「そんなこと言わないでくれ〜!!セシル!!!」
パパが飛び出して来て、抱っこしてくれました。今更です!!ひどいお父様なんて嫌いです。腕を伸ばして突っぱねてもビクともしないです。
「セシル〜!!!ごめんよぉおお!!パパも離れたくないんだよ!だから嫌いだなんて言わないでくれぇ〜〜!!」
「旦那様・・・」
お父様の執事のニコラがため息をつきながら来ました。
「うわぁああああ。だったらセシルもおうとにいくうう」
「ん〜それはダメだなー」
「パパなんてきらいぃいい」
「どうしてパパだけ嫌いになっちゃうんだ〜みんなにはそこまで言わないだろ〜パパ悲しいぞ〜」
「明らかに、旦那様が弱いツボを押さえてますね。さすがセシル姫」
「確かに」
「ニコラ・・・イネス」
「パパがおねがいきいてくれなぃいいい」
「こればっかりはダメなんだよ。」
そういうと、おでこにキスして来ました。誤魔化されませんよ!セシルは一緒に行きたいです。
「セシルが一緒に王都に行けるのは後2年経たないと。それまではお留守番なんだ。寂しくないように、セシルが気に入ってるわんわん、お部屋に入れていいから」
お父様の言葉にセシルは暴れるの止めちゃいました。セシルのお気に入りのわんわんは、いつも玄関ホールで一緒に寝転がってるわんわんです。時々背中にも載せてくれる大きなわんわんです。
「うっぐ・・・ひっく・・・わんわん」
「そう、わんわん。そしたら、セシルは寂しくないかな?イネスも隣のお部屋で休むしね。どうかな〜?」
頭なでなでしながらお父様が聞いて来ました。わんわんは今までセシルのお部屋には入れちゃダメて怒られてました。お外でお仕事してるわんわんだからって。
「ベットで一緒に寝ていい?」
「んー・・・エリーナがいいよって言ったら、いいよ」
「エリーナに聞いてくる。」
「うん。っとその前に、セシル、パパは大好きって言ってくれ」
「「旦那様・・・」」
思わずぷくっと頬を膨らませてみました。王都には連れてってくれないです。でも、わんわんをお部屋に入れていいって言いました。
「セシル〜」
「・・・パパ、大好き」
お父様の後ろでイネスとニコラが言えって口パクして来ました。だからしょうがなくです。
「セシル〜パパも大好きだよ〜!可愛い私のお姫様〜セシルにいっぱいお土産を買ってくるからな〜お手紙毎日書いてくれていいぞ!」
お父様に頬ずりされました。ちょっとほっぺた痛いです。顔中キスしないでください。セシルはまだ怒ってるんです。
「もういやーくすぐったいの!」
「ん〜やっとお姫様が笑った。じゃーパパはまだお仕事が残ってるから、夕飯に会おうね」
「しょうがないから、セシルは夕飯までまってあげるー」
そう言うとお父様が降ろしてくれました。ニコラと一緒にお父様はお仕事しに行っちゃいました。
「良かったですね。セシル様」
「パパもダメだったぁー」
お父様ならいいよって言ってくれると思ったのにダメでした。こうなったら実力行使ですよね。荷物に紛れちゃえばいいんです。
みんな準備で忙しそうですし、お昼ねしてるふりしてセシルはお部屋を抜け出すことにしました。隣のお部屋ではイネスがいるから、窓の外です。ウジューヌお兄様が降りれたんですから、セシルも降りれるはずです。
窓を開けて見たら、結構下まで遠いです。でも、窓の横に柱があるし、壁も凸凹してます。足をかけて見たら、降りれそうです。
「よいしょ・・・うんしょ」
一歩ずつ丁寧に降りたら、ちゃんと降りれました。
「ふぅ・・・」
ちょっと眠いですけど、せっかく抜け出せたんです。それに荷物がある場所は一昨日から見てるんで知ってるんです。外から回り込んで、馬車をしまってる倉庫みたいな場所にはいれば、お馬さんに繋いでない馬車が並んでました。その一つ、荷馬車にいっぱい荷物が乗ってるんです。今は休憩時間なのか誰もいないです。
まだ載せられてない荷物を足場に、荷馬車に乗り込めば完璧です。
木箱の上を伝って奥に入ると、トランクが並んでました。その上に乗れば、なかなかの乗り心地。セシルが横になれる空間です。
「ふわぁ・・・」
ちょっと疲れちゃいました。セシル大冒険しちゃいました。でも、これでセシルも王都に行けますね。
横になったら眠くなって・・・。
*
その頃子供部屋ではイネスが部屋の気配がないことに気づきました。
「セシル様?」
扉を開けて中を見ればベットはものけの空、窓は開け放たれています。
「セシル様?!まさか攫われた?!!」
イネスは顔を真っ青にしてへたり込んでしまいました。そうだ、他の人に知らせなければっと思った時にふと、窓のふちに気づきました。そこには小さな子供の手形が残っていました。それは壁に続き、小さくて気づきにくいですが、伝って降りたような形跡です。
「まさか・・・」
イネスはとりあえず上司であるコンスタンスに知らせ、旦那様にも報告をして外を探しましたが、なかなか見つかりません。
「イネス、セシルがいなくなったって?」
「アラン王子、申し訳有りません。私が目を離してしまったばっかりに」
「いや、セシルは昔からよく脱走するからね。そんなに気を病まないでくれ。それに今回は、王都に行きたいって駄々をこねてたからな」
「セシルは小さいからどっかに隠れると見つけるのが大変だよ。」
ジョセフ王子が悩ましげに言いました。
「それなら、犬を使うのはどうかな?ほら、セシルの相手をしてくれてた犬がいるだろ?」
「エドガーそれはいい案だな!お父様に聞いてくる」
アラン王子が早速旦那様にお伺いを立てて、騎士達が管理されている番犬を連れてこられました。
「くぅ〜?」
「アルファ、僕たちの妹を見つけてくれないかな?どこかに隠れんぼしちゃったらしいんだ」
アラン王子がアルファと名付けられている番犬を撫でながら聞けば、鼻息だけ返されました。
「セシルは子供部屋から脱走したんだっけ?」
ウジューヌ王子に聞かれうなづけば、子供部屋の外壁にアルファを連れていくことになりました。アルファは、壁の匂いを嗅いでから、地面を嗅ぎながら進み始めました。
「やっぱりここから脱走したのか。」
ウジューヌ王子が呆れたように言われます。
「そういえば、ウジューヌお兄様もよくここから脱走してたよね。」
エドガー王子が上を見ながら言うと、そうだっけ?っとウジューヌ王子がとぼけられています。やはり兄弟なのか似ていらっしゃいますね〜とか思ってるうちに、アルファは荷馬車を置いてる建物に入って来ました。
そこには、荷物を積み始めている他の方々がいらっしゃいます。
「あれ?王子様方どうされました?」
「セシルを見なかったかな?」
「姫様ですか?見てないですが」
アルファは気にせず進んで行きます。すると一つの荷馬車の前で吠えられました。
「ここにいるの?」
ジョゼフ王子が不思議そうに荷馬車を見上げました。
「この荷馬車は、もうすぐ積み終わりですよ」
焦ったように近づいてきた使用人の男性が止められますが、こちらとしては姫様がいらっしゃるかもしれないのです。説明しても、そんなバカなと言う顔しかされません。
「仕方ない、アルファ、いけ」
アラン王子がそう呼びかけると、耳をピンと立てたアルファは荷馬車に飛び乗り、山積みにされた荷物を登っていくと奥へと進んで行ってしまいました。
「ああああ、奥は高級品ばかりなんだよぉ」
使用人の男性が悲鳴をあげてらっしゃいます。
ですが奥でアルファが一つ吠えました。
「いたっぽいね。」
アラン王子の言葉にその場にいた他の力仕事をしていた男性たちが慌てて荷物をどかし、降ろし始めました。どかしていくと、なんとセシル様はトランクの上で寝られていました。その横にアルファがちょこんと座られています。急いでセシル様を回収です。抱き上げればモゾモゾ動いて終わりました。この状況で熟睡されてるようです。手は汚れて真っ黒で、ドレスも汚れてます。昼間ずっと泣かれてましたし、あの高さから降りられたことを考えれば、相当疲れてるはずですね。
「アラン、セシルは見つかった?」
後ろからかけられた声に全員が振り返るとシュゼット様がこちらにいらしていました。
「お母様、ちょうど見つかりましたよ。」
「みて、お母様、ウジューヌお兄様の悪い影響を受けてるよ」
そう言ったのはエドガー王子。
「あれは、荷物に紛れてくる気だったのかな?」
ジョゼフ王子は首を傾げてます。
「まぁ、セシルったらお転婆さんね。これは後でお説教しないと。みんなの作業の邪魔をするだなんて。本人は熟睡?」
シュゼット様はセシル様の顔を覗き込まれて小さなため息をつかれました。眠られているセシル様の頬をプニプニ押されながら、困った子ねっと言いながらもなんだか楽しそうです。
*
目が覚めたら、子供部屋にいました。おてては綺麗になってるし、お洋服も変わってます。
「ゆめ?」
「夢ではありませんよ。セシル様。奥様がお待ちですよ」
イネスが笑顔で抱っこしてくれました。普段はしてくれなくなった抱っこを。
「セシルはようじがあるのをおもいだしたの」
これは行っちゃダメだと思うんです。
「セシル様に用事はございません。」
「今思い出したの」
「セシル様のスケジュールは私が管理しておりますから大丈夫ですよ」
「セシル、無理なの!!」
「そうですね。セシル様はちゃんと何が悪かったのか、わかってらっしゃると、イネスは信じておりますから」
「降りるの。歩けるの!!」
「大丈夫です。久しぶりに抱っこしたい気分なんです。」
わー、イネスが怒ってます。笑顔で怒ってます。離してくれないです。そうこうしてるうちにお母様のお部屋についちゃいました。扉が開いた先には婆やもいます!!!お母様が笑顔すぎて怖いです。
「ぴええええええええ」




