お姫様は傲慢です。
「パルナベとセシルが婚約すれば良いじゃない?」
マリアンヌが楽しげに声をあげた。庭園に置かれたマスゲームの石を飛ばし、勝者の枠に飛び込みながら可愛らしく声を上げるも、周りの姫たちは固まってしまった。
「マリアンヌ姫、何をおっしゃってるの?彼とセシル姫の年齢差や身分を考え「だって、セシルもまんざらでもないじゃない。」」
マリアンヌの言葉に周りの姫たちは眉間にしわを寄せてしまっている。
「マリアンヌ姫、セシル姫を呼び捨てになんてしてはいけないわ」
「なぜ?従姉妹だし、年下なのよ」
「身分が違います。」
姉姫たちの言葉にマリアンヌの顔は不機嫌さを増していった。
「だったら、姉姫たちだって私に何も言えないはずだわ!私がいままでマルディ家の姫なんだから!!」
その言葉は近くにいた王子たちにも聞こえ、そしてチェスをしていたアランたちの耳にも届いた。
「はぁ」
「アラン兄様、いいよな?」
ウジューヌはため息をついて眉間に手を当てているアランに聞いた。その問いにアランは首を縦に振って答えるだけだった。ウジューヌは椅子から立ち上がりマリアンヌの前に立って言った。
「マリアンヌ、良い加減にしろ。」
「なによ!ウジューヌ兄様まで!」
「セシルは俺たちの可愛い妹だ。マルディ家の唯一の姫だ。マリアンヌ、お前じゃない。それに、父上は一回もお前がマルディ家の姫だと認めたことはない。マルディ家の姫と呼ばれる基準にお前は達していないだろ。その髪の色はパルナベよりも低いことを自覚しろ」
「ウジューヌ、言い過ぎだ」
アランは小声でウジューヌに注意するも、これくらい言わないとあいつは自覚しないっと小声で反論された。
「なっ」
「お前はウルス叔父様の子だから、皆言わなかっただけだ。セシルよりも色が薄いお前が”マルディ家の姫”なんて名乗れば、皆の笑いものだ。良い加減、それを自覚しろ。」
マリアンヌの髪の毛は朱色だがオレンジ味が強く、ここにいる王子や姫たちでは赤みの少ない数人の部類に近かった。それは、男爵であったり、子爵だったりしている。だが、それは誰も触れない事柄だった。
「”マルディ家の姫”は、マルディ族の血を一等強く引いた姫だけ、火のマナを多く持つ姫だけが名乗れる称号だ!」
「私だって多く持ってる!血を引いてるなら、お父様の子である私だって濃い血だわ!!セシルが生まれてなかったら私が一等じゃない!!あの子がいなければ」
その言葉に、アランはとうとう椅子から立ち上がってマリアンヌの前に立った。
「マリアンヌ、君のマナはセシルの半分にも満たない。そして君の血は薄い。なぜなら君の母君はマルディ族の血を引いているといっても、赤がもう入っていないほどの平民だったからだ。薄い黄緑色の瞳に、オレンジ色の髪の毛をした者でマルディ家と名乗っているものが貴族の中でいたか?準貴族の使用人の中でいたか?」
「それは・・・」
「君はもっと勉強するべきだ。武術ができるのはマルディ家として大切だ。でも貴族としての意味を理解していない。血の意味も、このお茶会の意味もね」
「・・・」
「叔父上に報告してくるよ。アンヌ姫、見張りをお願いします。」
「かしこまりました。アラン王子」
アンヌ姫はしかりと目上の者に向ける礼をすると、隣にいたクロエとドロテに目配せをし、マリアンヌの腕を両脇から二人で抑えると、屋敷の室内へと連れていった。
「離してよ!」
「王子たちを怒らせたんです、離せるわけがないでしょ」
「そうよ、あなたのお父上であるウルス様も最初にご説明されていたというのに」
「兄王子たちを取られたからといって、言って良いこと悪いことも判断できないようでは、この後貴族社会に出れませんわよ」
3人の姉姫たちの苦言にマリアンヌはむすっとした顔しか返さなかった。それは聞く気をもたないという意思表示にしか見えない。
その様子に姉姫たちは心の中でため息をつきながらも、マルディ家の二人の王子が怒ったことによって、今後マリアンヌが一族内で孤立することの自覚を持たないことに、少しながら心配をした。
普段であれば、ウジューヌが怒って、アランが諌めるのが常なのだ。それが、今回はアランも怒らせてしまった。
「セシルなんて生まれてこなければよかったのよ」
「マリアンヌ姫!!!いくら子供だと言っても、その言葉は許されませんわ!!」
「何よ!」
マリアンヌが癇癪を起こしていると、ウルスとシュゼット、そしてアランと侍女たちがきた。
「マリアンヌ・・・」
「お父様!!」
「アラン王子から聞いた。お前は何もわかってくれないのか」
「・・・」
父親の悲しい顔にマリアンヌは言葉を詰まらせた。
「少し頭を冷やしなさい。この後には参加しなくて良い。」
そういうと、侍女たちに指示して部屋にいるように指示しました。
「皆さんにはご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ない。シュゼット夫人にも、アラン王子、そして姫君にも」
「いえ、ウルス様」
*
目が覚めたら、知らない壁紙が目に入りました。
「・・・」
瞬きしても変わらないです。
「あ?目が覚めた?」
知らない人の声です。振り返るとおかっぱ頭で毛先が金色のお兄さんがいました。
「ふぇ?」
「おはよう。僕はアシル。ヴァン男爵家のものだよ。」
「おはよう?」
起き上がってみると、知らない子供部屋です。頭を掻いたら髪飾りが落ちちゃいました。
「あーそんな風に掻いたら、崩れちゃうってもう遅いか。絡まっちゃってるし」
「いたいー」
なんか絡まりました。痛いです。
「おちついてー、大丈夫。解くから」
お兄さんが絡まった髪の毛を解いてくれました。
「おにいしゃまたちはぁ?パルナベは?」
「王子達はまだ外で遊んでるじゃないかな。セシル姫も外に行く?パルナベはお仕事中だよ」
「アシルはなにしてるの?」
「ん?僕は本を読んでたんだ」
見してくれた本は分厚くて大きいです。中は文字ばっかりで絵がないです。
「アランお兄様が読む本みたい」
「まー近いかな?」
「へー」
「まだ眠いの?」
「んぅー起きる」
ベットからずり落ちるとアシルが本を置いて、洋服を整えてくれました。そうしてるうちに、廊下が騒がしくなって来ました。
「あー室内に移動して来たっぽいな。」
アシルが残念そうです。声は聞いたことある声ばかりです。お庭でお菓子くれたお姉さんの声もします。アシルはため息をつくと本にしおりを挟んで、部屋に置いてあったカバンに詰め込みました。
「本読まないの?」
「みんなが来たら読めないんだよ。騒がしいし」
「へー」
あ、お兄様の声が聞こえるっと思ったら、勢いよく扉が開きました。
「あ、セシル起きてる」
「だっこ」
「おう」
ウジューヌお兄様がすぐに抱っこしてくれました。頬にキスするのも忘れてないです。
「おはよう。セシル、目が覚めたばっかりかな?」
小さくうなずきながらお兄様の首にしがみつくと、ぞろぞろと扉からみんなが来るのが見えました。
「今しがた起きたばっかりです。髪の毛が絡まったので解いちゃいました。アクセサリーはベットの上にあります。」
アシルが説明してくれました。他のお兄さんやお姉さんはなんか好き勝手におしゃべりしてます。
「甘えん坊だな」
「まだ4歳ですし」
「あら、アシル、ここにいたのね」
「うん。」
「また、本読んでたんでしょ」
「髪の毛を下ろしてるセシル姫も可愛い〜結構長いのね」
「やっぱりお人形さんみたいよね」
「使用人達が髪の毛をいじりたがって、長さを整えるくらいしかしてないよ」
「あらー」
「セシル〜おはよう」
ジョゼフお兄様がきました。ウジューヌお兄様の肩を叩けば、下ろしてくれます。ジョゼフお兄様もおはようのキスをしてくれました。
「ぐはっ・・・可愛い」
「クロエおちついて」
気がついたら、お姉さん達に囲まれてました。お姉さん達の手には櫛があるし、髪の毛を整えてくれ始めました。
「あれ?アランお兄様は?エドガーお兄様もいない」
「あーちょっとした用事で席を外されてますわ。」
お姉さんが答えてくれました。
「お花の編み込みがしたいわ。」
「えーここはポニーテールじゃない?」
「いやいや、お団子も可愛いって」
なんか頭の上がすごいことになってます。
「セシル、ママとおんなじがいいー」
「ん?シュゼット夫人の髪型?」
「確かにアクセサリー一緒よね。どんな髪型だったっけ?」
「でも既婚者の髪型でしょ」
お姉さん達が何か話し合ってます。
「ねぇねぇ、セシル姫一緒に遊ぼ。私、クロエっていうの、5歳なの」
セシルと同じくらいのお姉さんがセシルの前に座ってドールハウスのおもちゃを並べ始めました。
「クロエとあそぶー」
年の近い女の子と遊ぶの初めてです。一緒に椅子やテーブルをを並べてお人形遊びしてると、お兄様達が戻って来ました。
「セシル、帰るよ」
アランお兄様の言葉に周りが驚きました。
「「え?」」
「なんで、夕食会にセシル姫いないの?」
「なんで、王子達も帰るの?」
「えー!セシル姫ともっと遊びたい」
手をパンパン叩いて抗議してみても、アランお兄様が甘やかしてくれる雰囲気がないです。思わずぷくっと頬を膨らませちゃいました。でもこっちを見てくれないです。
「僕と父は残って夕食会にさんかするよ。セシルと母は帰るんだ。ウジューヌ達はどうする?」
その言葉にお兄様達が顔を見合わせて何かを話し合うと振り返りました。
「エドガーが残って俺とジョゼフは帰るよ」
「わかった」
そういうと、ジョゼフお兄様が、セシルの荷物を持ってウジューヌお兄様が抱っこしてくれました。
「セシル、まだみんなと遊びたい。やだやだー」
「また今度遊べばいいよ。ご挨拶して」
頭をポンと抑えられちゃいました。こうなると、どんなに言ってもダメです。ウジューヌお兄様もご挨拶するまで待ってるみたいです。
「・・・ごきげんよう。また遊んで欲しいの」
「「ごきげんようセシル姫」」
「また、遊びましょうね」
「喜んで」
バイバイって手を振ったらみんな手を振ってくれました。
廊下に出て、ホールに着くとお母様が待っていました。お母様の周りにも人がいっぱいでご挨拶してる最中でした。
「母様」
「ウジューヌ、ジョゼフきたのね。では、皆様。お先に失礼しますわ」
「ごきげんよう、シュゼット夫人」
「ごきげんよう」
お母様に連れられて、馬車に乗りました。行きに乗った馬車は広々としてます。
「セシルどうしたの?」
「セシルお姉さんたちともっと遊びたかったー」
「そうね。もっと遊ぶにはもうちょっとお姉さんになってからね」
お母様に頭を撫でられながらセシルはお母様のお膝に頭を載せました。
「お母様、外はいいの?」
「外は片付いてるそうよ。それに、ちゃんと騎士たちがついてきているし、むしろあそこにいる方が統率するのが面倒だっていう話になったの。みんな前にでたがるでしょ?」
お母様とお兄様のお話は謎です。なんの話をしてるんでしょうか。
「確かに、叔父様たちすぐに武器を取り出してたよね。」
「でも、父上と叔父上がいるから指示待ちするんじゃない?」
「しないわよ。外の戦闘に何人か参戦してたらしいわ。喫煙所場所からだと出やすいのよ」
「なるほど」
「だから早かったんだ」
ジョゼフお兄様も意味がわかってるみたいです。セシルだけわかんないです。
「何の話してるのー?」
「ふふふ、お庭に出た虫退治のお話よ」
「むし?」
「そう、大きな虫がでてきたの。セシルは虫は嫌いでしょ?」
「きらーい」
「だからお掃除したのよ」
「ん?」
そうなんですか。大きな虫って怖いですね。お家に着く頃にはお空が夕焼け色に染まってました。お家に着いたら今日はお母様と一緒に寝て良いそうです。やったー。ジョゼフお兄様とウジューヌお兄様も一緒です。ウジューヌお兄様は、最初いやだって言ってましたけど、セシルがお願いしたら、一緒に寝てくれました。
「ママとお兄様たちとねんねするとポカポカして好きー」
「ふふふ、火のマナを持つ者同士だと心地いいのよ。家族だと余計ね」
「ほえー?」
「セシルはまだ赤ちゃんだからな。まだ母上と寝てた方がいいじゃないのか?」
「ずっと一緒だと自力でマナが安定できなくなるからダメって婆やが言ってたじゃん。ウジューヌお兄様」
「そうだっけ?」
「そうよ。ウジューヌ。時々でいいのよ。あなたもね」
お兄様もお母様に撫でられておとなしくなりました。セシルはお母様とウジューヌお兄様とおてて繋いで眠りました。ポカポカして気持ち良いです。




