隣人のお城
たどり着いたお城は、石造りで全然化粧石もないし、室内もそのまま石がむき出しでした。全体的に茶色です。休む場所として連れて来られたお部屋には絨毯が椅子と机のところにだけ敷かれてました。壁には、暖炉があって、隣にタライが置かれてます。
「とりあえず体を綺麗にしな、王子はこっちだ」
「え、僕も姫と一緒がいい」
「子供といえど、我が家の姫の体を見せるわけないだろうが!」
そう言いながらお祖母様がルッツを連れていってしまいました。暖炉に火をつけて、この城の侍女さんぽい人がお水を持ってきて盥に水を張りました。イネスがお水をお湯に変えて、一緒に体を洗って貰うとさっぱりして気持ちがいいです。それに、気持ち悪さがなくなりました。
体も石鹸のいい匂いです。ルッツも戻ってきて、一緒に頭を拭きっこしてます。
お祖母様とお祖母様と一緒にいた赤茶色の髪の毛をした黒い瞳のおじさんがお部屋に入ってきました。
「<おう、ちびっこども綺麗になったな。見違えたぞ>」
「当たり前じゃ、私の孫だぞ!姫じゃぞ!この王子も位は高いからの」
わっはっはーと笑いながら、おじさんが革張りの立派な椅子にどかっと座りました。セシルはイネスに抱っこしてもらいました。ちょっと怖かったとかじゃないですよ?
「ほれ、わしの孫の顔を見たのだから去れ」
「<おいおい、着たばっかりじゃないか。それに、ここは俺の城だぞ?どこの部屋に行ったっていいんだよ。なぁ?お姫さん>」
「ん?セシ「姫様、私ですよ」」
イネスにお口を塞がれました。うっかりしてました、そういえばセシル、一人称はセシルでした。
「わたし!」
「<ふーん。名前を名乗ったら契約しようと思ったのにな!!って睨むなよドミニク。てか、本当に幼児だな。ったく、ミキヅナ国は非道なことをするな。まだ幼子のフィーを攫って、洗脳して兵にするつもりだったらしいぞ。黒幕には逃げられたが、下っ端がゲロッた>」
その言葉にルッツが真剣な顔でおじさんの顔を見てます。その様子におじさんは器用に片眉だけあげました。
「<知りたそうだな。王子様>」
「当たり前だ。僕たちを攫った奴がまだ、のうのうと外を歩いて、他の子供を攫っているかもしれないんだぞ。しかも、あんな酷い場所に姫を閉じ込めようとして、かつ洗脳する気だったなんて許せるわけがない!」
「<ほう、幼いながらも、いっちょまえに男だな>」
ニヤリと笑ったおじさんは、なんか獰猛な獣みたいでちょっと怖いです。イネスにしっかりとしがみついたら、お祖母様が横に座りにきて、頭をなでなでしてくれました。
「はぁ、バルトロ、やめろ。うちの姫が怯えるだろうが。それに、まだちゃんとお前を紹介もしてないんだぞ。」
「<おう、そうだったな。俺はこの国を治める。一番偉い人だぞー>」
ふんぞり返って言ってきました。
「バカっぽいからやめろ。たく、姫と王子、こいつが私の新しい契約者、バルトロ。このトナツコ国の王だ。」
ルッツが何かに気づいてお祖母様を見ました。
「はっ!・・・まさか僕たちのために?」
「どのみち、そろそろ契約更新をしとこうと思ってたのさ、そしたら前の契約者が息子にしてくれって言うからね。変えただけだよ」
「・・・すまない。」
ルッツがそう言うと、お祖母様は乱雑にルッツの頭を撫でました。
「何言ってるんだい。王子は姫とうちの侍女を守ってくれた、立派な騎士にこっちこそ、ありがとう」
「<ふーん。それにしても水と火が一緒だなんてはじめ見たが、平気なのか?>」
「平気じゃ、力をコントロールできれば、幼子に影響は与えん。王子はもう水のマナに包まれていなくても平気な年齢じゃ。ただし、姫はまだ火のマナに包まれていないといけない年齢だ。体にかかった負担は大きい」
<なるほど、だから今までにない好条件かつ、早い契約だったのか>
ぼそりと呟いた言葉は、周りの人たちと同じ言葉でさっぱりわかりませんでした。
体もさっぱりしたし、お祖母様もいるしもう帰れるんじゃないんでしょうか?なんだかマッタリした雰囲気です。早く帰りたいです。ウジューヌお兄様にもお爺様にも会いたいです。できればママとパパにも。
「ばーば」
「ん?どうした姫」
「お家に、いつ帰れるの?」
そう聞くと、お祖母様がお膝の上に抱き上げて頭を撫でてくれました。
「すまないな。もう2日待ってくれ。そういう契約なんじゃ」
「・・・うん」
頭をナデナデしてもらったら気持ちが良かったです。ふわふわ〜と暖かいです。
「ゆっくりおやすみ。ここは火のマナが多いといえど、姫には疲れる場所じゃ。火の魔石をもたせてると言えど、やはり純度が違うしの」
うとうとし始めたら、いきなり扉がバーンと開きました。びっくりで目が覚めちゃいました。
<父上!!>
「<ん?どうしたカルロ>」
<どうしたじゃないです!帰って早々、いなくなるなんてって・・・その人たちは?>
「<この人たちはフィーだよ。甲冑を着ている人が、代々我が家と契約してくれているフィーのドミニクだ>」
<ドミニク様・・・お膝に乗ってる、可愛い子はお人形?わっ動いた!!わわわ>
おじさんに似た男の子がセシルを見ながら何か言ってます。じーっと見つめてきて、居心地が悪いです。お祖母様にしがみつくと顔を真っ赤にして何か言ってます。
<か、可愛い!!>
<お、いっちょまえに火のフィー姫に惚れたか?!いいぞ!俺は応援するぞ!息子よ!!>
<僕、カルロ!!よろしくね!フィー姫!!>
「僕の姫を見るな」
ルッツがセシルの前に立ちふさがりました。
「お主のじゃないわい。ったく。言葉は理解できていないはずなのになー」
「<本能ってやつか?すごいな>」
「さすが、姫様ですわ!物語みたいです!」
イネスが頬を染めて興奮してます。どう言う意味でしょうか。
<何、お前。邪魔なんだけど>
「<こらこら、カルロ落ち着け。この王子もフィーだ。水のな>」
<ふーん。でも僕たちは火のフィーを基本的に契約しますよね。なんで水のフィーがここに?>
「<このお姫様の護衛だよ。たく、カルロ、母親のところにいろと言っただろ。>」
<母上が、契約できたのに、お披露目せずにすぐに前線に行ったとカンカンに怒ってました。>
「<お披露目する契約は入っていないから無理だ。それよりも、ここの鎮圧が先だからな。>」
そういえば、おじさんの言葉は理解できるのに、男の子、カルロ?の言葉はさっぱり理解できません。
「バーバ。どうしておじちゃんの言葉はわかるのに、カルロ?の言葉わかんないの?」
「ん?それは、契約をしていないからだ。契約者はどちらの言語も理解できるようになる。だからわしも、カルロの言葉が理解できる。」
そうなんですね、でも攫われて着た所にいた怖いおじさんも理解できてました。
「・・・怖いおじさんも理解できてたよ?」
「なるほど・・・そうか」
お祖母様は真剣な顔でうなづくと、優しく頭を撫でて、イネスの膝の上に戻されました。
「三人はもう休みなさい。この奥が寝室になってる。しばらくは三人一緒にいるんだ」
「畏まりました」
「わかった」
「あい」
お祖母様の言う通り、隣の部屋には大きなベットが一つ置いてあるだけの部屋でした。三人並んんで横になると、なんだか眠くりなってあっという間に眠ってしまいました。
*
ドミニクは三人が眠ったのを確認すると、バルトロと向かい合って座りました。カルロはバルトロの横に並んで座り聞く気満々です。
「いいのか?」
「<かまわん。こいつは跡取りだ。外で話しちゃいけないこともちゃんと理解してる>」
そういってバルトロはカルロの頭を撫でました。
「なるほど。では、いいか。許せんことじゃが、どうやら、わしらの世界にも手引きするものが居るのは確実じゃ。」
「<そうみたいだな。まぁ、今回はそのおかげで、あんたと契約が更新できて嬉しいがな、ずっと面倒だって突っぱねられ続けたからな。だが、こう言う理由での更新はきついな>」
「平和であれば、わらわと契約する必要はないからな」
「<確かに、だが箔づけには良いんだよ>」
「今回は、こちらの要望で結構無理を通してもらったがな」
「<あぁ、びっくりしたぜ、隣の国を襲いたいとか。まぁー運良く戦争地帯の真横の領地だったから、すんなりやれたけどな。しかも、叩いて正解の場所だった。こっちとしても助かったぜ。あのまま知らずに続けてたら、確実に、この土地を失ってたからな。>」
<そんなに酷い場所だったんですか?>
「<あぁ、酷かったな。地下には幼子のフィーが何人も捉えられ、そいつらに屋敷全体を水で覆うようにさせてた、しかもその中に火のフィー、さっきの姫さんを捉えてたんだ。しかも水の膜の外には火の結界を配置してるっていう周到ぶりだ。>」
「手練れた術師がいることはわかったが、逃げられた。はぁ、これ以上の深追いはできまい。」
「<国外、しかも敵国だからな。無理だ。だが、あちらさんは俺が契約できたことを知ったら、これ以上仕掛けてこないぜ。そのためにも一緒に残り2日頼むな>」
「あぁ、わかってるさ。」




