セシルと戦うお兄様
馬に乗せられると、ウジューヌお兄様の後ろに移動させられました。
「なんで?」
「弓が撃ちにくい、剣が抜きにくい。」
渋々、座って見ましたが、ちょっと座りづらいです。
「しっかりしがみついてろ。」
「ゴツゴツして いたい!」
そうです、お兄様の腰についてる剣とか弓と矢矢筒とかが足に当たります。ちょっとずらされても、動き出したらまた足に矢筒と剣が当たります。背中をぶすぶす指で攻撃したら、ため息をついて装備を外して鞍に付け直してくれました。
「ほら、これで痛くないだろ」
「うん。」
「じゃー行くぞ、しっかりしがみついて口を閉じてろ、舌噛むなよ」
「はい」
返事をすると、お兄様の掛け声と共に馬の速度が上がりました。
お尻がポンポン浮きます。なんだか楽しいです、これ、立ち上がりたいです。ケラケラ笑ってたら、お兄様に怒られました。
「口を閉じてろって、本当に舌噛むぞ」
そして遠くの方でまた犬が吠えてます。
「ちっ、屋敷の方向か。」
そうお兄様が呟いたのが聞こえた時に、空気を切る音がしました。片手でセシルの背中を抑えながらお兄様が周りを見渡してます。
「森か」
そう呟いたと思ったら、いきなり斜めに逸れて林の中に入り込みました。
「ウジューヌおにいさま?」
「しっ」
お兄様が弓を構えました。キリキリと弦と木がしなる音をさせながら、お兄様が何か呟くと鏃に赤い炎が巻き起こり、吸収されると、矢を放ちました。目で追っていくと、矢は途中で燃え上がり、反対側の森に吸い込まれて大きく燃え上がりました。
何か叫び声があがり、思わずぴったりとお兄様にくっつきました。
「やっぱり侵入者か。」
そういうと今度はお兄様は矢を真上に放ちました。それは大きな音をさせて空中で破裂したのです。それを合図かのように、別の場所でも破裂音が数回しました。
「あっちもか。」
いつもと違ってウジューヌお兄様がピリピリしてます。周りを見渡せば、反対側の森でキラッと何か光りました。
「ウジューヌお兄様」
服を引っ張って言えば、お兄様が気づきました。
「ちっ一人じゃなかったか。他にもいたか。セシル。前にこい」
無理やりまた前に座らされました。
「鞍にしがみついて、なるべく前かがみでいろ。スピードを出すからな。今度はちゃんと口を閉じてろよ」
いつもと違う状況に無言で頷きました。ウジューヌお兄様は、セシルの両手を鞍にしっかり掴むように手で位置を直してから、前かがみにされました。お兄様も体制を低くすると、馬の腹を蹴って一気に走りはじめました。
さっきよりも揺れます。というかもっと早いです。これは、舌を噛みそうでうす。
横を見ると、お兄様の手から炎が巻き起こっています。
「セシル、手綱もってろ」
「?!」
いきなり、ウジューヌお兄様が手綱をセシルの手と鞍の間に無理やりねじ込みました。見上げれば、お兄様は弓を構えて放ちました。頭が弓にぶつかりそうです。
ヒュンヒュン矢が飛んで行くと、うめき声が聞こえました。横を見れば、モスグリーン色のフードを被った人が2人がありえない速さで走ってきています。怖いです。
「アラン!!」
「ウジューヌ!後ろ!!」
アランお兄様の声です。すかさず、ウジューヌお兄様が後ろを振り返る気配を感じました。セシルにはお馬さんの首しか見えません。状況がわかりません。
「よし」
そうウジューヌお兄様が呟くと、剣を抜く音が聞こえました。セシルに無理やりもたせた手綱を片手で掴んでいきなり、旋回しました。横を見れば、あのモスグリーン色のフードを被った人たちが5人が囲んでいました。
そのうち二人はアランお兄様とバルナベと剣を持って戦っています。イネスは馬上でその周りには薄い水色の膜ができています、横にデジレが同じく馬上で細長い棒を持って守っています。たぶん、アランお兄様とバルナベのお馬さんが威嚇するように、もう一人を蹴ろうと攻撃してます。他の二人は少し離れたところにいて、赤黒い大きな犬が威嚇しては飛びついてます。
ウジューヌお兄様がその二人めがけて突進しはじめました。犬たちはすぐに気づいて離れて行きました。
「「うわああ!!」」
二人はすぐに駆け出して、そして消えてしまいました。どういうことでしょう?
「ちっ」
上から舌打ちが聞こえます。ふと、反対側を見たら、いきなりあのモスグリーンの男が現れました。
「いや!!」
思わずとっさに手を突き出したら、炎が巻き起こって男の人が吹き飛びました。
「よくやった!セシル!」
お兄様が乱雑に頭をグリグリ撫でてきました。犬たちは、お馬さんと戦ってる人に今度は向かってます。
「くそっ!撤退!!」
誰かがそう叫ぶと、煙幕が広がっりましたが、すぐに大きな風が巻き起こり消えました。見れば男の人たちが走ってるのが見えます、そして別の人が二人現れたと思ったら、その集団は消えてしまいました。
「消えた」
「逃げられたな。アランお兄様、大丈夫ですか?」
「あぁ、平気だ。お前たちの方は大丈夫だったか?」
「見張りだったらしい、一人やったけど、他は多分逃げたと思う。」
そう言いながらウジューヌお兄様が馬から降りました。
「そっか、セシルは大丈夫かい?」
そう言いながら、アランお兄様がセシルを馬から降ろして、そのまま抱っこしてくれました。手がプルプルしてうまくお兄様の服を掴めないです。お兄様が優しくトントンっと背中を叩いてくれました。
「大丈夫だよ。セシル。少しの間イネスと一緒に乗ってて、彼女は結界を張れるから安全だよ」
そう言って、今度はイネスの前に座らされました。
「セシル様」
半泣きのイネスに抱きしめられました。
「イネス。大丈夫?」
イネスの心臓の音が聞こえます。とっても早いです。セシルもちょっと震えてます。ぎゅってしがみついておきます。お兄様を見れば、アランお兄様とウジューヌお兄様が犬たちを撫でくりまわして褒めていました。
風が巻き起こって見上げれば、見れば、騎士服を着た人たちが天馬で舞い降りてる最中でした。
「ご無事ですか!」
その問いかけに、バルナベが怖い顔をして一歩前に出て言いました。
「えぇ、無事ですよ。それよりも、侵入者がここまでくるとは、どういうことですか」
「申し訳御座いません!!北側でも侵入者があり、どうやら誘導要員でした」
その言葉に、アランお兄様が不機嫌そうに言いました。
「計画的だね。」
「そうだな。見張りまでいたしな。父上は今どこに?」
「旦那様は既に屋敷内に戻られています。」
「戻りましょう。」
バルナベの一言で、みんな馬に乗りました。円陣を組むようにイネスの馬を中心に走って行きます。天馬に乗った騎士達は、周りを確認してくるそうです。犬達は、馬の両脇について走ってます。
屋敷に着くと、早々にセシルとイネスはお母様のいるお部屋に連れてかれて待機だそうです。
「セシル、もう大丈夫よ。お父様とお兄様達は強いからね」
そう言ってお母様が抱っこしてくれました。
「ママ!」
ぎゅーっと抱っこしてもらうと、ちょっと涙が出てきました。
「もう大丈夫よ。泣いても平気よ。お兄様のいうことをよく聞いてたのでしょ。偉いって褒めてたわよ」
「イネスも、無事でよかったわ」
そう言って、イネスも抱きしめました。
「奥様、私のせいで・・」
「自分を責めないです、貴方のせいじゃないわ。貴方は、私たちが守る家人の一員よ」
「奥様!」
お母様に抱っこされながら、セシルもイネスの頭をイイコイイコしました。そうです、襲われてたのはイネスです。結界を張れても怖いものは怖いです。
「それにしても、我が家を攻撃してくるなんて。舐められたものよね」
お母様が怖い事を言ってますが、セシルはしばらく抱っこされていたいので黙ってることにしときます。というか、なんだか眠いです。
*
目が覚めたら夕方でした。
「あら、起きたのね、セシル。」
「ママ」
「セシル様、お水をお飲みになります?果実水にされます?」
イネスが身だしなみを整えてくれながら聞いてきました。ん〜なんか味のあるのが飲みたいです。
「ん〜かじちゅ」
「はい、かしこまりました。」
イネスがお部屋を出て行きました。
「ママ〜」
「なぁに?」
「お外はどうなったの?」
「ん〜そうね。お庭の掃除は済んで、点検中よ。もうすぐ戻ってくるから何も心配ないわ」
そう言いながらお母様が優しく頭を撫でてくれました。
「あい」
イネスが持ってきてくれた果実水を飲んで、お母様が刺してる刺繍を見ていたらお兄様達が戻ってきました。
みんな疲れた顔をしてお洋服が汚れていたので、体を洗ってから着替えて夕飯でした。
お話は今日の襲撃事件のことでしたが、セシルにはちょっと難しかったです。とりあえず、イネスを狙ったのは、神様のお庭の子をよく思ってない怖い人たちだったっていうことでした。
「ところで、ウジューヌ、お前はまた抜け出したらしいな。しかもセシルを連れて」
お父様がニコニコ笑顔で聞いて来ました。ウジューヌお兄様がびくりと体を固まらせてます。そうです、今日セシルはウジューヌお兄様に脅されたんです。
「パパ!!ウジューヌお兄様、脅したの!セシルが遊ぶって言わないと水におとすって!」
「そんなこと言ってないぞ!」
「脅した!」
「脅してない!交渉したんだ!」
「はぁ、つまり、脅しに近いことをしたんだな。ウジューヌ。お前は末の妹に何をしてるんだ。しかも遊びたいからと!」
「げっ、で、でも楽しかっただろ!セシル!!」
「しらなーい」
ふーんだって顔を背けたら、お兄様が何かいう前にお母様が手を一つ叩き、静かにしました。
「ウジューヌ、貴方は幾つになったの?」
すごく優しくお母様が聞いて来ました、その様子にお兄様は身を縮こませて答えました。
「きゅ・・・9歳です。」
「セシルはいくつになったか覚えてるわよね?」
「3歳です。」
「貴方はセシルのお兄ちゃんよね。」
「はい」
「じゃー自分で何が悪かったか、ちゃんとわかるわよね。」
「・・・はい」
「なら、今日はここまでにしましょう。セシルも、寂しがり屋なお兄様を許してあげてな」
ちょっとぴっりっぴりな空気ですが、セシルは良い子なのでちゃんとお返事します。
「はーい」




