専属侍女がつきました。
お兄様と一緒に絵本を読んでいたら、侍女さんに呼ばれました。お祖父様がきたそうです。
「ぷーセシルはアランお兄様と絵本読むー」
「ふふ、僕もセシルと絵本読んでたいなーでも、せっかくお祖父様がきたから、ご挨拶だけしにいこう」
「あいしゃつー」
「素敵なお姫様はちゃんと挨拶できるよ」
「する」
お兄様と一緒にお爺様がいるお部屋にいけば、そこにはお兄様達がすでにいて、お祖父様と一緒に遊んでいました。
「お義父様、セシルとアランがきましわ」
「おぉ、きたきた、わしの可愛いお姫様〜ご機嫌はどうじゃー」
「じいじ、こんにちは。セシルはアランお兄様と絵本をよんでます!」
「そうかそうか」
「それで、父上、今日来たのはどうしたんです?」
お父様がお祖父様に聞きました。
「おぉ、そうじゃったそうじゃった。セシル専属の侍女を連れて来たぞ。」
そう言って、お爺様が連れて来たのは、綺麗なお姉さんでした。水色の髪の毛に茶色の瞳、ふんわりした感じで心地いです。
「じいじー、侍女いるー」
セシルには侍女さんがもういます。お兄様達やお母様が居ない時に一緒にいてくれる、ばあやって人とルルやエリーナっていう人が!今もお部屋にいるし、指差してお爺様に教えてあげると頭を撫でられました。
「うんうん。二人も侍女だけど、彼女達はセシルのお母様の侍女だからね。じいじが連れて来たのは、セシルとずっと一緒にいてくれる侍女だよ」
「じゅっと?」
「そう、自己紹介を、イネス」
「はい、お初にお目にかかります。セシル様。イネス・カラント・サムディ と申します。14になります。」
「ほぇ」
綺麗にお辞儀したイネスにセシルは思わず見ほれてしまいました。お兄様達より年上でお母様より年下みたいです。
「セシル、ご挨拶できるかな?」
最近お姉さん言葉が喋れるようになったんです、気合いいれていきますよ。
「はい!セシル・アン・マルディです!よろしくお願いしましゅ」
はわわ、最後に噛んでしまいました、恥ずかしいです。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「どうかな、セシル。イネスは気に入ったかな?」
お祖父様が聞いてきました、どう言う事でしょうか?
「ん?」
「セシルが嫌だと思うなら、別の人を探して来るよ」
「ほえ」
お祖父様の言葉にびっくりしてしまいました。周りを見渡しても、みんなセシルの言葉を待っているようです。イネスが嫌っていったら別の人ってどういうことですか?わからないです。えっと、一緒にいてくれるってことは・・・。
「ふぇ・・・イネスは一緒に、あそんで・・・くれる?」
困った時のお母様です、見上げて尋ねました。
「そうね、お勉強の時と、イネスのお仕事がないときは遊んでいいわよ」
お母様がセシルの頭を撫でながら言いました。
「じゃーあそぶ。アランおにいしゃまと絵本よむ!」
「ふふふ、それは明日からね。今日はイネスに、家のことを説明しないと」
すると、今まで黙って見ていたウジューヌお兄様が言いました。
「セシルに侍女?僕たちには?」
そういえば、お兄様達の専属の侍女はいなかった気がします。お父様が呆れ顔で言いました。
「お前達には、従者がいるだろう。」
「そうだけど」
お兄様達には従者がいます、みんな優しいです。それよりも、セシルはイネスの髪の毛が気になってじーっと見つめてしまいました。
「どうされました?セシル様」
イネスが視線に気づいて聞くと、セシルは周りを見回してもう一回イネスの髪の毛を見ました。
「イネスはうすいみずいろ、赤、青、茶、黄。にゃんで?」
みんなの髪の毛を指差しながら考えると、イネスだけ色が薄いです。みんなそんなに薄い人がいないです。
「それは、私はサムディ家といえど、末端の男爵の生まれで、平民に近いため血が薄いんです。だからカラントなんです。」
「血が薄い?」
血が薄いのと髪の毛の色が薄いのかな?カラントって何か意味があるんですか?知らないことが多いです。あとで覚えてたらお兄様に聞きます。
「だが、魔法の素質は高くてな。学院を飛び級で合格した」
そう言ったのはお祖父様でした。それに驚いたのはお母様です。
「まぁ!」
お父様と何かお話を始めました。ということは。
「イネスあそぼー!」
大人のお話は長いのです。イネスの手を取ってお兄様の手をとって歩き出そうとしたら、お母様に捕まりました。
「まだだめよ。お兄様達遊んで来てちょうだい」
「ぷー」
「頬を膨らませてもだーめ」
頬を指で押されて、ぷしゅーっと空気が抜けてしまいました。
「ほら、行こう。セシル。ではまた後ほど。イネス」
「はい」
*
「それにしても、父上はどうやって見つけて来たんです。学院を飛び級だなんて、引く手数多でしたでしょうに。」
「いや、結構前から目をつけていたんじゃよ。当初、王宮にという話があったんだが、ほらあの問題もあったし、本人が嫌がっていると言うのを聞いて、此れ幸いと」
「え?そうなの?」
シュゼットは驚いてイネスを見ました。
「は、はい。私には王宮勤めなんて難しいですし、考えただけで胃が痛くなり、思わず断ってしまいました。あとで親には叱られましたが。な、何よりも王太子と婚約だなんて話まで・・・」
イネスは思い出して胃が痛くなりお腹をさすりました。一族は本家から末端になるにつれて血が薄くなります。そして順位がついていくのですが、イネスはその末席に位置しているです。本来なら王家と婚約なんて絶対にありえないものです。
レオンは、ふむっと唸りながら今の王太子の年齢を考えながら呟きました。
「まー飛び級するくらい能力があるとなると、ありえるな。そこまで年齢が離れているわけでもないし」
「貴方、そうなると尚更やっかみが酷いわ。男爵家だと後ろ盾が弱いし、何よりも王太子の面倒の方が大変でしょう」
「・・・やんちゃだからのう」
ドラハが少し遠い目で答えた。その意見に同意するようにシュゼットとレオンは頷きました。王太子はやんちゃ盛りで困ったことばかり引き起こします。そんな雇い主の様子にイネスは苦笑するしかない。
「それでだ、子守ならどうじゃ?ってわしが声をかけたんじゃ!一回見てもらったほうがいいと思ってな。どうじゃった?」
「はい・・・大人の言葉をよく理解しているようです。でも、何故私が選ばれたのでしょうか、マルディ家の本家であれば、私のような末端の貴族ではなく、もっと」
「それは、お主の噂を聞いてな」
「私のですか?」
ドラハの言い方に、レオンは記憶の彼方にあった噂話を思い出した。
「まさか、サムディ家の神の庭の子か」
レオンの言葉にイネスは身を固くしました。
「といっても、赤子ではなく子供の時に記憶が戻ったと聞きましたわ。そのうちすぐに消えたとも」
シュゼットが聞けば、イネスはうなづいた。
「その通りです。私は神の庭の子と言われても、特別な記憶を持っていたわけではないです。」
「でも、一度でも噂が出てしまえば狙われてしまうわ。」
困ったようにシュゼットが言えば、苦い顔でイネスは答えた。
「はい、なので、止むに止まれず防衛の魔法が得意になったと言うだけでして、それで飛び級できただけなんです。マナの量は多くはないので、長時間とかは無理なんです。」
その言葉でレオンとシュゼットは納得した。神の庭の子を持つ親が何よりも恐れるのは、神の庭の子を利用しようとする者と、神の庭の子を危険視し抹殺する者達だ。
マルディ家は攻撃を得意とする家の代わりに、守りに対して若干弱い部分がある。個人個人がなんとかできてしまうために、誰かを危険から回避させるというのには慣れていない部分があるのだ、攻撃が最大の防御と言っていい一族だ。
「父上はどこまで我が家のことを彼女にお話に?」
「まだじゃ、幼い可愛い孫と遊んでいて、うっかり魔法を暴走させて剣の遊びで怪我もさせて以来セシルが怖がってやらなくなってしまったという話だけじゃな」
「なるほど、君は小さい子の面倒はみれる、ということかな?」
「はい、我が家には弟と妹がいるので、小さい子を見るぶんには問題無いです。」
「そっか、我が家はマルディ家だからね、息子達はやんちゃなんだ、娘のセシルは好奇心は旺盛だが、遊び方が息子達と違って激しく無いから問題無いと思う。・・・ただ、セシルは神の庭の子なんだ」
「え?!」
「そうそう、彼女に出した条件として、イネスを守るというのも入ってるんじゃ」
そうグドラハがいうと、レオンはうなづいた。
「ならば、ある程度の者であれば防げますね。セシルと一緒の方がより守りやすい。」
「貴方はどう?このお話受けてくれるかしら?嫌なら断ってもいいのよ。」
シュゼットが聞くと、イネスは緊張しながらも答えた。
「いえ、私も、渡りに船というか。ドラハ様が言うようにマルディ家に仕えれば、安全だという思いもあります。それに、私の力が必要で選ばれたことが、その嬉しいです」
不安そうに最後は声が小さくなりながらも聞いたイネスに3人はうなづいた。
「我らは、攻撃が得意な分、内側の守りが弱い。セシルはまだ戦うこと知らぬ、覚えるのも人より遅れる可能性もある、その時に守ってくれる存在が必要なのじゃ。家族で守ってはいるが、それでは間に合わない時もある。私たちの誰かが助けられる時までの時間稼ぎができる守り手が欲しかったんじゃ。サムディ家は守護の一族、とっさの時に守って欲しい。」
「それでしたら、私は最適ですね」
にっこりと微笑んで答えたイネスに3人はホッとした表情をした。イネス自身も恐れていたのは、神の庭の子を棄権している集団だった、その者たちにとっては邪の知識を持つ者と呼ばれているのだ。その者達に何度か狙われたことがあり、守護の一族だったからこそ、すぐに結界を張って致命傷を避けられたが、幼い子供では回避が難しい事がよくわかっている。
シュゼットはイネスの手を握って言った。
「セシルは、一部を封印しているの。それでも、記憶が少し出てくることがよくあるのよ。それをうまく誤魔化してほしいの。これから外の人間との接触も増えて行く年齢になるし」
「かしこまりました。奥様、精一杯努めさせていただきます。」




