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ジオルフリード 〜無敵のスーパーロボット、異世界に降臨す〜  作者: 左門寺三号


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第5話 ジオルフリード制御作戦

「ニッケ、流れを整えてるって言ったな、魔力のか?」

『そうよ!なんなら魔力を浄脈樹(ラヴェーネ)が食べやすいように流してもあげてるえらい妖精様なの!敬っていいのよ!』


 腰に手を当て胸を張るニッケがふんぞり返りすぎて空中で一回転するさまを尻目に銀は思案を続けていた。

 ふわりと舞う小さな体の周囲で、光の粒が引っ張られるようにきらきらと尾を引く。

 

「そのニッケ大先生の言葉を借りるなら――」

 

 銀は小さく息を吐く。ジオルフリードは今もわずかに震えている。

 

「――このでかいじゃじゃ馬魔具(ジオルフリード)は今、魔力の食いすぎなんじゃないかと思うんだが……どうだ?」


 ジオルフリードの主動力である“輝孔子”がこの世界の“魔力”であるならば、輝孔炉というポンプで汲み上げていた元の世界と違い、こっちの世界ではエネルギーの水源に全身どっぷり漬かりきっていることになる。手足を数度曲げるだけの動作に渾身の力を込めているような現状も道理と思えた。


『この子が暴走気味だって話の説明はつくわね……、ちょっと見てみる!』

 

 言うが早いか、プールの飛び込みよろしく手足を揃えて、コックピットに飛び込んできたとき同様、銀の足元の硬い床にとぷんと潜り込んでいった。


「どうだ……?」

『待って……ヒッ、おえっぷ……なんこれ……』


鋼鉄の構造物に遮られているはずだが、ニッケの(えず)きは銀に直接伝わってくる。言語が違うはずの銀とニッケの会話に支障がないのも、この意思を直接伝える妖精の対話方法(ゆえ)だと説明されている銀は、「便利なもんだ……」と独り言ちた。


『ぷはっ』

 

 しばらく待つと機体の中をどう通ってきたのか操縦席の天井から飛び出してきたニッケが、銀の提供した掌の足場に両手両膝と尻尾をついてぐったりと着地した。

 

『き、きもちわるーーーーオロロロ』

「おいおいおい」


 前歯輝く小さな口からキラキラとした何かが吐き出されるが銀の掌にあたる前に空中で霧散した。

 先ほど咀嚼していた行動食がそのまま出てこなかったことに銀は安堵した。

 

『この魔具イカレてるわよ!』

「あぁ、心臓部がな、何とか直したいんだが……」


 掌に向かって叫んだニッケが体を起こし、じれったそうに両手で頭を抱えて悶絶する。

 

『そうじゃなくて!あー、もう!これを作った人は神様か悪魔か、よ!』

「いや、うちの()()なんだが……、何がどうだったんだ?」


 ニッケが右手の人差し指を立てると、その指先にポンっと一輪の花が出現し、即座にはらりと散って花弁は先ほどのキラキラと同じように消えていった。


「魔法か?」

白魔力(クリマーナ)を花の形に変えたの。火投げの術なら魔力を[火に変えて][動かす]って二つの式を組み合わせてるんだけど、この子は全身びっしり変な形した金属が組み合わさってるでしょ?』


 指先を曲げた左右の小さな手を組み合わせてグリグリ動かしているのは機械部品を表現しているらしい。機械が一般的でないということはこちらの世界の工業化はあまり進んでいないようだ。

 

『[建物みたいな人型の鉄の塊を動かす]なんて、新しい生き物を一から作るみたいな複雑な魔法を、陣や呪文じゃなくて金属の形で細かーーく描き出すなんて創造神か何かの所業よ!変態!変態だわ!』


「自分の祖父を変態呼ばわりされるのは複雑なんだが……、魔力の方はどうだったんだ?」

 

 問いかけに、ニッケは両掌を上に向けて首を振る。

 

『頭の尖がりから足の先までびっしり魔法式なんだもん。口だけじゃなくて全身でご飯食べてるんだから、そりゃおなかいっぱい、元気もいっぱいよ!』


「……なるほどな」


 ニッケの例えは銀の仮説を裏付け、だからこそ銀は朧げに浮かんだ解決策にも期待できるような気がした。

 

木の妖精(フェア・ロト)浄脈樹(ラヴェーネ)の口元まで魔力を集めてやってるんだろ?」

 

 銀はニッケの目をまっすぐ見る。

 

「こいつも何とかならないか?」

 

 問いに対して、ニッケは一瞬きょとんとした後、今度は思い切り首を振った。

 

『この魔法式一つ一つにアーンしてあげるなんてとても無理よ!?』

 

「ああ」

 

 銀はあっさりと同意する。

 

「だから、ここだ」

 

 コンソールに指を置き、いまだに稼働不能を訴える心臓部――輝孔炉の位置をコツコツと指し示す。

 

「心臓部が壊れてるって言ったろ。機能的には心臓であり“口”なんだ」

 

 ニッケの動きが止まる。

 

『……口ぃ?』

 

 ぶんぶんと振っていた頭がぴたりと治まり、ふわりと一歩ぶん宙を泳ぐ。銀の手の甲に両手をつき、斜めに傾いでその指先を覗き込んだ。

 

「そこにまとめて流すことはできないか?」

 

 ぱっと飛び上がって銀に向き直ったその表情は明るく、納得感に満ちていた。

 

『全身にじゃなくて、そこにまとめればいいのね!』

 

 バレリーナのように回って勢いをつけると銀の眼前に前のめりに近づく。

 

『そのぐらいなら楽ショーよ!』

 

 親指を立てた小さな拳が、とてもいい笑顔で突き出された。

 その様子に銀も表情を緩めて頷いた。

 

「ちょっとやってみてくれ」

 

『いいわ!』

 

 軽い返事とともに、ニッケはふんわり宙に浮かび上がる。

 胸の前で小さな手を組み合わせ、祈るように目を閉じた。

 

 途端、周囲に満ちていた青白い光の粒が、ゆるやかに流れを変える。

それまで無秩序に漂っていた魔力が、一本の見えない筋に導かれるように集束していく。

 やがてそれは、ジオルフリードの胸部――輝孔炉の位置へと吸い込まれていった。

 かすかな振動。

 しかしそれは先ほどまでの暴れる手足を無理矢理押さえつけるようなものではない。

 規則正しく、静かな脈動。


 震えが収まっていき、各系統の挙動が安定していくのが分かる。

 

「いい感じだ」

 

 計器に目を落とすと、その波形が穏やかに整っていくのが見て取れる。

 荒れ狂っていた出力が均され、暴れていた各部の負荷が静かに収束していくのが目で分かり、口元が緩んだ。

 ニッケが片目を開ける。

 

『あれだけでいいの?』

 

「エサを口に放り込んでもらえれば、噛んで飲み込むのは機械の仕事さ」

 

 銀はニッケの仕草を真似て指を組み、ニッケとは違いガジガジとエサを噛みしだくように咬合させた。

 銀の厳めしい顔つきに反して茶目っ気のある仕草に、ニッケは口に片手を当てて笑いを漏らした。


『フフ、なにそれ』

 

 そのときだった。

 ――ズン、とわずかに機体が揺れ、モニタの映像が赤く染まった。


 火球が飛来する。

 轟、と唸りを上げて迫るそれは、明確な意思をもってジオルフリードの頭部に炸裂した。

 ただの流れ弾ではない。狙い澄まされた軌道だった。

 咄嗟に銀が操縦桿を握る。

 回避――その判断を踏みとどまり、あえて機体が動かないように手を固定すると、続いて三発目、四発目が飛んでくる。

 森の静寂を裂くように、火球が執拗に降り注ぐ。

 

『なになになに!?』

 

 ニッケが大慌てでコックピット内を飛び回る。

 

「ニッケ!」

 

 動揺するニッケの耳朶に銀の声が鋭く響く。

 

「もう一度頼む!」

 

 ニッケの手が離れ、機体に嫌な振動が戻ってきている。この状態での回避運動は危険が大きすぎることを銀は直感していた。


『分かった!』

 

 ニッケは反射的に頷き、もう一度手を組んだ。

 その小さな体を中心に、再び光が渦まき始める。

 

 ――そして、次の火球が迫る。


ここまでお読みくださりありがとうございます

お待たせいたしました

遅くとも 週1ペースは 守りたい

左門寺三号でございます

出社日には0.5話ぐらい書けてると思うので調子が良ければ週2で上げたいです願望です

Xを僭称する某SNSアカウントを開設しておりまして、そちらで偶に進捗など御報告させていただく予定です

本作のブックマークと合わせて御フォローいただけますと幸いです


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