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ジオルフリード 〜無敵のスーパーロボット、異世界に降臨す〜  作者: 左門寺三号


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第4話 無敵のスーパーロボットと、怒れ!眠れる小人ニッケ

『で、アンタはなんなわけ!? 侵略者?!』

「いつつッ……銀だ。(ぎん)峩弌(がいつ)

 

 銀は顎と首をさすりながら答える。

 光る小人は腰に手を当て、銀の周りをぴょんぴょんと跳ねるように飛び回りながら詰問する。

 

『ギン!どういうつもり!? アタシの昼寝を邪魔するなんて!!』

「……悪かった」

『さっきまですっごい静かで!あったかくて!最高のお昼寝タイムだったのに!!』

「悪かったよ……」

『そこにドォン!! こんなでっかい魔具で!なに!? 殴ったの?! ナンデ!?』

「……」


 銀は顎と首をさすっていた手を鼻筋に添え、目を固くつむり、指先で眉間を揉む。にわかに感じ始めた頭痛はクリーンヒットした飛び蹴りのせいでは無さそうだった。

 

『そこに風!ビューン!ゴロゴロー!アタシはとばされたーふざけんじゃないわよ!!』


 小人が先程の再現か空中でくるくる後転したかと思えば、小石を蹴る仕草で悪態をつく。空中なのでもちろん小石はない。

 悪罵に脳髄を直接殴られ続けている気すらする銀の両の手のひらの隙間から溜息が漏れる。

 

『なによケンカ!? 買うわよ!だいたいよそ様に魔法ぶつけといてねえ!!』


 拳を振りかざし回り続ける舌から止めどなく浴びせかけられる金切り声に、聞きたいことの二,三も出てきた銀はカッと目を見開く。

 

『そもそもノールマンがどうやってこの――』

 ――ズバンッ

()()()!!!!」

『キュッ』


 バンと膝に手をつき、相手の剣幕を遮る声量で銀が謝ると、弾劾者は膨らませた風船の口を縛るような音を発し、ヒラヒラと木の葉のように落下した。

 

 それを掌で受け止め、落下の軌道通り木の葉のように軽いその体をコンソールにそっと横たえる。

 機体の操作に生身の手を戻し、飛ばしたままだった機械の手を引き戻す。

 指示を飛ばせば後はほとんど自律的に軌道をとって戻ってくる拳はさておき、目を回してコンソールに横たわる矮躯を見やる。

 その花や葉を織りなしたような衣服を纏う胴体から生えた首や手足、脚の間の尻尾には褐色の毛がふっさりと生え揃い、頭部に比して大きめの丸耳が側頭部から、他よりも少し毛足の長い頭頂部の高さを越えてつんと突き立っている。

 大きな耳と脳が近い小動物には声が大きすぎただろうか、だらしなく開け放たれている口には2本の立派な前歯がきらりと光っていた。

 

栗鼠(リス)……にしてはデカいか……?」


 頭は少し大きいが肢体はすらりと長く伸び、げっ歯類のそれというよりほとんど少年期の人間の体形と言ってよい。

 戻ってきた拳が腕にガチリとはまる振動を気付けに、小さな体がバネ仕掛けのおもちゃのように飛び上がり、首を振って周囲を見る。


「おはよう」

『……おはよう……ございま、す?』

 

 先手を取って声をかけた銀に対して、尻尾の生えた小人はまだ焦点が合っていないようだった。


「ひとまず座ってくれ、甘いものは好きか?」

『すき!!』


 変面もかくやと言う切り替えの速さで再起動して目の色を変えた回答が餌を待つ雛鳥のような口から間髪入れず返され、銀からは苦笑が漏れる。

 取り出した行動食の包みを破り、半分に割って片方を自身の口に、もう片方を口を開けて待つ雛鳥に放る。


「硬いかもしれないが――」


 ボリッゴリッとおよそ食べものとは思えない音を立てる塊を咀嚼しながら銀が忠告するが、聞き届ける気もないとばかりに両手でしがみついたそれに前歯を突き立て、カカカッと掘削を始める。


『なかなか……!この歯ごたえが……!悪くない、わね!』

「分かるか……!」

 

 周囲からは栄養価は申し分ないものの単調な味と硬すぎる食感が実用一辺倒と不評だったが、頭蓋の揺れるような食感をこそ気に入っていた銀はこの反応に満足気に頷いた。

 

 『――で、ギンだっけ?ノールマンがなんだってこんなところまで来てるの?』


 普通なら迷って入ってこれないはずなのにと、建材のような硬度の行動食を削りきって腹に収めた小人が、ふわりとコンソールに腰掛け、腿の間に両手を揃えてつき、前に回したふわふわの尻尾に顎を乗せ、首を傾げて()()()()、両方の意味を込めて聞いた。


(ぎん)峩弌(がいつ)だ。右も左も分からなくてな、ノールマンというのもなんだか分からないし、君の名前も分からない」


『そういえば名乗ってなかったわね!ニッケよ!トゥリス・ニッケ・ミャウ!ノールマンがノールマンを知らないってなに?! どういうこと??』


 喉元どころか、先ほどの烈火のごとき怒りも過ぎ去った胸を張って名乗る小人を銀は微笑ましく見つめる。決して餌の埋め場所を忘れる栗鼠を連想などしていない。


 「ニッケ、昼寝の邪魔をして悪かった。まず何でここに来たか、だったな。話すよ、一から十まで順を追って」


『聞こうじゃない、ギン!』

 

 それから小一時間ほど二人は話し合った。悪い科学者と戦い、気づけば戦場の上空にいたこと、機体の制御が利かず兵士たちを驚かせてしまったこと、森へ隠れここにたどり着いたこと。

 時系列とすればさほど話すことは多くなかったが、聞き手の好奇心が縦横無尽に飛び回ったため銀が思ったよりも時間がかかった。しかし嫌な顔一つせず根気強く対話を続けた。

 

「見えてる景色が違うとは思わなくってな、手荒なノックになってしまった。」


『手荒すぎるわ!ちょっと周りを見てみなさい!』


 言われ、改めて周囲を見渡してみる。

 生えている木々は()を突き破るまで進んでいた森と比べると一段と大きい。幹はジオルフリードの巨体からしても見上げるほど高く、抱えるほど太い。その先の枝葉は昼の空に浮かぶ月のようにうすぼんやりと霞んでいた。

 これまでに見えていた木々も小さな光の粒を発していたが、より大きな光の塊がそこかしこを漂っている。

 戦場から結構な時間が経っているというのに、森の中は暗くなるどころか明るさを一層増しているように感じられた。


『ギンがぶち抜いた境界からこっちは浄脈樹の森なのよ!』

「ジョウミャク……?」

『別名浄脈樹(ラヴェーネ)よ。浄脈樹だけが二つ日(エルターン)の光の魔力(マーナ)から白魔力(クリマーナ)を作れる大事な神聖樹で――』

「待て待て待て待て……エルターンはさっき言ってたな……たしかこの星の太陽、空の光ってる星だったか……」


 一事が万事この調子で、銀への質問以外にも話の合間に『その2つは二つ日(エルターン)ね!』『今飛んできたのは《火投の術》の魔法に違いないわ!』『多分巨角毛牛(ドゥルガ)だと思うけど、もしかしたら《ドウ》かもしれないわ!』といった具合で容赦のない注釈を挟んでくるため、情報を集めたい銀にとっては都合良くも骨の折れる時間になった。

 その甲斐あって少なくともここが単に地球と別の星と言う訳ではなく、魔法やその源である魔力といった物理科学とは異なる法則が存在する“異世界”であることに疑う余地はなくなった。


「で、その魔力( マーナ)ってのは魔法を起こすのに使うんだったな?」

『そ!白魔力(クリマーナ)はあらゆる魔法の素になるまっさらな魔力よ。このデッカいのみたいな魔具を動かすのにも使いやすいわね』

「ほー……」

 ニッケがコンソールの上で跳び跳ねると、その小さな足に合わせてモニターの表示が強くなる。

 銀は相槌を打ちながら思考を巡らせる。かつて祖父、嶺壱が『輝孔子』と呼んだ未知のエネルギー。それが()()()()()()()()の「魔力」を指していることは、もはや確信に近かった。

 

『つまりこの灯宿りの大神森(ひともりのだいかもり)は世界を支えていると言ってもいいぐらい大事な場所なのよ!』

 

 そう言って浮かびながら腕を広げて胸を張るニッケの背後には、何らかの膜を突き破ったジオルフリードの拳を受け止めた巨木が聳え立っている。

 

「だからお前たちが結界で守ってたってわけか」

『いや?』

 

 銀の言葉にニッケは心底意外そうに首を傾げた。

 

「いや?」

『アタシたち木の妖精(フェア・ロト)は魔力が濃くて過ごしやすいから住み着いてるだけよ!ただ灯黙りの森との魔力の濃度差が大きいから、そこの流れをちょっと整えて見え(にく)ーくしてるの!安全のためにね!』

 尻尾を気楽に振り回しながら、当然と言わんばかりにニッケは言い放つ。

 使命感よりも生活環境の利便性を優先するその言い草はあまりに俗っぽく、かつ生命として真っ当で、銀は思わず吹き出してしまった。

 

今回もお読み下さりありがとうございます!

もうちょっとお話が進むかと思ったんですが、進みませんでした

異世界で初のネームド、ニッケちゃんの登場です

次回からの更新は毎日投稿ではなくなります

遅くても週1では投稿できるようにがんばります

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