番外編1 セレナ×サイラス
1000ポイント↑、異世界転生恋愛で日間ランキング最高六位ありがとうございます、たくさんの反応をいただき驚いております。
皆さん本編の方を読んでくださりありがとうございました。
また、誤字報告をしてくださった方に深く感謝申し上げます。
「セレナ様! 今日一緒に帰りませんか?」
「ごめんなさい、今日はちょっと先約があって……」
「あ、サイラス様とのですか? それなら私は邪魔できませんね、楽しんでください!」
「え、あ、ありがとう……」
ペネロペお姉様とサイが卒業してから二年ほど経ち、私ももうすぐ学園を卒業する。
一年生のころは、お姉様とサイ、そしてメロディーとクロードにべったりだったけれど、二年生になってからはだんだんと友達も増えた。
ただ……サイが絡むとみんな一歩引くのが玉に瑕。
みんなサイの重すぎる愛にドン引きしているらしいが、私はそんなところも大好きだ。
「見て! サイラス様よ!」
「セレナ様を待っているのかしら?」
「相変わらずの溺愛っぷりね、さすが舞台化しただけあるわ。あなたはあの舞台見た?」
「えぇ勿論、まるで恋愛小説を読んでいるみたいな舞台だったわ。あぁ、私もあんなイケメンに惚れられてみたい……」
「えー、いくらイケメンでもちょっと重すぎない?」
校門の近くまで歩いていくと、そんな話をしている令嬢達の声が聞こえる。
そう、私たちが結ばれるまでの話がなんと舞台化したのだ。
私としては恥ずかしいから絶対に嫌と言ったのだが、サイが乗り気になり監督と意気投合したことで制作されてしまった。
自分の恋愛遍歴を世間に公開だなんて……本当にどうかしている。
でも、サイが目をキラキラさせて嬉しそうにしていたら、私が反対できるわけなどないのだ。
メロディーには、私はサイに甘すぎると言われたけれど。
「サイー!!」
姿を視認できたので手を振りながら叫ぶと、サイは片手に持っていた本を鞄にしまい、急いでこちらにやってきた。
うん、本を持っている立ち姿……かっこよすぎる。
「セリー久しぶり、会いたかったよ!」
一昨日会ったばっかりだから久しぶりでもないような気がする。
サイは公爵家を継ぐための仕事と、王宮での仕事でかなり忙しいはずなのに、こうやって二、三日おきに会いに来てくれるのだ。
私もサイに会うことで元気になれるから会えるのはうれしいけれど、忙しすぎて倒れないかどうか心配だ。
心配の言葉をかけようと口を開いたとき、彼は私の額にキスをした。
こういったことは何回もしているはずなのにやっぱり慣れない。
「ちょっと! 人が多いんだからこういうところでそういうことをするのはやめてほしい……」
「そういうことって?」
「う、その、キスのこと!」
「はは、セリーはいつまでたっても赤くなっちゃってかわいいよね」
「またそうやってからかって!」
本当はわかっているのに聞いてくるなんて、やっぱり意地悪だ。
「まぁ、これには牽制の意味もあるけどね」
「何か言った?」
「いや、なんでもないよ」
私がちょっとムッとしていると、サイがごめんねと言いながら、自然なしぐさで私のカバンを持ってくれた。
「ありがとう」
「お安い御用だよ。そういえば、明日のデートなんだけど……ちょっと舞台を見に行かない?」
「……舞台?」
「そう、舞台」
「その舞台ってまさか……あれじゃないよね?」
私の言葉に、サイがにっこりと笑う。
私は知っている、サイがこうやって笑うときには大体よくないことを考えているのだ。
「本気?」
「本気だよ、当事者の僕たちが見なくてどうするのさ。スチュアート殿下とペネロペも見に行ったって。見ている間ペネロペがセレナセレナうるさかったけど、その姿が可愛かったってスチュアート殿下にのろけられたんだよね。……僕らも行かないと」
「え、お姉様たちも見に行ったの?」
「ペネロペがどうしても行きたいって言うから、特等席で見たと言っていたかな。もう周りの人たちはかなり見に行っているよ。僕たちも流行に乗り遅れないうちに見に行かないと!」
「……当事者なのに乗り遅れることってある?」
「明日楽しみだね!」
こうして私は、なぜか自分の恋愛がモデルになっている舞台を見に行くことになった。
◇◇◇
「それでは本日の舞台、ぜひ楽しんでくださいませ」
「あぁ、期待しているよ」
ここは特等席。どうやら私たちは舞台のモデルだから特別に王族とその親戚が来るような席に案内されたらしい。
更に、監督がわざわざ始まる前に挨拶をしに来てくれていた。
「さて、やっと二人きりになれたね。こっちへおいで、セリー」
椅子は二つある。けれどサイは自分の膝をポンポンとたたいている。
「ちょっと近すぎないかな……そこに座ったら舞台に集中できなさそう」
「でも、好きな人と恋愛舞台を見るにはすこし距離が遠くない?」
「それは……そうかも」
「おいで」
最後には有無を言わさぬ声色で言うものだから、私はサイの膝の上に座ることにした。
『むかしむかしあるところに、一人の男の子がいました。その子の名前はフィリップ。公爵家の一人息子として、それはそれは大事に育てられていました』
良かった、さすがに偽名が使われているようだ。
そのままストーリーは進行していく。
『僕のことはどうかそのままフィルと呼んでほしい』
私たちが出会って、愛称で呼び合っている場面だ。
「何回でも思い出せるよ、僕がセリーに惚れた時のこと」
サイが私のことをぎゅっと抱きしめてくる。
私が回ってきたサイの手を握ると、サイは少し間があいた後に笑った。
「こんな風にセリーと両想いになれるなんて、お兄様扱いをされていたときは思いもしなかったな」
幼少期のシーンを眺めている彼がぽつりとこぼす。
「私も、一応サイのことを異性として見ていなかったわけではないよ? そういう風に見ないようにしていただけで、本当はずっと好きだったと思う」
それを聞いたサイの体がこわばるのを感じ取る。
「セリーって人たらしだよね……そんなこといわれたらキスしたくなってくるな」
「ちょっと舞台に集中しようよ……」
そのまま二人で幼いころを懐かしんでいるうちに、舞台も最終シーンまでやってきた。
『お願いだ……どうか、目覚めてくれ』
そういいながら私をモデルにしたキャラクターを演じている舞台女優さんにそっと近づいていく。
当たり前だけれど、舞台女優さんはとってもかわいいし、舞台俳優さんも実物のサイには劣るけれど勿論かっこいい。
二人の唇がぶつかるまであと数秒前と言ったところで、突然サイが私の顔をグイっと後ろへ向かせる。
「え、ちょっと、サイ? 今いいところ……
その言葉を言い終わらないうちに、私の唇はサイのものでふさがれた。
舞台ではストーリーが進んでいるようだが、そんなものは耳に入らない。
ただサイからのキスを受け止めるだけで精いっぱいだった。
「サイ? ちょっとっ
こんなに長いキス、はじめてだ。
いつもなら触れるだけで終わりなのに……
私が息を吸えなくなって限界に達する直前で、サイは離れた。
「ごめん、ちょっとやり過ぎた。……セリーがあまりにもあの舞台俳優のことばっかり見ているから、悔しくなっちゃって」
「い、いや、平気よ」
私はというと恥ずかしさと焦りでおかしくなりそうだ。
もう、舞台俳優のことなんて全く見えていない。
「そ、それにしても、サイもこういうことするのね。意外かも……なんて」
私は乾いた笑い声をあげる。
「意外? ふーん、セリーはこういうの苦手かなって思って今まで我慢していたんだけど……これからはどんどんしてもいいってことかな? ……例えばこのキスの先とか」
「な、な、な!」
もはや意味のある言葉を発することができなくなってしまった私の頭を、よしよしとなでてくる。
「大丈夫、結婚するまでは手を出さないから。結婚前だとペネロペに怒られてしまうだろうし」
「でも、結婚するまでって……もうあと一か月もないじゃない!」
本当なら卒業から半年ほどして落ち着いてきたときに結婚するカップルが多いのだけれど、サイは待ちきれないからと言って、卒業式の翌々日に結婚式を挙げると決めてしまった。
「楽しみだね」
「確かに結婚するのは楽しみだけれど……」
「……さっきのは冗談だよ。大丈夫、二人でゆっくり進んでいこう」
「うん」
なんだかんだ言って優しいサイのことが私は大好きだ。
舞台が盛り上がりを見せる中、私たちの瞳にはお互いの姿しか映っていなかった。
次回はペネロペ×スチュアートのお話を書こうと思っています。
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また、短めの予定ですが新連載も始めたので、気が向いたら遊びに行ってください
『自信がなさすぎる第二王子が、前世の私の好みにドストライクすぎて困ります!』(https://ncode.syosetu.com/n4020ic/)




