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21,真実の愛

あの事件が起きたその日のうちに、公爵邸には捜索が入った。

そこで、数々の証拠の品々が発見されたことによりクラーク公爵は逮捕され、裁判にかけられることとなった。


やはり公爵は、ハンプシャー公爵家とリンジー侯爵家が婚姻によって結びつくことを恐れていたそうだ。

しかも預言者とやらが、僕らが生まれる前から、ハンプシャー家とリンジー家の第一子同士が結ばれるだろうと言っていたらしい。


彼らにとって誤算だったのは、僕が好きになった相手がペネロペではなくセリーだったこと、そして僕とペネロペが予想以上に強かったことだろうか。


まぁ、どんなに必死で剣の練習をしたって、どんなに魔法の才能があったって、今のセリーを助けることはできないけれど……


「真実の愛か……」


セリーはそのまま自宅に運ばれて、今は自分のベッドの上にいる。

顔色は良くなり、何も知らずに彼女の姿を見れば眠っているようだけれど、「真実の愛のキス」ができなければ、もう一生目を覚ますことはない。


セリーが倒れてから三日間、スチュアート殿下、メロディー、クロードなど学園の人やそのほかにも多くの友人が足しげくお見舞いにやってくる。

彼女の両親は仕事で忙しいはずなのに毎日何時間も付き添っているし、メイドのエイミーは毎食部屋まで食事を持ってきては、そのまま片づけている。


そしてペネロペはあの日からずっとセリーの部屋の中にいた。


そしてそんなお見舞いに来るみんながみんな、僕に期待のまなざしを向けるのだ。


僕は…僕は、自信がない。

セリーが僕を「恋愛的に」愛してくれているのか。

もしキスしても目覚めなかったら……?


そう考えてしまうと怖いのだ。

こんなことになるなら、彼女から恋愛をする機会を奪わなければよかった。


そんなこんなで、今までずっと「キス」を試すことができずにいた。


「セリー……」


ペネロペは疲れたのか部屋の隅にある椅子に座ったまま寝てしまっている。

お見舞いに来た人たちも丁度帰っていったので、部屋には僕とペネロペとセリーしかいない。

だからだろうか、部屋の中がとても静かで……




『サイー――!』


『わたち、セレナ! セレナ・リンジーっていいます』


いつでも笑顔なセリーの姿が瞼の裏に浮かんできた。




彼女が、セリーが、僕の前に現れたあの日からずっと、セリーだけを愛してきた。


「お願いだ……どうか、目覚めてくれ」


そのままそっと、自分の唇をセリーのそれに重ね合わせる。


しばらくして唇を離す。

彼女の目元を見つめること数分。



何も変化は起きなかった。


やっぱり僕ではダメなんだ。

そう理解した瞬間に、視界がにじむのを感じる。

泣くなんて、いつぶりだろうか……かっこ悪い。


僕は、セリーの手を握って泣いていた。


◇◇◇


誰かの泣く声が聞こえる。


私は、なぜか重い瞼を上げようとする。

なんでこんなに体がだるいのだろう。

なんとか目だけでも開けて、誰が泣いているのか確認しないと。


黒い視界がだんだんと色づいていき、物の形をとらえられるようになってきた。


「……う、うう……セリー…………」


嗚咽もはっきりと聞こえてくるようになった。

私のそばで泣いていたのは……


「……サイ?」


何日も声を出していなかったのだろうか。

声は枯れていてほぼ出なかったが、サイは確かにこちらを見た。


サイは両目からボロボロと涙を流していた。

いつから泣いていたのかわからないけれど、目は真っ赤に腫れていて袖は色が変わっている。


長年サイと一緒にいたけれどこんな姿は見たことがない。


「……どうして泣いているの、泣かないで。サイが泣いていると私も悲しいから……」


推しの、いや「私の好きな人」の、こんなにつらそうな姿は見たくない。

私にこんな権利がないことはわかっていながらも、ゆっくり起き上がるとそのままサイを抱きしめてしまった。


「……サイ?」


「セリー…!」


抱きしめたら倍の力で返されて変な声が出そうになる。

ただ、その後に続いた言葉を聞いて、本当に変な声を出してしまった。


「セリー、君のことがずっと好きなんだ。いや、愛している! もう、僕をおいていかないでほしい……」


「ふぇっ!!」


サイが……私のことを……好き?アイシテイル……??


サイに可愛い可愛いと言われながら、必死で今私はどういう状況にいるのか考える。


私は……そうだ、お茶を飲んで倒れたんだった。

ということは、もしかしてここは天国?

そうだよね、サイが私のことを好きなわけないもん、本来サイの相手はヒロインであるお姉様のはず。


私が今まで頑張ってきたから、この世ではかなわぬ思いを天国でかなえさせてくれたのかな。なんていい夢を見せてくれるんだ神様……


ここが天国なら私もサイに想いを伝えてもいいよね?


「ねぇ、サイ?」


「何?」


なでる手を止めて、抱き合っているからだを少し離し、サイはまっすぐ私の目を見た。


「私もサイのこと大好き。……その、きっとサイよりも前から、ずっとずっと愛しているわ。だから今とっても幸せ」


「……セリー!」

「セレナ!!! 起きたの!?」


再びサイが私を腕の中に閉じ込めようとした瞬間、お姉様がこちらへ突撃してきた。

サイから私を奪い取ると、また抱きしめられる。


「セレナ! ……本当に良かった! 私、あなたはもう二度と目を覚ますことはないんじゃないかって考えたら、私っ、もう、どうして生きていればいいのかわからなくて……」


ペネロペお姉様がわんわん泣いている声、それにサイの呆然としている顔を見て、私は一つの可能性にたどり着いた。


「もしかして、ここ……天国じゃない?」


「なにいってるのセレナ。……あなたが天国にいくなら、私も一緒に行くわ」


「セリー、ここは天国でもなんでもないよ。君の部屋の中だ」


ということは、サイと私が両想い……ってこと?


「うそー―――――――!!!」


私の大声を聞いて、たくさんの人が集まってきたのは言うまでもない。

今日の夜ラスト一話分投稿する予定です!

よろしくお願いします。

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