表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/25

19,当日

「遂に……遂に来てしまったわこの日が!」


「セレナお嬢様少しうるさいです」


「それどころじゃないのよ、今日は卒業パーティー、そして婚約の儀もあるのよ!」


いつもよりは若干豪華な服を着ている。

式典の日だから豪華にするということよりも、もし今日私が何かやらかして隣国に逃げることになった時の資金源である。


仮病をつかうことも考えたのだけれど、在校生が出席しないのはかなり外聞が悪いとメロディーに言われてからは、出席する方向で考えることにした。


「お姉様とサイの晴れ姿、見たいしね」


「ペネロペお嬢様もついにご卒業ですか……なんだか感慨深いです」


お姉様はもう先に学園まで行ってしまったので、今日はメロディーと一緒に行くことにしている。

約束の時間まではあと10分ほど。


「服装とかメイクとか、これで大丈夫かな? 変じゃない?」


資金源としてはいい感じだけれど、一応姉と「兄代わりの友人」の卒業式だからきちんとした格好をしたい。


「えぇ、どこからみても美しいですよ。今日は婚約の儀もありますもんね、気合十分です!」


「あはは……」


嬉しそうに笑っているエイミーには申し訳ないけれど、誰かに婚約を申し込まれる予定はどこにもない……


「そろそろ出発しようかな」


「かしこまりました」


そのまま家を出て事件現場……ではなくて、卒業パーティーの会場へ向かうのだった。


◇◇◇


「セレナ、そろそろペネロペ様でてくるわよ」


隣に座るメロディーに肘で小突かれてハッと目を覚ます。


なんだかんだ今日のことが心配で、あまりよく眠れていなかったと言い訳したい。

いや、寝れていても寝ていたかもしれないけれど……


「助かったわメロディー、ありがとう」


「もう全く、セレナったら!」


小声でぶつくさ文句を言うメロディーと寝起き顔の私を見て、横に座るクロードがあきれた顔をしている。


「ペネロペ・リンジー」


「はい」


澄んだ声が響き渡る。

そして舞台の上に姿を現したお姉様は、さすがヒロインという姿だった。


原作乙女ゲームのイラストと同じ、ふわふわの白いドレスがお姉様の可憐な顔立ちによく似合っていると軽く感動してしまった。


そのまま凛とした足取りで卒業証書を受け取るお姉様をよく目に焼き付ける。

この世界に転生してから、何度カメラが欲しいと思ったことか……


そのままお姉様の卒業証書授与が終わってから何とか眠らずに待っていると、今度はサイラスの番がやってくる。


「サイラス・ハンプシャー」


「はい」


声からかっこいいなんて、さすが私の推しだ。

その後壇上に上がったサイを見て、私の心臓は止まりかけた。


黒いタキシードに身を包んだサイは、本当にイラストから飛び出してきたかのようなかっこよさだった。……実際そうなのかもしれないけれど。


かっこよすぎて、会場中の空気が変わるのを感じる。

男も女も、生徒も先生もみんな彼にくぎ付けだ。


私はこんなにかっこいい人が幼馴染なだけで恵まれているのだから、満足しなきゃいけないと思いなおす。



結局私はもう一度眠ってしまったが、卒業式は無事に終わった。

そのまま、卒業パーティー兼婚約の儀の会場に移る。


卒業パーティー開始から一時間ほど経ったあたりから、同じ会場で同時並行して婚約の儀が執り行われるのだ。


会場の二階席には、国中の貴族が招かれて、新たな家同士のつながりを確認する。

勿論王族の方々も参加し、彼らには一階席の奥の方に豪華な椅子が用意されている。


卒業パーティーの会場では、もう二階席にちらほらと貴族がやってきていて、これから婚約を申し込む卒業式を終えたばかりの男子生徒たちは、緊張の色を浮かべていた。


「セレナ! やっと見つけた!」


そういいながら駆け寄ってきたのは私の大好きなお姉様。

まるで花嫁のような姿を改めて間近で見た私は、思わずぼうっとしてしまう。


「お姉様……今日はいつもに増して素敵ね」


「そう? セレナに褒められるのが一番うれしいわ!」


「僕はどうかな? セリー」


いきなり背後から話しかけてきたのはサイだ。

サイの姿は壇上からですらかっこよすぎて目がつぶれそうだったのに、こんなに近くで見たらまぶしすぎて何も見えないと言っても過言ではない。


「かっこよすぎる……似合ってるよサイ!」


うっかり真剣なトーンになりかけたので、ごまかすように明るく言ってみた。


「はは、うれしいな」


良かった、何とも思われていないみたいだ。

でも、心なしかサイも少し緊張しているように見える。


大丈夫だよ、サイがお姉様に振られるわけがない。

だってこんなに素敵な人なのだから。


「セリーの顔も見ることができたし、僕は準備の方に行ってこようかな」


周りでも男子生徒たちは、早々に婚約の儀の準備をするため別室へ集まっているようだ。


「行ってらっしゃい! 婚約の儀、うまくいくといいね!」


私がちぎれそうな心に蓋をして、サイに励ましの言葉をかけると、サイはぎこちない笑みを浮かべる。


「あぁ、ありがとう」


そのままサイは別室へと行ってしまった。



「ペネロペ様は、誰か意中の男性が今回の卒業生の中にいらっしゃるんですか?」


そばで私たちの様子を見ていたメロディーが、興味津々といった様子でお姉様に聞いている。


「そうね……内緒かしら」


「えぇー、すごく気になります!」


「私が誰を想っているかはこの後もうわかるわ」


「ということは、やっぱり今回の卒業生の中に…!?」


「ふふ……」


「わぁー! 私てっきりペネロペ様はセレナのことが好きすぎてそういったことに興味がないのではないかと思っていました!」


なんだかお姉様に対して失礼なことを言っているメロディーの声を聞きながら、会場の様子を眺める。

とりあえず私の周りには今のところ不審な人はいなさそうだ。


警戒しておくに越したことはない。


ここは原作乙女ゲームの山場だ。

何もないはずがない……


「セレナ? 大丈夫?」


気が付けばメロディーはいなくなっていて、お姉様が私の顔を覗き込んでいた。


「ごめんなさい、少し考え事をしていて……いよいよサイとの婚約だね」


色々考えていたからか、つい皮肉るような口調で言ってしまう。

その言葉にお姉様は驚いて目を見開いた。


「……そうね、セレナはわかっていたの?」


「お姉様とサイが両想いなこと」をということだろうか?

そんなのずっと、前世から知っている。


「勿論。わかっているわ」


「だから今日はいつにもましてきれいな格好しているのね……なんだか悔しいわ」


お姉様が何に納得して、そして悔しがっているのかはよくわからないけれど、私のメンタルはすでにかなりボロボロだった。


これから、私の大好きな人が私の姉に告白するのだから……


こんな心の内をみんなにばらすわけにはいかない。

いったん落ち着くために、そばにいたメイドから紅茶の入ったカップを受け取り、そのままグイっと飲み干した。


淑女らしくないって笑われちゃうけれど、これが私なんだからしょうがない。


「あれ?」



なんだか瞼が重くなってきたような気がする。


……体の力も抜けてきた?


横を見れば、ペネロペお姉様が私を見て焦った顔をしている。


これってもしかして私、ここで死んじゃうの!?


「う、ううう……」


周りの音がどんどん遠のいていく中、私はポケットに入れてあった瓶から一粒の錠剤を取り出して、まだそばにいたメイドの口に押し込む。


メイドの驚いたような顔を見た次の瞬間、私は意識を手放した。

いいね・ブックマーク・評価等お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ