十四挺目 お呼ばれ
「あの、ぬいもち......?」
俺の手を引っ張りショッピングモールを出ようとしていた不知火は、いつしか俺の腕にしがみついていた。
「黙れ」
戸惑う俺に対して、不知火は端的にそう返事をする。
「......帰るか」
そんなこんなで俺は不知火にしがみつかれながら駅に向かった。
「駅着いたぞ。切符買ってくれ」
「......ええ」
不知火は小さく頷くと、俺の腕から離れて券売機の方へと向かった。ICカード持ちの俺はそんな不知火を見守る。
改札を通ると、またしても不知火が俺の腕にしがみついてきた。
「あの、しらぬ......」
「離れろ、という要求なら聞かないわ」
「違う。違う」
「じゃあ、何。私を嘲笑う気? 好きにしたら良いわ。もうどうでも良いから」
不知火の声色は段々とヒステリックになっていき、声量も大きくなっていく。
「......昼ご飯、何が良い? ぬいもちが好きな物作る」
俺がそう言うと不知火は不意に足を止めた。何時ものわざとらしく、嫌悪感を露わにした溜め息ではなく、自然と出た静かな溜め息を彼女は吐く。
「不知火?」
時が止まったかのように不知火は動きを止め、沈黙した。仕方がない。不知火が動く気になるまで待とう。
俺がそう思った瞬間、誰かが駆けてくる音に気付いた。
「ぜえ......! はあ......! ぬい先輩! 追い付きましたぞ!」
その足音が止むと同時にそんな声が俺と不知火の背後から聞こえてくる。
「追いかけてきたのか?」
俺の問いに蜂須賀はコクリと頷く。
「......お二人、もうお昼ご飯食べました?」
「んや、まだだけど」
俺が答えると、蜂須賀はニコリと嬉しそうに笑った。
「だったら、私の家に来てくれませんか? 何か作りますから。今日、両親どちらも不在なんです。梓たん、一人でご飯食べるの寂しいなあ、って」
「俺は勿論、嬉しいんだが......ぬいもちは?」
蜂須賀のことを露骨に避けている不知火が彼女の誘いに乗るはずがない。そう思い、彼女の方に俺は視線を送った。
彼女は静かに視線を蜂須賀の方へと向ける。そして、またしても自然と溜息を吐いた。
「行くわ」
「......マジ?」
不知火の口から放たれた予想外の言葉に俺は思わず、心の声が漏れてしまった。
「勝ったな。風呂入ってくる」
「それ負けフラグだぞアズアズ」
「あ、そっかあ......。兎に角、ぬい先輩も同意してくれたことですし、一緒にご飯食べましょ。昼ごはん、何が良いですか?」
「アズアズの作ってくれるもんなら何でも良いぞ。な、ぬいもち?」
「......ええ」
叶向と不知火の衝突、蜂須賀の家でのランチ、初デートにしてはあまりにも情報量とハプニングが多過ぎる気がするが......。
あまり考えると、自分が哀れになってくるのであまり考えないようにしよう。
⭐︎
「さあさあ、お二人さん、座って下さい! 地獄のように散らかってますけど、梓たんに免じて許してね」
と、話す蜂須賀によって俺と不知火は彼女の家のダイニングチェアへと座らされた。部屋は掃除が行き届いているようでフローリングは光沢を放ち、埃一つ見えない。
散らかっているとは言っても空の洗濯物カゴが置いてあるだけだ。これで地獄なら俺の家はどうなってしまうのか。
「アズアズの家、ひっろ」
外観から想像はしていたが、蜂須賀の家は驚く程に大きかった。ダイニングとリビングだけで俺の家の四倍の広さは有りそうだ。しかも、これで他の部屋も幾つか存在し、2階まである。
蜂須賀、実はかなりのお嬢様なんじゃなかろうか。
「んー、思ったより何も無いですね。パスタで良いですかー?」
キッチンで食料を漁っていた蜂須賀が俺達にそう聞いてきた。
「おー。お願い」
「イエッサー! 梓たんの料理スキル見せてやりますぜ! ......霊群先輩、パスタって水から? お湯から?」
スキルポイントもっと振れよ。




