告白
昨日は母の手紙のことで、南に背中をスリスリされながらずっと泣いていた。そして南も同じくらい泣いていた。
でも母は、あの手紙を僕が泣くためじゃなくて、前向きに生きることために書いてくれたはず……。
それに、「あなたはあなたなりに誰かを幸せに出来る人になりなさいね」って書いてくれた。
だから、今日こそは泣かない! 前を向くぞ!
そんなことを考えながらベッドから起きた。まだ窓の外の空は少し暗い。
あの塀の外の崖に行きたくなった。だいたい気持ちが落ち着かないときはいつも行っているが、今日もそんな感じだ。
朝日は少し出ているが、崖の方は家の影なのでとても暗い。
庭を抜けて木々と花々に覆われた塀にたどり着く。そこにある小さな穴を這いつくばってくぐる。
「あ……おはよ」
南が崖の先端で膝を抱えて座っていた。
さすがに今日はメイド服じゃなくて、普通のパジャマを着ている。
「うん……おはよ」
南の隣に座った。眠いのか、泣いているのか、手で目を擦っている。
水平線も見えないくらい空は黒いが、朝日の光が波にチラチラと揺られている。海岸に波が打ち付ける音が、遥か下の方で静かに聴こえる。
「南……昨日は、色々ありがとね」
「……うん」
「僕、すごい泣き方してたでしょ!」
「………うん」
南は元気がないのか、少し冷たい反応をする。
「ねぇ、ちょっと僕の話聞いてくれない?」
「……いいよ」
「あのね、別に解決策が欲しいとかそういう話じゃないんだけどね……
前にも話したしあの手紙にも書いてあったけど、僕は母も妹も亡くなってしまった。特に妹なんて……守れるべきで、守るはずの兄なのに………守れなかった。
大切な人を2人も守れなかった。
……でも、南。僕にはまた1人大切な人ができた。それは君だ。
こんな僕だけど、そばにいさせて。君を守らせてくれないか?」
「……それって、告白?」
真顔でストレートな質問が返ってきてギクっとした。
「……え〜っと、そうであるとも言えるし、無いとも言える……」
「もぉ〜、はっきりしなよ。ふふ
……本気で守る?」
「もちろん!」
「…………じゃあ、約束ね!」
そう言って南は小指を僕の前に出してきた。僕も同じようにすると、その指を絡めた。
「頑張って私を守ってね!」
「うん……ありがと!絶対に守るから!」
心の奥から笑顔になるような感覚を自分に感じた。
ちょうど日が出てきて微笑む南の顔を照らした。
「あと一つ、南に聞きたいことがあるんだけど……」
「なに?」
「これまで色々な場所で見てきたことと聞いてきたことからすると、南は本当にロボットだと思う……
でも、南は脳が入っているロボットなんでしょ? というより、南はロボットながらにも脳を持っているんでしょ? つまり、中身は人間でしょ?
会ったばっかりのときは僕のいとこで、家庭の事情でこっちは来たとか言ってたけど、あれは全部僕のお父さんから聞いたことで、しかも嘘だったんだよね?
じゃあ、南のロボットになる前の過去はどういうものだったの?
何か少しでも記憶とか手がかりは無いの?」
「…………」
「いつだって南は僕と仲良くしてくれた。いつだって僕は南のことを見ていた。
僕は南のことを家族とも友達とも思ってる。
だからこそ知りたいんだ。
南、一体君は誰なんだ?
まだ連載中ですがよければ評価もお願いします。
ほとんど毎日更新しています。