〜母より〜
拝啓
この手紙を読んでいるということは、この手紙を見つけられたってことだね。そして、もう私、お母さんはいないということ。
自分の研究室でこの手紙を書いてる。すっごい眠たい。今日は娘の出産予定日一週間前。これまでなんとか入院しないでいたけど、さすがに明日からは行かなきゃと思って手紙を書いたの。
私がこの手紙を書いている今は翔介が6歳だったけど、きっとこの手紙を読んでいるときすごく大きくなって、お母さんの背も抜かしているかもしれないね。
なぜ私が手紙なんか書いたのかって思った? まるで私が死ぬことが分かってたみたいでしょ。でもね、死ぬかもしれないって感じてた。
翔介、覚えてる? たまにお母さんの研究所のベッドで一緒に寝たこと。そこで「空飛ぶロボット」とか「人みたいなロボット」のお話してあげたでしょ。あれ全部ほんとの話なんだよ。なにしろあなたのお母さんは天才ロボット開発者だからね!
私はロボットの開発研究をしている。そして、私は誰にも秘密で人間型ロボットを作ってる。そのロボットはRHR-Bという名前で、Real Human Robot - Brain (リアルヒューマンロボット-ブレイン)の略。脳を使ったリアルな人間型のロボットってこと。
私にはこのロボットを急いで完成させなきゃいけない理由があるの。どんな理由かは教えられないけど……。だから、私は今もこの手紙を書きながらもロボット開発の最終段階を進めている。たぶんもうちょっとで終わるの。
でも、お腹に娘、翔介にとっては妹がいるのに研究で寝ない日もある。もしかしたら出産はうまくいかないかもしれない。それでも、私は娘を産むと決めたの。自分が死ぬとしてもね。……ごめんね!でも、しょうがないの。
……もし、お母さんが死んだとしても、泣かないで!
私の作ったロボットは分身と言ってもいいくらい私に似てるの。実を言うと自分しかモデルがいなかったからね。でも私、癖っ毛は嫌だったから髪の毛はストレート。笑うところだからね。
このロボットのことを知っている人が1人だけいる。それはあなたのお父さんである私の夫。私が一番愛してて、信用してる人。お父さんには、ふさわしい時にこのロボットを使ってと伝えてある。もしかしたら、翔介がこの手紙を読む前に起動させているかもしれない。そしたらそのロボットを私だと思って!
ただのロボットだと思うかもしれない。ロボットになんか何もできないと思うかもしれない。
でも、このロボットは私が命掛けで作った作品なの! だから、どうか起動したときは守ってあげて。きっとロボットがあなたを支えて守る時が来る。
それと、もしお母さんが出産で死んで、赤ちゃんが生まれて来た時は、翔介! あなたが世話するのよ……あなたが親になるのよ……あなたが優しいお兄さんちゃんになるのよ……命がけで守るのよ……
この手紙を読んでいるということは、私が死んでいるということだけど……、きっとどこかで見守っているわ。こんな無責任なお母さんでごめんね。でも、死ぬ時まで翔介もお父さんもお腹にいる娘のことも愛している。
あなたはあなたなりに誰かを幸せに出来る人になりなさいね。
~翔介を愛する母 茉弥より~
……」
お母さん……、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん……なさい…………
僕は妹を、茉弥を支えて、守ってあげることができなかった。お母さんが愛して、自分の命に代えて生んだ娘を……、僕は…………助けられなかった……
本当にごめんなさい。
お母さんがお父さんにお願いしたことも知らないで、お父さんを責めたりもした……。
かっこつけて、正義ぶって、助けたと思い込んで……なんっにも知らないくせに…………、僕は、結局周りの人を苦しめてしかいないんだ。見殺しにしかしていないんだ。
結局、僕は……
歯を食いしばって、手紙を強く握って、……泣いて、泣いて、泣いた。
そんな僕を南はそっと後ろから抱きしめてくれた。そして、一言だけ言った。
「いつだって、あなたを必要として、助けられて、愛している人がいるのです。」
まだ連載中ですがよければ評価もお願いします。
ほとんど毎日更新しています。




