メイドさん
「おっはようございます!ご主人さまっ!」
「……へぁ?」
これはどーゆー状況なのか?朝起きたらツインテールのメイドが目の前に……
たぶん僕はそのメイドと1分くらい見つめて合っていた。
あ、これ南やん。
南がメイドを真似してる。え〜と、ちょっと……可愛いすぎん!?
いつもポニーテールだけど、ツインテールも似合い過ぎでしょ!
こうゆう可愛いのを見ていると、なんか体が動かなくなる。たぶん顔も赤くなってしまう。
そんなの見られたら恥ずかしいから何とかごまかそ!
でもそうしようとすると、だいたいいつも冷たい態度みたいになってしまう。
「え!? 南!! どうしたの?」
「そんなにじっと見てそんな反応!?……じゃなくて、えっと……
ご主人さま、今日はご気分いかがですかっ?」
「う〜ん、いきなり南が頭おかしくなっちゃって心配でたまりません」
「へ!?……じゃなくて……あ〜、ご気分良さそうですね! では、今日の朝食は何になさいますか?」
「え〜と、今日はテンションが高いの?」
「ん〜〜と、それはどうでもいいので、質問に答えてください」
「……………ほんとにどうしたの?」
「だからっ!黙って質問に答えなさいっ!」
なんかメイドごっこは続けるらしい。
南が怒って僕を枕で叩くが、それも逆に可愛い。声は高いし、意地を張った少女みたいな感じ。
「じゃあ、スーツとワイシャツと白衣持って来て」
「んん〜もぉ! からかうんだから!」
今日の南は異常と言っていいほどにテンションが高い。いつもはもっと大人しくて、あんな元気いっぱいなキャラじゃない。
……でも南はやっと怖いものから逃れられたのだ。きっと鮫坂研究所にいたときはずっと恐怖に怯えていたのだろう。そして、まだ完全に恐怖が無くなったわけではない。
だから、もしかしたら無理して明るくしているのかもしれない。
ガラガラ……ドドドド、ドタンッ
「あ〜、やったな〜」
南ったら、戸棚の上の段ボールを落として、尻もちついてる。
「あ……ごめん。ネクタイこの辺だと思って」
「……いいんだよ」
ツインテールにメイド服を着て床に倒れている南も、無防備で可愛い。
「あんまり無理するなよ」
そう言って頭を撫でてあげた。
「ちょっと、子供扱いしないでよ!」
顔を赤くして僕の手を振り払った。
なんか、こんなやりとり麻弥(妹)ともしたなぁ〜
「ねぇ! これ何? ラブレター?」
そう言って南が段ボールから散らかった物の中から横長の封筒を拾った。ハートのシールで口を留めてあって、いかにもラブレターみたいな感じだ。でも、こんなの見覚えがない。
「ちょっと貸して」
裏面を見た
〜母より〜
え!? 母? 死んで20年くらい経ってるけど!!
急いでそのちょっと黄色く古びた封筒を開ける。
「拝啓
この手紙を読んでいるということは」
「はい!そこまで!!」
いきなり南が手紙を横取りした。
「ちょっっ! 何すんだ!」
「続きはリビングでお読みくださいませ! コーヒーをお入れしますわ!」
「え! 早く読みたいんだけど!」
「はい、リビングにお行きください」
「も〜、面倒くさいな〜」
「からかった、お・か・え・し! へへ」
ちょっと悔しくなって、南の背中を押して部屋から追い出す。
「何で追い出すのよ〜」
「僕が着替えるのを見たいのか?」
「あ、そーだった。じゃあ、朝食も作っとくからね〜」
「おい! メイドの真似はどうした?」
「もう気が済んだの」
南はつま先でピョンピョンしてツインテールもフリフリさせながら階段を降りていく。そんな楽しそうな姿を眺めていると、自然と顔がにやけてしまう。
楽しいならよかった……
僕は急いで着替えて、一階へ手紙を読みに行く。
焦げ茶色の細長いテーブルに2つ白いお皿に乗った小さなコーヒーカップが置いてある。ゆげが立って落ち着く香りがリビングに漂う。
「いい香り。コーヒーありがと!」
「どう致しまして!
はい、手紙。私も気になるから声に出して読んでよ」
「うん、では気を改めて!
拝啓
この手紙を読んでいるということは……
まだ連載中ですがよければ評価もお願いします。