ver.041
私のケータイの画面がピンク色に光り、その文字が浮かんできた。
ケイのケータイをもう一度覗くと、……画面は真っ暗になっていた。電源ボタンを押しても、二度と起動することは無かった。
ケイの文章は、私と直接話しかけているかのようだった。私が何か思うたびに、それに対しての言葉が綴られていた。驚いたけど、ケイの言う、未来予知――『運命グラフ』があるんだもの、それくらいは出来て、当然だよね。むしろ、納得していた。
私は、ケイのケータイをポケットにしまった。もう二度と起動しない気がしたけど、捨てる気になれなかった。無造作に捨てると、またメールが届いてきて、今度は怒られそうな気がしたから。
――さて、と私は立ち上がる。
どうしようと、悩んだ。ケイが、暇なら協力しろと、言っていたのだけど、あまりに一歩的過ぎるでしょ。その依頼を託した人間はもう死んでいるし、それも文章で送り届けられてきた。何も言い返せないうちに決められちゃって、少し焦っていた。
セセラギ
残り、十八時間
DP SP
300/300 20/20 ◎◎
①閃光 ②ビルドレ ③瞑想ギガドレ ④守る→加速 ⑤ト・リ・パ
⑥万魔の暁
× インフォメーション
× 運命グラフ
残り時間は、もう二十時間を切っている。それを見て私は決心した。ここで悩んでも意味無いし、無駄だ。そのシェルターに向かってみようと思った。ケイ曰く、何かイベントがあるって言ってたし、暇つぶしにはなるだろう。
早速、トイレへ向かった。一応、さっきも確認したけど、どこもおかしなところは無いような気がした。と、そこで、トイレの横についている、ウォシュレットやシャワーなどのボタンに、赤い小さなボタンが一つついているのを発見する。何も文字は書いていない。試しに、押してみた。
ガチャン
と、一度音がして、右側の壁が、一瞬動くと、下へ吸い込まれるかのように消えてしまった。そこには、階段があって、地下へと続いている。凄い、首相になれば、この程度は家を改造しているのか? 電気は通っていないはずなのに、動いたことから、もしかして、この一階は停電になっても動くように、自家発電をしているのかもしれない。だから、さっきケータイに充電をすることが出来たんだ。
その階段に足をかけた瞬間、私は気づいた。
血の足跡が張り付いていることに。それが、下まで続いている。誰か、私よりも前に、この隠し通路を発見して、通った人間が居るんだ。血をそれとも怪我をしていたのか……。あ、見汐の血液かもしれない。返り血を浴びた人間が、この先に潜んでいる可能性がある。
そっと足音を立てないようにしながら、階段を下りる。灯りは無く、途中から完全な暗闇になったので、足元に注意しながら、一段一段を噛みしめるように降りていく。
カンッ
その途中、背後から物音がした。慌てて振り返ったけど、何もない誰もいない。少し戻って、その音の発生源を突き止めたくなったけど、私の空耳かもしれない。無視することにした。
――だけど、私の足音に混じって、上から、あきらかに足音が聞こえてきた。
スタスタスタ、止まる。カツッ――
私が止まったと同時に、一瞬遅れて、その足音は止まった。
「誰か上にいるの?」
と、声を上げる。その瞬間、攻撃されても大丈夫なように、構えた。
三十秒ほど経ったけど、何も音は無い。さっきの足音は、もしかして自分の足音が反射して聞こえてきたの?
ごくっと、唾を呑み込んだ。
私は、前へ向き直ると、一気に階段を駆け下りる。二段、三段飛ばしで、走るような速度で下へ行った。
足音は、やっぱり聞こえる。
だけど、今の私は、スピードを上げ過ぎて止まれない。こんな薄暗い階段の中、私は転ばないようにバランスを取るので精いっぱいだ。
ふと、下の方向から、光が見えた。私は、なんとか速度を押さえると、そのまま前方にあった壁にぶち当たった。……痛い。その横に、扉があった。ここが、シェルターへの入口なんだろうか。
階段を見上げる。
誰も……居ない。ってか見えない。
「おーいッ!」
おーい、と自分の声が、通路の中で反射した。それだけだ。何も、帰ってこない。
私は、扉に腕を掛けた。開いて、その得体の知れない物音から逃げるように、中に入った。




