↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『傲慢』の不死者 〜死ぬことすら許されない絶望の異世界転生〜   作者: たむしゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/73

第五十話 瓦解の残響

グラン・ゼルの外壁に、血の交じった乾いた風が吹き抜ける。

『黒の天秤』の残党は、ルシアンの足元に力なく崩れ落ちたまま、激しい悪寒に震えていた。


「教団の支配が崩れて空発になった中央都市を……一気に固めて俺たちの本拠地にするはずだったんだ……!」


残党は必死に言い訳を吐き捨てるように言葉を繋ぐ。


「それなのに……拠点の設営に入った途端、あのヴァルターが現れて……! 奴は一人で突入してきて、防衛線を構築する暇すら与えずにギルバート様を……ッ!」


ギルバートの野心も、組織を再建しようとした企みも、すべてはヴァルターという絶対的な暴力を前にして露と消えたのだ。


ルシアンの感情の失われた瞳が、はるか遠くの中央都市の方角へと向けられる。


(ギルバートが倒れたか……)


最初から信用などしていなかった。互いに利用し合い、隙があれば切り捨てるはずだった男。

だが、そのギルバートを容赦なく叩き潰し、組織そのものを一夜で瓦解させたヴァルターの存在感だけが、焦土と化した世界の中心に不気味に残り続けている。


「……勝手に潰れてくれたなら、探す手間が省けた」


ルシアンの喉から、掠れた声が零れ落ちる。


使い捨てにされるはずだった自分は生き残り、自分を利用しようとした奴らは自滅した。残ったのは、倒すべき教団の残党と、ヴァルターという脅威だけだ。


ルシアンは残党たちを一顧だにせず、荒涼とした台地へ向かってゆっくりと歩き出した。


『……お兄ちゃん……どこへ……?』


背後から、試作型の少女がその小さな足音を忍ばせてついてくる。

ルシアンの自傷痕と同じように引き攣った傷を抱え、感情の死に絶えた顔で、ただ影のように寄り添う欠陥品。


「言うなと言ったはずだ」


ルシアンは振り返ることなく、引き裂かれた右腕の傷口を軽く押し潰した。


——バチッ……


肉の結合音が小さく響き、過剰修復の熱が身体の奥でかすかに脈打つ。

痛みが脳を刺し、己がまだ死んでいないことを自覚させる。


「どこへも行かない。ただ、目の前に現れる不快なものを、すべて潰すだけだ」


黒い空の下、潰えたレジスタンスの残骸と、消えぬ教団の影を追うように。

自傷と再生の狂気を身に纏った宿主と、行くあてのない少女のふたりは、荒野の闇の中へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。