第四十七話 血肉の応酬
床を粉々に砕き、弾丸と化したルシアンが大罪の実験者の懐へと飛び込む。
自傷の激痛によって限界を超えた【傲慢】の圧線が、男の纏う紫黒色の瘴気を強引に切り裂いた。
「なにっ……!?」
男が驚愕に目を見開く間もなく、ルシアンは折れ曲がったままの右腕を振り抜いた。
突き出された拳は骨が外側に飛び出している凶器そのものであり、それが男の腹部を容赦なくえぐる。
——グシャリッ!!
「ぐあぁぁっ……!?」
鮮血が弾け、男の体が要塞の壁へと盛大に叩きつけられた。
だが、大罪の宿主もただでは死なない。男の全身から噴き出した瘴気が触手のようにうねり、ルシアンの肩と脇腹を鋭く貫く。
肉が削げ、内臓の砕ける音が響く。
常人であれば即死している致命傷。しかし、ルシアンの体内で暴走する過剰修復の血流は、一瞬の猶予もなく傷口を黒々とした肉の芽で縫い合わせようと暴れ狂う。
(痛い……足りない……もっとだ……!)
激痛が脳を焼き、思考を強制的に「殺戮の機械」へと変えていく。
ルシアンは自ら貫かれた脇腹の傷口に指を突っ込み、邪魔な肉塊を自らの手で引きちぎり捨てた。
「ひっ……狂ってやがる……こいつ、正気じゃねえ……っ!」
男は恐怖に顔を引きつらせ、教団の術式器具を暴走させて周囲の空間ごとルシアンを押し潰そうとする。
紫黒の閃光が地下室を埋め尽くし、爆風がすべてを灰燼に帰そうと吹き荒れた。
その圧倒的な破壊の奔流の中心で、ルシアンは冷酷な眼差しを男に向けたまま、不気味に口元を歪めた。
教団の拡張派が企てた実験も、大罪の実験者どもの身勝手な暴走も、すべてまとめてここで叩き潰す。
痛みを燃料に変えた怪物の暴走は、まだ止まる気配を見せなかった——。




