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『傲慢』の不死者 〜死ぬことすら許されない絶望の異世界転生〜   作者: たむしゅう


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第三十八話 聖域の深淵

教団の聖堂地下、その最深部へと続く大理石の階段。

かつては神聖なる祈りの場であったはずのその場所は、今や絶え間なく流れ落ちる血の濁流と、転がる教団兵の残骸で埋め尽くされていた。


「……ハッ、ぐっ……!」


ルシアンが階段を踏みしめるたび、グチャリと不気味な音が響く。

先ほどの防衛戦で右足の脛の骨が縦に裂けていた。だが、止まるという選択肢は脳裏のどこにも存在しない。ルシアンは血にまみれた手で己の太ももを強引に握り潰し、その痛覚と破壊の衝動をエネルギーへと変換して強引に肉体を前へと押し出す。


(痛い……もっとだ。もっと脳を焼き切れ……)


温もりなどという毒を完全に排除した果てにあるのは、純度100%の破壊衝動。

傷つけ、壊し、すべてを血の海に沈めることだけが、今のルシアンを繋ぎ止める唯一の現実だった。


「防衛線を突破されただと……!? 馬鹿な、たった一人のガキに第2防衛陣地が壊滅しただと!?」


上層の通路から、焦燥と恐怖に満ちた教団幹部たちの怒号が響く。

現れたのは、黄金の刺繍が入った純白の聖衣を纏った異端審問官たちと、重装魔導騎士の群れだった。彼らが手にする十字型の聖杖からは、異端を焼き尽くす高密度の魔導光が放たれている。


「いたぞ! あれが……報告にあった『大罪の実験体』……!」

「化け物め、これ以上の侵入は許さん! 聖なる光でその肉片まで残さず消し炭にしろ!!」


一斉に放たれる無数の魔導光線が、通路の空間を埋め尽くすようにルシアンへと殺到した。


回避の動作など一切ない。

ルシアンはむしろ自らその光線の中心へと身を躍らせ、我が至高なる存在の修復概念を限界を超えて引き絞る。


ドォンッ!!


凄まじい爆風と熱量がルシアンの体を直撃し、左半身の皮膚と筋肉が一瞬で蒸発して剥き出しの骨が露わになる。常人であれば即死、あるいは意識を失うほどの致命傷。


しかし、ルシアンの濁った瞳には昏い狂気の光が宿ったままだった。


「……遅い」


剥き出しになった左腕の骨を、自らの歯で噛み砕き、過剰な血流と破壊エネルギーを爆発させる。


ガァンッ!!


「なっ……!?」


爆発的な反動を利用して、ルシアンは一瞬で最前列の異端審問官の懐へと跳び込んだ。

手刀と化した硬質な骨が審問官の胸骨を容易く貫き、心臓を鷲掴みにして引き抜く。鮮血が純白の聖衣を瞬く間に真っ赤に染め上げた。


「ひっ……化け物、怪物が……!」

「退がるな! 囲んで封印陣を起動しろ!!」


怯える騎士たちが剣を突き立てるが、ルシアンは止まらない。

自らの腕を折り、足を砕き、その度に体内で暴走する過剰修復のエネルギーを周囲へと撒き散らしながら、ただひたすらに「殺戮の機械」として敵陣を蹂躙していく。


痛覚の奔流が脳を焼き尽くす。

その苦痛の中で、ルシアンの口元には自嘲とも狂気ともつかない冷酷な笑みが張り付いていた。


(そうだ……これでいい。僕をこんな化け物に仕立て上げた教団も、僕を利用しようとする『黒の天秤』も……全員、この血の海に沈めてやる)


誰の助けも要らない。誰の絆も信じない。

完全なる孤高の怪物は、血塗られた聖域の中枢へ向けて、さらなる殺戮の階段を駆け上がっていく。

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