第3話 新作パフェと『これ、当たり』
土曜日。
午後。
仕事中。
河合菜々子、33歳。
売り場を歩く。
いつもの。
スイーツコーナー。
その前を。
通り過ぎ――
「…………」
止まる。
戻る。
一歩。
二歩。
「出た」
見慣れない。
パッケージ。
新商品。
季節のフルーツパフェ。
透明なカップ。
上には。
クリーム。
色とりどりの。
フルーツ。
その下には。
スポンジ。
ソース。
さらに。
クリーム。
「…………」
菜々子。
じーっ。
新商品。
この三文字には。
弱い。
スーパーで働いていると。
新商品には。
よく出会う。
だから。
ついつい。
チェックしてしまう。
「今週はこれかぁ」
手には。
取らない。
仕事中。
今は。
買わない。
でも。
もう。
決まった。
「帰りまで残っててね」
仕事へ。
戻る。
◇
午後八時。
「お疲れさまでしたー!」
仕事終了。
そして。
明日は。
休み。
従業員用出入口から――
出る前に。
行くところがある。
スイーツコーナー。
「…………」
ある。
まだ。
ある。
「よし」
季節のフルーツパフェ。
一つ。
カゴへ。
そして。
酒売り場。
今日は。
あまり。
悩まない。
「これ」
缶の。
ハイボール。
甘いパフェ。
クリーム。
フルーツ。
そこへ。
シュワッと。
ハイボール。
「いいんじゃない?」
高いお酒じゃなくていい。
専門店のスイーツじゃなくてもいい。
気になったものを。
好きに楽しむ。
それが。
菜々子の。
ご褒美。
会計。
終了。
帰宅。
「ただいまー」
靴。
脱ぐ。
バッグ。
置く。
パフェ。
冷蔵庫。
缶ハイボールも。
冷蔵庫。
「…………」
冷やして。
待ってて。
菜々子は。
部屋の隅へ。
いつもの。
エクササイズマット。
――バサッ。
仕事から帰ってきた服。
そのまま。
どうせ。
汗をかく。
着替えたら。
洗濯物が。
一つ増える。
それは。
もったいない。
首に。
タオル。
そして。
もう一枚。
頭へ。
キュッ。
タオルバンダナ。
鏡。
見る。
「よし」
スマホ。
推しのプレイリスト。
タップ。
――♪
イントロ。
口元。
上がる。
「エクササイズ、スイッチオン!」
ステップ。
ステップ。
腕。
上。
横。
身体を。
ひねる。
「いち、にっ!」
――♪
今日も。
動く。
腕。
伸ばす。
脚。
上げる。
「ふっ!」
頭の中には。
さっき買った。
新作パフェ。
「…………」
どんな味。
するんだろ。
――♪
ステップ。
ステップ。
「いち、にっ!」
新商品は。
これが。
楽しい。
初めて。
食べる。
開けるまで。
分からない。
食べるまで。
分からない。
「ふふっ」
だから。
試したくなる。
一曲。
終了。
額。
汗。
首のタオル。
拭く。
「ふぅー!」
でも。
今日は。
もう一曲。
――♪
「よしっ!」
動く。
踊る。
推しを見る。
聴く。
身体を動かす。
そして。
美味しく食べる。
全部。
楽しい。
――♪
曲。
終了。
「はぁーっ!」
両手。
膝。
「今日も頑張った!」
タオルバンダナ。
外す。
首のタオル。
外す。
そのまま。
お風呂へ。
シャワー。
汗を流す。
髪を乾かす。
お気に入りの。
部屋着。
形は。
シンプル。
今日も。
色だけ。
少し可愛い。
「うん」
そして。
夕飯。
ちゃんと。
食べる。
普通に。
食べる。
でも。
お腹いっぱいには。
しない。
なぜなら。
今日も。
このあとが。
ある。
「ごちそうさま」
片付け。
洗い物。
終了。
菜々子は。
時計を見る。
「…………さて」
ここから。
私の幸せは。
さらに。
高まる。
冷蔵庫。
オープン。
「お待たせ」
新作パフェ。
登場。
そして。
缶ハイボール。
登場。
テーブルへ。
「今日は……」
グラス。
一瞬。
見る。
「…………いいや」
缶。
そのまま。
――プシュッ!
「これこれ」
まずは。
ハイボール。
ゴクッ。
「っはぁ!」
冷たい。
炭酸。
ウイスキーの香り。
仕事。
エクササイズ。
お風呂。
夕飯。
全部。
終わった。
「いいねぇ」
そして。
本日の主役。
新作。
季節のフルーツパフェ。
蓋。
オープン。
「おおー」
上には。
クリーム。
苺。
黄桃。
キウイ。
色。
鮮やか。
「可愛い」
まず。
上から。
スプーン。
すっ。
クリーム。
フルーツ。
一緒に。
「いただきます」
パクッ。
「…………!」
甘い。
クリーム。
そこへ。
フルーツの。
酸味。
そして。
「ん~~~~っ!」
両腕。
ぐーーーーっと。
上へ。
脚も。
ぴーーーーん。
身体いっぱい。
伸びる。
「しあわせぇ……!」
戻る。
「これ、当たり」
もう一口。
今度は。
少し深く。
スプーン。
入れる。
スポンジ。
ソース。
クリーム。
一緒に。
パクッ。
「ん~~っ!」
また。
伸びる。
上だけじゃない。
下まで。
ちゃんと。
美味しい。
「なるほど」
そして。
ハイボール。
ゴクッ。
「っはぁ!」
甘い。
シュワッ。
すっきり。
そして。
また。
パフェ。
「…………」
菜々子。
笑う。
「これいいじゃん」
パクッ。
ゴクッ。
甘い。
シュワッ。
パクッ。
ゴクッ。
専門店の。
ケーキも好き。
ちょっといい。
お酒も好き。
でも。
仕事帰りに。
自分の働いているスーパーで見つけた。
新作パフェ。
それに。
缶ハイボール。
これも。
ちゃんと。
幸せ。
「こういうのでいいんだよね」
いや。
違う。
「こういうのが、いいんだよね」
パクッ。
「ん~~~~っ!」
両腕。
ぐーーーーっ。
脚。
ぴーーーーん。
そして。
ハイボール。
ゴクッ。
「っはぁ!」
残り。
少し。
新商品。
結果。
「合格」
誰に。
頼まれたわけでもない。
菜々子の。
勝手な。
新商品チェック。
でも。
来週。
また新しいものが。
入ってきたら。
たぶん。
見る。
気になったら。
たぶん。
買う。
だって。
楽しいから。
最後。
スプーン。
底まで。
入れる。
クリーム。
スポンジ。
ソース。
フルーツ。
全部。
一緒に。
パクッ。
「ん~~~~っ!」
本日最大。
両腕。
ぐーーーーっ。
脚。
ぴーーーーん。
「しあわせぇ……!」
缶ハイボール。
最後。
ゴクッ。
「はぁー……」
満足。
高級じゃなくても。
特別じゃなくても。
自分が。
美味しくて。
楽しかったら。
それでいい。
菜々子は。
空になったパフェの容器を見る。
笑う。
「甘いは幸せ」
河合菜々子。
33歳。
新商品チェック。
今週も。
大成功。




