初めての依頼
ギルドで「付与魔術で火付け玉を10個作ろう!」という依頼を受けて見ることにした。ランズさんいわく初心者にうってつけの依頼らしい。
作業する場所はあるかを聞くと、ギルドの2階へと案内してもらえた。
ギルド内には小さな作業スペースがあり、何人かプレイヤーの姿が見えていた。どうやら慣れない作業に苦戦している人が多いようでときどき小さな爆発が起こっている。
「そちらの棚に付与魔術のスタートブックがありますので見ながら進めてください」
指されているほうを見るとさまざまな職業のためのスタートブックが置いてあった。戸棚の端から探して行こう。
「付与魔術は…っと、これかな?」
15ページほどのかなり薄い冊子が置かれており、表紙には「ギルドによく来る依頼5選!!作り方ガイド付き」と書かれていた。
その本をもって用意された席にいってみると、火付け玉の材料と思われるものが箱にまとめて入っていた。
「よし!!初めてみますか!!」
異世界っぽい道具や材料にワクワクが止まらない…!!
材料を一通り確認し、本を開く。
〜初めての火付け玉〜
作り方
・魔法陣用紙を用意し、図1と同じ魔法陣を書く。書いている間は常に一定の魔力をペン先に流し続ける。
※このとき流す魔力の量によって火力が変わります。
・書き終わった魔法陣と木の玉を付与台に乗せて「付与台に」魔力を流します。
誤って魔法陣に魔力を流してしまった場合はすぐに職員にお声がけください。
・完成した火付け玉は魔力阻害袋に入れ封を閉じてください。
初めて聞く単語もいくつかあるけれど、とりあえずはなんとかなりそうかな?
書かれている図もそこまで複雑ではないし、1時間あれば終わりそう。
箱のなかから紙を一枚取り出しペン先をインクに浸す。
簡単な図とはいえ、初めての製作だからかペンを持つ手に力が入る。
思いの外難しいな、まん丸な円を書くつもりが歪んでしまった…。
魔力を流すことに集中してしまうと、どうしても書く方がおろそかになってしまう。
「あ…と、ちょっ…と……よし!!できた!!」
若干いびつなような気もするけれど、許容範囲かな?
次に書いた魔法陣と木の玉を付与台に置く。木の玉はクリスマスに飾るモニュメントのようにハートや肉球などさまざまな形をしていた。
気持ちを整えてからそっと付与台に魔力を流してみると魔法陣が光り、ふわりと紙から離れて木の玉へくっついていった。
幻想的な様子に見入ってしまう。
「きれい……」
光が収まるのを待って取り出してみると、紙は白紙になり木の玉には魔法陣が刻まれている。
…これをあと9個。今日中に終わるかな?ちらっと時計を見ると始めてから30分もたっていた。
集中してしまうと時間はあっという間だ
それから、ひたすら書いて付与してを繰り返し、最後の方には安定して魔力を込められるようになっていた。
「やっっと終わったー!!ってもうこんな時間か…」
ピロリンッ
【依頼: 付与魔術で火付け玉を10個作ろう!を達成可能です。受付で報告を行なってください】
始めたころは12時だったというのに外はもう日が傾き始めていた。
報告だけして、一度ログアウトしたほうがよさそうかな?
部屋を出て受付のカウンターへと向かうと、お出かけ姿のティアがいた。
「あれ?終わったの?お夕飯に行こうと思ってたんだけど…、いま他の人いないから私が確認してあげる」
「ありがとう、助かるよ」
「えぇっと、受けたのは火付け玉ね?10個で200ロルよ。登録料はどうする?」
「うーん、少しで申し訳ないんだけれど10%でもいいかな?」
「始めたてはいろいろとお金がかかるからそのほうがいいわね」
ティアは手際よく検品を行いカードへと報酬を入れてくれた。
【依頼完了。依頼報酬:180ロル。初回完了報酬:500ロル】
どうやら、システム報酬も貰えたようだ。よかった、180ロルだけではあまりに心許ない。
「じゃあ、もう行くけどなにか聞きたいことはある?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」
そういうとティアは、またねとギルドから去っていった。
私も安全な場所に移動してログアウトしよう。そう思い建物から一歩足を踏み出すと…
ドォォォオオンッッ
数時間前に聞いたような大きな音の先にあのドラゴンの姿があった。
……またか。




