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世界1位への熟練度(レベリング) 〜家族を守るために「剣術」を極めた俺が、世界を買い叩くまでの物語〜  作者: しろくま


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2/12

一振りの価値と、小さなお土産

【第2話:前書き】


第2話をご覧いただきありがとうございます。


手に入れた謎のスキル『極・剣術』。

一見、ありふれたハズレ系統に見えるこの力が、

どれほど常識外れなものなのか。

そして、湊が命がけで戦う理由である「家族」との日常を描きます。


世界ランキングという高すぎる壁。

そこにはまだ名前すら載らない湊の、静かな逆襲が始まります。


 深夜の新宿駅。

 ダンジョンから這い上がってきた探索者たちの熱気と、終電を急ぐサラリーマンの疲労が混ざり合う雑踏の中、湊は一人、スマホの画面を食い入るように見つめていた。


「……ない。やっぱり、どこにも載ってない」


 探索者専用の攻略データベース。そこには世界中で確認された数万件のスキルが網羅されている。

『剣術』『剛剣』『魔法剣』……剣に関するスキルは星の数ほどある。だが、そのどれもに『きわみ』という冠文字は付いていなかった。


(スキルの名前が書き換わるなんて話、聞いたことがない。それに、この『熟練度』っていう表記もだ……)


 通常、スキルの威力はレベルや魔力値に依存する。あるいは使い込むことで「ランク」が上がることはあっても、0.01%刻みで肉体が最適化されるようなシステムは存在しない。


 湊は画面を切り替え、世界探索者ランキングのページを開いた。

 このページには、世界で上位50万位までに入った「本物」の名前だけが掲載される。50万1位以下は一括りで『圏外』。人類の9割以上がその圏外に沈んでいる。


「世界ランク、測定不能……か」


 今の湊の日本ランクは32万位台。日本がダンジョン先進国であることを踏まえても、世界規模で見れば50万位の末席にすら遠く及ばない。

 アメリカのトップ、世界1位のアイアン・ジャスティスは81層。

 湊はまだ1層。天と地どころではない距離がある。


「……世界で俺だけ、なのか?」


 スキルの異常性と、世界の広さ。高鳴る鼓動を抑え、湊は駅ビルの地下へと急いだ。

 閉店間際のタイムセール。ショーケースの中で、一切れ八百円もする『銀だらの西京焼き』が半額のシールを貼られて残っていた。


「これ、三つください」


 店員に千二百円を支払う。今日稼いだ二千五百円の、ほぼ半分が消えた。

 スライム一匹を倒すのに命を削る今の湊にとって、これは単なる惣菜ではない。家族の笑顔を買うための、最も価値のある投資だった。


 駅から徒歩十五分。築四十年の木造アパート『若葉荘』。

 ギシギシと鳴る階段を上がり、二〇一号室の扉を開ける。


「ただいま」

「あ、お兄ちゃん! おかえり!」


 パタパタと足音が響き、小学四年生の妹、結衣が飛び出してきた。その奥の古い座卓では、六年生の蓮がドリルを広げたまま顔を上げる。


「遅かったね。今日もダンジョン?」

「ああ。ほら、今日はお土産があるぞ。明日の朝ごはんにみんなで食べよう」


 袋の中身を見た二人の目が、宝石でも見たかのように輝いた。

 両親を亡くしてから、湊の作る食事はいつも質素だった。もやし炒め、納豆、安売りの卵。そんな食卓に並ぶデパートの西京焼きは、彼らにとっては魔法の食べ物に近い。


「うわぁ、西京焼きだ! お兄ちゃん、今日はいっぱい稼げたの?」

「……まあな。ちょっといい『種』を見つけたんだ」


 湊は嘘はつかなかった。

 二人の笑顔を見ていると、一層で浴びせられた「ドリーマー」という嘲笑も、ゴミ拾いの屈辱も、すべてがどうでもよくなった。

 この笑顔を、一生守り抜く。そのために、俺は誰よりも強くなる。


 二人が寝静まった深夜。

 湊は六畳一間の居間で、静かに剣を構えた。


(一振りだ。一振りの精度を、極限まで高めるイメージで……)


 ヒュッ、と空気を裂く。

 ただの素振りではない。脳内のシステムが、湊の肘の角度、手首の返し、重心の移動をミリ単位で「正解」へと誘導する。


【熟練度が0.01%上昇しました。現在の熟練度:1.25%】


「……っ!」


 確かな手応えがあった。

 たった一振りの素振りが、これまで千回繰り返してきた訓練よりも深く、肉体に刻み込まれた感覚。


(一回振れば、一回分、確実に強くなれる。……なんて効率的タイパがいいんだ)


 かつて掲示板で「効率が悪すぎる」と叩かれた男が、今、人類史上最も効率的な成長手段を手に入れていた。

 

 湊は使い古したショートソードを見つめる。


【武器:粗悪なショートソード(Rank:F / 耐久度 3/20)】


 もう、この剣では保たない。

 明日、俺は五層へ行く。

 

 中堅パーティーたちが「通過点」として、あるいは「小銭稼ぎ」として見下す場所。

 そこには、スライムの十倍の価値がある魔石を持つ『ゴブリン』が群れている。


「待ってろよ、蓮、結衣。お兄ちゃんが、必ず世界一になってやるからな」


 湊は静かにウィンドウを閉じた。

 暗闇の中で、彼の瞳だけが黄金色の野心に燃えていた。


【第2話:後書き】


第2話をお読みいただきありがとうございました。


家族との団らん、そしてスキルの異常性に気づく湊。

世界ランキング「50万位以内」というハードルの高さが、

今の彼がいかに底辺であるかを物語っています。


【第2話終了時点:ステータス】

名前:佐藤 湊(日本ランク:321,438位 / 世界ランク:圏外)

レベル:3(経験値:42 / 次まで 8exp)

職業:未設定

スキル:【極・剣術】熟練度:1.25%

武器:粗悪なショートソード(Rank:F / 攻撃力+3 / 耐久度 3/20)

防具:汎用ポリエステル防護服(Rank:F / 防御力+2)

資産:800円(西京焼き購入後)


次回、第3話「5層への挑戦・ゴブリンの咆哮」。

ついにソロでの5層攻略が始まります。

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