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第五章③ マクシミリアン隊

 市場の石畳には倒れた海賊たちの首が無造作に転がり、血がぽたりと滴っていた。リラは足元を見下ろし、短く息をつく。

「……これ以上は、闇討ちしてもしょうがないね」

 スザンヌが隣で頷く。目の前では、隊員たちが剣を抜き、暗がりに紛れて一撃で海賊たちの首を刎ねていく。逃げ惑う者もいるが、確実に標的は仕留められていた。

「油断すると、市民を巻き込む危険もある」

 ダヴィットが低く声を落とし、仲間の位置を確認しながら慎重に進む。

 リゼーヌは背後の路地を睨み、逃げ場を探る海賊を素早く追い詰め、剣先を迷わず振り下ろす。闇に紛れたその一撃で、またひとりが静かに倒れる。

「もう少し…旧市街の奥までなら、まだ隠れられます」

 ロザリーが小声で告げる。隊員たちの連携は完璧に近く、海賊たちは次第に圧倒され、抵抗する間もなく首を刎ねられていった。

 リラは短剣を拭いながら、遠く港での爆発の光を見上げる。薄明かりに赤く反射する血の色が、広場を不気味に染めていた。

「本当に、こんな状況になるなんて」

 リラの口元に苦笑が浮かぶ。冷徹な作戦の中で、戦慄と覚悟が交錯する。

 マクシム隊は止まらない。市場や広場を縦横無尽に駆け抜け、剣で闇討ちを繰り返しながら、旧市街の奥へと進む。血に染まった石畳を踏み越え、息を潜め、次の標的を狙うその姿には、冷酷さと確かな覚悟が宿っていた。


 宿屋の二階、窓際でマクシムとシャルルは広がる旧市街を見下ろしていた。隊員たちの剣が反射する光や跳ねる影がちらつく。二人の背後でカルロータが手をひらりと振りながら声をあげる。

「市民のほとんどは街の外へ避難させたよ。これで巻き込む心配はほぼない」

 ディッキーも頷き、肩で息をつく。

「これなら皆さんも少し安心して加勢できるね!」

 マクシムは軽く肩を回し、窓の外を見据える。

「よし、そろそろ僕たちも出ましょう。ここから見守るだけでは事は終わりません」

 シャルルも短く頷き、肩にかけた袋を調整する。

「計画通りに動けば、私たちの出番も近い」

 その時、旧市街での戦闘を終えた第一班の隊員たちが血に染まった石畳を通って宿屋の前に姿を現す。

 リラ、ロザリー、スザンヌ、リゼーヌ、ダヴィット。剣を握り、荒い息をつきながらも表情は凛としている。続いて、港での爆破作戦を終えた第二班も港の防波堤を抜けて合流する。

 グウェナエル、ジョルジュ、ペネロペ、サミュエル。火薬の煙の匂いを衣服に残しつつ、港を制圧した余韻を噛みしめるように歩いてきた。全員が宿屋の前に集まるとマクシムは短く手を掲げる。

「よし、これで全員揃いました。残る海賊を一掃します。僕たちの役目はここからです」

 シャルルも小声で仲間に告げる。

「一糸乱れぬ連携で進めば、旧市街の制圧は可能です。無駄な被害は出さず、迅速に」

 カルロータとディッキーは、それぞれ宿屋の入口と外周で最後の確認を行い、隊員たちの背中を見守る。息を整え、握った剣や短銃に力を込め、マクシム隊はサン・マロの中心地へと踏み出した。血に染まった夜明け前の石畳に、静かな緊張が走る。


 サン・マロはまだ薄暗い影に包まれていた。煙と火薬の匂いが漂い、前夜の爆破と闇討ちの痕跡が街を覆っている。石畳に残る海賊の血痕を踏みしめ、マクシムは短く息を整えた。

「全員、準備。旧市街の中心に突入する」

 マクシムの号令に、隊員たちは剣を握りしめ、肩の力を抜く。シャルルは静かに周囲を見渡し、仲間に指示を出す。リラ、ロザリー、スザンヌ、リゼーヌ、ダヴィットは再び市民の姿を装いながら慎重に前進。表向きは市場の喧騒のように見せかけつつ、闇から海賊を斬り伏せていく。リラの鋭い目が次に仕留めるべき標的を正確に捉える。

「こっちは任せろ!」

 ダヴィットの声が暗がりの中で低く響く。剣が刃に触れる音、重心を変える足音、息遣い。すべてが呼吸を合わせた舞踏のように滑らかに連動していく。

 一方、港封鎖を担当したグウェナエル、ジョルジュ、ペネロペ、サミュエルも動き出す。火薬で破壊された係留索の間から逃げ遅れた海賊が走る。グウェナエルが素早く飛び込み、剣先で一撃を与える。ジョルジュは反射的に剣を振り、跳ね返る敵を地面に沈める。

「港に逃げても無駄だぞ!」

 ジョルジュの声に続き、サミュエルも隊員を守るように斬り伏せる。逃げ場を失った海賊は互いに混乱しながら後退するしかない。

 旧市街の広場でリラが立ち止まり、深呼吸する。死体の山を前に一瞬の静寂が訪れる。その背後からシャルルが素早く計算した動線で新たな標的を指さす。

「次はこちら。全員、隙を見逃すな!」

 マクシムは中心広場に足を踏み入れ、剣を握る手に力を込める。隊員たちもそれに続き、旧市街の迷路のような路地から一斉に突入。海賊たちは数で圧倒され、抵抗する間もなく次々と倒されていく。

 カルロータとディッキーが避難を呼びかけた市民は安全な場所に移動済み。隊員たちは民間人の目を意識しながら、冷静に容赦なく敵を排除する。火薬の匂いと金属の音が入り混じり、街全体が戦場のように揺れる中、マクシム隊の連携は完璧だった。敵は混乱し、反撃の体勢を整える前に、隊員たちの剣が次々と命中する。

「これで終わりですか?」

 マクシムの問いにシャルルが小さく頷く。

「もう海賊の反撃は望めません。市街の中心は制圧済みです」

 隊員たちは一息つき、石畳に散らばる敵の姿を確認する。夜明け前の街に、静かな勝利の気配が漂った。マクシムは胸の奥で微かに緊張を解き、仲間たちの無事を確認する。

 総攻撃が終わり、旧市街の広場に沈黙が戻った。石畳の上には倒れた海賊の影とまだかすかに漂う火薬の匂い。夜明け前の薄明かりが戦いの跡を淡く照らしている。

 マクシムは深く息をつき、剣の手をゆっくり下ろした。体中の力が抜け、胸に残った緊張が少しずつほぐれる。隣でシャルルも額の汗を拭い、短く「ふう……」と息を漏らす。

 リラは石畳に腰を下ろし、足元の海賊たちを見やりながら小さく息をつく。

「もう、十分すぎるね。これで最後にしていい」

 仲間たちもそれぞれ剣を置き、静かに呼吸を整える。

 ダヴィットは肩で息をしながら周囲を見渡し、無事を確認する。

 グウェナエルは港を見つめて唇を引き結んだ。

 ジョルジュは刀身に付着した血を指でなぞって呟く。

「これで海賊もしばらく寄り付かないかな」

 ペネロペはマクシムを見上げて軽く頷く。

「計画通り。でも……これ、気を抜いたら本当に危ないわ」

 サミュエルはハンカチで剣を拭いながら隊員たちを振り返る。

「全員無事か? 傷人は?」

 マクシムは仲間たちの顔を一人ずつ見渡し、短く言った。

「よし、これで全隊集合。街の中心は制圧済み。後は残敵の掃討と、民間人の安全確保です」

 隊員たちは剣を握り直し、互いに位置を確認し合う。火薬と血の匂いが混ざる空気の中、疲労が体に重くのしかかるが、それぞれの目には戦い抜いた自信と覚悟が宿っていた。

 マクシムは深く息を吸い、拳を握り直す。

「次の指示まで、警戒を緩めてはいけません。戦いは終わったわけじゃありません」

 旧市街の迷路のような路地、焼け焦げた船、倒れた敵、すべてが今日の戦いの証。

 隊員たちはそれらを片付けたり、生き残りがいないか細かく捜索していた。

 マクシム隊の剣の鋭さと奇策によって街中は完全に制圧されつつある。

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