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第二章⑥ グウェナエル

 ブレスト城の中庭は冬の朝の淡い光に包まれていた。

 石畳には霜がわずかに白く光り、冷たく澄んだ空気が胸の奥まで届く。

 隊員たちは整列し、軍旗や部隊旗が微かに風に揺れる中、アルフォンスが静かに前に出た。

「式典を始める」

 アルフォンスの声は凛とした響きを帯び、凍てつく空気の中でも温かく胸に届いた。

「本日、ブレスト城にて、海賊討伐戦において功績を挙げた者を称えます」

 隊員たちは背筋を伸ばし、静かに耳を傾けた。

「シャルル・ド・ヴィトン少尉は、海賊戦において火薬奇襲作戦と海賊扮装による撹乱作戦の二つを考案・進行させ、所属部隊に大きく貢献しました。また、ブレスト鉄壁の盾作戦を考案し、現場での指揮も的確に行い、自身も白兵戦に赴き海賊討伐に貢献し、作戦を無事に成功させたことにより、ルソー准将の推薦で中尉に昇進することとなりました」

 厳かに凛とした声ではっきり告げる。

「ここに、シャルル・ド・ヴィトン少尉に中尉の階級を授与する」

 アルフォンスが肩章を手に取り、シャルルに近づく。マクシムも隣に立ち、丁寧にシャルルの肩に中尉の肩章を装着した。光を受け、金糸がわずかに輝く。

 ルソーがシャルルの前に進み出て階級章を差し出す。

「ヴィトン中尉、これを胸に飾り、今後も隊の力として活躍されよ」

 シャルルは徽章を受け取り、わずかに微笑む。

「これからも仲間と共に、全力で任務に臨みます」

 隊員たちは拍手を送り、式典の空気は温かさと誇りに満ちていた。

 グウェナエルはやや肩をすくめ、手を組んで立つ。これまで任務服しか着たことのない彼には、今日のために整えられた正式な軍服が輝いていた。まず功績の紹介が行われる。

「グウェナエル・ブランシェ殿は、これまでの戦闘において卓越した勇敢さを示し、部隊の指揮・協力に多大な貢献を果たしました。特に先日の海賊戦において、仲間との連携により奇襲作戦を成功させ、またその後の戦闘において海軍と陸軍の指揮を一時的に執り、部隊の勝利に寄与しました」

 グウェナエル・ブランシェの名が読み上げられ、海賊戦での勇敢さ、部隊への献身、仲間との協力に至るまで簡潔にその価値が伝えられる。静かに聞き入る隊員たちの顔に敬意と誇りの光が差す。

 次に階級授与。アルフォンスの声が中庭の石畳に反響する。

「ここに、グウェナエル・ブランシェ殿に中尉の階級を授与する」

 グウェナエルは一瞬言葉を失い、目を大きく見開く。そして彼は少し俯き、胸の奥に込み上げる緊張と戸惑いを押さえ込んだ。初めて公式に評価された瞬間だった。

 アルフォンスとマクシムが並び、グウェナエルの肩に中尉の肩章を丁寧に装着する。金糸の輝きが朝の光に反射し、凛とした格式を漂わせた。

 さらに、イザベルが徽章の箱を開き、中尉の階級章を差し出す。

「ブランシェ殿、これを胸に飾り、正式な隊の一員として戦場に臨むがよい」

 グウェナエルはゆっくり手を伸ばし、徽章を受け取る。わずかに震える手と、胸を打つ高揚感。隊員たちの目線が温かく彼を支える。左胸にはイザベル自ら今回の戦功を示す勲章を留める。小さな金属が光を受け、まるで冬の朝の氷の結晶のようにきらめく。

「グウェナエル・ブランシェ、中尉として正式にマクシミリアン隊の一員となることをここに認める」

 マクシムの言葉に続き、全員が拍手を送る。グウェナエルは驚きと戸惑いの中で、肩の重みと胸の徽章の冷たさを確かめた。だが、その目は次第に強さを帯びていく。

「……ありがとうございます」

 グウェナエルは胸の徽章を指先でそっと触れ、仲間たちに向かって視線を巡らせる。

「今後は正式に隊の一員として、より一層、軍の力になれるよう尽力します」

 隊員たちは静かに拍手を続け、微笑みを交わす。ソフィーは初めて公に認められたグウェナエルの誇らしげな姿を見て、胸の奥に小さな温かさが広がるのを感じた。


 式を終えた瞬間、冬の空気に細かな光が舞い上がった。

 ダイヤモンドダストが静かに空中を漂う。肩章と胸の徽章に触れた光がわずかに揺れる。

 グウェナエルの周りで無数の粒が瞬く。風に乗って舞い、また落ちていく。中庭には、かすかな光だけが満ちていた。彼は目を細める。そして、胸に残る重みを確かめるように息を吐いた。

「メリッサ、お前も見ているか?」

 白い吐息が空に溶け、光の粒の中に紛れる。

 時間だけが、静かに流れていく。

 彼は何も言わず、ただ前を見た。

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