デジタル区
ARという単語が登場しますが作中に登場するこの単語はフリガナやルビが振られていない限り基本的に、
エーアールとそのまま読みます。
時間は少し前に遡り朝9時頃、葵は茜との待ち合わせ場所に向かっていた。
「このままだとちょっと遅刻しちゃいそうだよ〜!」
焦りながらだが。
なにせ葵が起きたのは今から5分前、朝の用意もそこそこに用意しておいた服に慌てて着替えて転がり出るように家から全力ダッシュで出発したのだ。
「今は……57分!?急げ〜〜〜〜」
葵の家と約束の場所は15分程度かかる距離だ。
たかが15分されど15分である。
この様に起きるのが遅れた状態では走るのが速い葵とは言え時間に間に合うか分からない。
そして5分後葵の姿は待ち合わせ場所のデジタル区入口にあった。
「はぁ……はぁ……遅れて……ごめんね……」
葵は弾丸の様な速度で到着し、そこで待っていた人物に息も絶え絶えに謝罪をしていた。
「はぁ……まぁ予想してたよりは早かったからいいけどね。それよりはい、麦茶。」
ため息をつきながら葵に水筒を差し出したのは昨夜約束していた茜だ。
「あ……ありがと……」
茜から差しだされた水筒を受け取り喉を潤した葵は息を整え水筒を茜に返した。
「ふぅ……本当にごめんね。遅れちゃって。」
「まったく葵、ちゃんと目覚ましはかけたの?おじさんとかおばさんに起こしてもらえるようお願いしたの?」
「目覚ましはかけたけどお父さんとお母さんには何も言ってないです……」
「いつもいつも遅刻するんだからそれくらいしないとダメでしょ?」
「今度からそうします……」
いつもと同じ返しに再度ため息をつきながら茜は怒りの表情を崩した。
「それじゃそろそろ行きましょ、人が多くなっちゃう。」
「あ、うん!」
そうして2人はデジタル区への門をくぐって入って行くのだった。
門の先にあるのは門の前と同じ様な光景だが少し違うのはあちらこちらの電柱に取り付けられている半円状のデバイスだ。
これはARを反映させる物でデジタル区は町全体がARのそれに包まれているのだ。
「それにしても相変わらず凄いよね町全体がAR画像に包まれてる〜なんて。」
「それを許した行政もだけどそれを自社だけで行えるあの会社の資金力も凄いわよね。」
「その上でみんなにこのARマーカーをタダでくれちゃうんだからどこから湧いてるんだろお金。」
電子看板や電子広告が立ち並ぶ中歩いている2人の片方の目元には赤い片眼鏡の様な物が装着されていた。
それはこのデジタル区のARを見るためのもの、名前をARマーカーという。
かなりの技術によって作られているものだがある日デジタル区が出来たその日にデジタル区に住む住人とその近くに住む住人達皆に無料で配られたものだ。
「あ、あの広告のご飯美味しそ〜」
「ふふ、タイミングを作って食べましょうか。」
「あ、でもお金あんまり無いんだ……」
「今日は私が奢るわよ。」
「え!いいの!?」
「前に奢って貰ったし、ね。」
「わーい!今度一緒にご飯食べる時は私が奢るね!」
「ええ、約束よ。」
町中にある広告に目を奪われながら2人は目的地であるショピングモールへと向かうのだった。




