No.85 風の神は緑色の猫?
『ガト~、ガト~聞きたいござる~』
ラザが風の神に語り掛けている。
大量のあんドーナツを供物に買収……もとい、説得を果たし、協力を得たのだ。
何度目かの呼びかけで風の神に通じたようで、ラザが妾に視線を向けてきた。待ってましたと言わんばかりに、スマホでカメラ目線のラザを撮影する。
『う~、まぶしいござる~』
「すまんすまん。フラッシュオフにするからそのまま上目遣いを維持してたもれ」
満足いくショットが5枚は取れた。あとでインスタにアップしよう。
表情が定まらずニマニマしていたら、炬燵の上の空間に風が集まりだした。渦が層を成し、向こう側が歪んでさえ見えるのに周囲には影響が無い不思議な風。
じっと見つめていると歪みが薄れ始め、緑色の猫が出現した。
『吾輩、参上だぞにゃん!』
猫が何やらポーズを決めると突風が吹き抜け、二畳間の部屋はひっくり返したかのように物が散乱してしまう。
『ふむ、狭くて吾輩好みの家だぞにゃん』
神様だからか、やたらと上から目線な態度が少々鼻につく。二畳間に5人もいるのだ。狭すぎて片付けすら叶わないので文句を言おうと口を開きかけた瞬間、カルカンが妾の口に猫パンチを繰り出す。
「な!? 何をするカルカン!」
「シャーラップなのにゃーーー! とにかく機嫌を損ねないように皆も全力でヨイショをするのにゃー!」
カルカンのお気に入りの酒瓶も先ほどの騒動で割れたと言うのに、ひたすらに低頭姿勢を崩さないカルカン。その媚びへつらう様子を見て、何となく神同士の力関係を察した。
「どうか風の神様のお力添えを頂けると恐悦至極に存じます」
「風の神様は素敵な毛並みニャン。どうか私たちを助けて欲しいニャン」
「ガトー様、私とガトー様の仲なのにゃ。後生だから、龍脈の調整をヨウに教えてあげて欲しいのにゃ! それは天才であるガトー様にしか出来ないのにゃー!」
納得はいかないが、皆が頭を下げて頼んでいるのでポーズだけは倣ってみる。
緑色の猫は満足そうに顔を緩め、耳と髭をピクピクと動かした。
「うむ、良い心掛けだぞにゃん。だが、吾輩も忙しい身。無償で教えるのは嫌だぞにゃん。と言う訳で吾輩が満足する物を献上するが良いぞにゃん!」
言い終える前に意味ありげな笑みを浮かべる緑色の猫。すかさずカルカンが手を上げた。
「ガトー様! 作戦タイムはありですかにゃ?」




