No.84 転生回避にはドーナツ必須
「うむ。そこまで望むのなら本腰を入れて龍脈の調整に挑むとするかの」
そうして本格的な作戦会議を始めた。
最大の問題点。ラザは脳筋タイプなので力押しの方法しか知らないということ。
妾のマナ制御だと力押しは年単位。そして来年を待たずに成層圏を超えて宇宙進出を果たしてしまう。そうしたら皆纏めて異世界転生コースだ。
炬燵に入りながら全員で頭を抱えていたら、急にカルカンが尻尾を立てて、肉球で納得の槌を打った。
「そうにゃ! ラザ様経由でガトー様に聞くにゃ!」
ガトーとは風の神の名前らしい。今回の件はカルカンへの試練でもあるから、直接のアドバイスを貰えない。しかし、ラザ経由でなら聞けるかも知れないとカルカンは話す。
「私のビール愛の本気を見せてやるのにゃ!」
カルカンは胸をドンと叩き、自信と意欲を漲らせている。
早速依頼をしに行くのかと思いきや、カルカンは炬燵を抜け出して徐に電話機の前に着座した。
「あ、もしもし? ダソキソドーナツさんにゃ? 出前を大至急で頼むのにゃ! にゃ? 赤坂が飛んでいるから臨時休業? 私のマナ力場でどうにかするから配達するのにゃーーー!」
聞き耳を立てていれば何やら無茶な要求をしている模様。これはモンクレやカスハラというものでは無かろうか?
「カルカン、お主、コンプラはどうしたのじゃ? モンクレはやってはならぬと妾に説教しておったであろう?」
「何を言ってるのにゃ? コンプラとビールどちらが大切だと思うのにゃ?」
コヤツ……目がマジだ。
酒のためにはなりふり構わない、という覚悟の炎が瞳には宿っている。
「配達に来ないなら赤坂に住む人たちの全員の寿命を30年ほど削ってやるのにゃ! どうにゃ? 今すぐ持ってくるにゃ? 40年に増やすかにゃ?」
果てには神にあるまじき脅迫まで始めた。
ヤバいぞ、この神。
電話を終え、受話器を置いたカルカンは凄い速度で外へ出て行った。
呆気に取られたオキノが口を開く。
「え? カルカン様は神様なのに一般人を脅していたような気がするニャン?」
「うむ、妾にもそう聞こえたから、オキノの聞き間違いではないのじゃ」
「何故ドーナツを?」
「リーマンよ。それは賄賂として必要なのじゃろうて」
カルカンの考えは読める。単純にお願いしてもラザも教えてはくれないだろう。
そこで貢物だ。
ラザの気持ちを動かすには、あんドーナツか小倉バタートーストが必要となる。
やきもきしつつカルカンの戻りを待っていたら、ダソキソドーナツの店員と同伴で戻ってきた。
「あんドーナツを連れてきたのにゃ!」




