No.81 お天気リポーター
「ぷはぁ、たまには炬燵でビールも良い物じゃのぅ」
「ハハハ、蜜柑が美味しいのにゃー……」
随分と高度が上がって寒くなってきたので、春だというのに炬燵を引っ張り出して温まっているところだ。
妾はビール。カルカンはノンアルコールビールで乾杯。
カルカンは乾いた笑みを浮かべ、生気のないレイプ目をしている。
それと言うのも龍脈の調整が終わるまで、カルカンは強制禁酒の刑が執行されているそうだ。
どの辺が強制かと言うと、カルカンが触れた瞬間からアルコールは気化して爆散する。水の神と風の神の共同の呪いとのこと。
「御二人は仲が悪いから、私のせいでヤな奴と協力しなければならなかったと愚痴まで浴びせられたのにゃ」
「さようか。それは難儀であったのぅ」
カルカンは数日の禁酒期間ですっかりとやつれてしまっている。
「しかし、妾がドラゴンじゃったとは意外すぎるのぅ。いつできるようになるかは分からぬがなるべく急ぐ故、許せ」
「……にゃ」
龍脈を調整できるのはドラゴンの血を持つ者のみ。ラザは大雑把すぎて調整が出来ない。なので妾がやらなければならない。
ラザにいつ出来るようになるかを聞いたら「ちょっと時間かかるかも?」と言われ、カルカンと二人で軽く絶望したところだ。一万年を待てるラザの「ちょっと」がどのくらいか分からないが、どえらい年月なのは間違いない。
やり方すらも分からないので、ビールを飲んで現実逃避をしているところだ。
「旨いのじゃ。どうじゃカルカンも一杯やらんかぇ?」
「新種のアルハラなのにゃーーー」
カルカンはビールを受け取ってもアルコールだけが気化してしまい、残るのは麦とホップの水である。
「このランプは良い匂いするにゃ。飲んでも良いかにゃ?」
電球が切れたのでアルコールランプを炬燵の真ん中に置いていたら、カルカンが物欲しそうな目で見つめだした。これはいよいよ末期かも知れない。
「これでも嗅いでおれ」
「はいにゃーー」
アルコールティッシュを渡してやると、鼻を埋めてクンカクンカを始めた。
それを横目に手酌でビールを注いでいたら、建物の揺れが大きくなる。
「ととっ……酷く揺れるのじゃ」
外は季節外れの台風が吹き荒れている。何でも風の神が世界渡りをした影響らしいので、暫くは続くと聞いた。
「ニュースもやっておるのぅ」
ニュースでも台風の映像が映し出されている。何でも風速80m/sとのことでかなり危険な風を撒き散らしていた。全く、迷惑な置き土産を残してくれたものだ。
台風の中継リポーターが天気のエピソードにあわせて自分語りをしている。
『あぁ台風が強すぎて何も思いつかない! すみませんスタジオに返します!』
風に飛ばされないよう、フラフラになりながら台本に沿ったアドリブをしようとしていたが、無理だったようだ。
「いや、そこは台風のこと話さんかぃ。のぅカルカン?」
「…………」




