No.78 NG高度
「お主、ことの重要性を理解しておらなんだ。仮に10,000mまで上昇したとしたら、どうなると思うのじゃ?」
「にゃー? 見晴らしが良くなるにゃ?」
恐らく素なのだろう。だが、ここは心を鬼にして現実という奈落へ突き落とす。
「ビールを開栓したら爆発するぞ」
「なんてこったなのにゃ! それは一大事なのにゃ!」
上空10,000mともなれば気圧は0.25以下。つまり地表の4倍の体積となる。炭酸水はほぼ全滅だろう。すぐにどうこうという訳ではないが、急にあわあわとしだしたカルカンを見て溜飲を下げる。
「何をのんびりとお茶を飲んでるのにゃー! 私のビールが! 私のビールが!」
「ふむ、薬が効き過ぎたかの? これでも飲んで落ち着かんか」
アルコール度数10%を超えるビールを渡し、カルカンを一先ず落ち着かせる。
「ふはぁ~うまーなのにゃーーー! あれ? 私は何を焦ってたのにゃ?」
「正気に戻ったかぇ? とにかく地上に降ろす方法を相談しようぞ」
飲めば嫌なことを全て忘れるカルカンの特殊技能を羨ましく思いつつ、具体的なプランを相談したが有効な案は出てこなかった。
「ほんにお主は使えん神じゃのぅ」
「そんなことは無いのにゃ。私が居れば電球要らずなのにゃ」
「別にお主でなくてもLEDで充分じゃわい」
カルカンは光と新陳代謝しか扱えない。ラザは微妙なコントロールが出来ないため、降ろすとなると高確率で急降下になって、木っ端みじんに大破するそうだ。そんな一か八かの賭けなどできない。
「お主の知り合いで使える神は居らんのかぇ?」
腕を組んで思案顔のカルカン。妾も付き合いが長くなって段々と分かってきた。カルカンがこういう態度を取るときは、手段はあるが、あまり選びたくないときの態度だ。
「してカルカン。お主が考えている解決策を取ったときのデメリットは何じゃ?」
「私が修羅場に巻き込まれるのにゃ」
「修羅場?」
詳しく話を聞いてみると至極どうでも良い悩みだった。
水の神なら穏便に力を中和して降ろしてくれるかもしれないが、漫画を手伝うハメになるのは確実らしい。
「水の神が夏コミに参加すると言ってもまだまだ締め切りまでは時間があるのじゃろ?」
「そうやって余裕ぶっこいているからいつも修羅場っているのにゃ」
「修羅場とビール爆発のどっちを選ぶのじゃ?」
カルカンは即座に無言で立ち上がり誰かと交信をし始めた。
恐らく水の神と会話をしているのだろう。
やり取りをしているカルカンの様子を眺めていたら、何やら雲行きが怪しい。
カルカンの顔は蒼白なものとなっているし、先ほどから身振り手振りが必死な感じになってきた。ガチ反応っぽいし、これは大変なことになりそうな予感がする。
交信は終わったようで、カルカンは肩と尻尾を項垂れさせていた。
「カルカン、何か偉いことになったのかぇ?」
「……夏コミに参加するらしいのにゃ」




