No.77 飲んだビールの数を覚えているのか?
「ところでカルカンよ。これを早く降ろすことは出来ぬのかぇ?」
「私にではなく、ラザ様に聞いて欲しいのにゃ」
「……とはゆうてものぅ」
ラザには時間の概念が薄い。一日どころかひと月も一年も理解できていない節がある。カルカンからの情報によれば、友達が返ってくるのを1万年絶食して待ったこともあるそうだ。それを「おなかすいた」の一言で流したらしい。
その惑星や天体規模のおおらかな時間感覚で言うと「すぐ落ちる」と言うことなのだが、人の寿命すらも「すぐ」と表現してしまうラザ。下手したら100年コースなのでは無いかと身震いする。
「カルカンなら伝心とやらでラザの心が見れるのじゃろう? なんかこう、具体的な年数のイメージとか掴めんのかぇ?」
カルカンは肩を竦めて呆れ顔をする。
「神様とは本来、大らかな存在なのにゃ。1万年を一人で待てるラザ様の時間感覚を人類如きが知ろうとするなんて無謀なのにゃ」
その言には一理あるが、カルカンは大らかとは違うと思った。
「お主も神なのじゃろう? 少しは大らかになってはどうじゃ?」
互いの尻尾をバチバチとやり合わせていたら、カルカンはフッっと鼻で笑う。
「私も昨日飲んだビールの本数はざっくりしか覚えてないのにゃ。三桁未満は誤差なのにゃ」
「そうかそうか。なら一本減らしても大差はないかの?」
「255本と256本は大違いなのにゃ! 減らすのダメ絶対なのにゃ!」
しっかり覚えているでは無いかというツッコミを喉元でどうにか留めた。
そろそろ一ヵ月になる天空赤坂。
港区、渋谷区、目黒区のそれぞれ一部ずつが約2000m辺りを飛んでいる。
「……ところでカルカン」
「何なのにゃ? 私は今日のビールのコンディションを確かめるので忙しいから手短に頼むのにゃ」
「少しずつ上昇を続けておるような気がするのじゃが、気のせいかの?」
テレビの報道を見ていると、どう考えても初期の頃より高くなっている。
今見ているニュースの中でも検証が行われていた。
「ニュースで言っている通り、一日に10mくらい上昇しているのにゃ。その耳は飾りかにゃ?」
「いつまで上昇するのじゃ?」
カルカンは重要性を理解していないようで、首を傾げたまま疑問を口にする。
「さぁ? 分からないのにゃ」
妾はカルカンへ人差し指を突きつけ、再度問うた。
「お主、ことの重要性を理解しておらなんだ。仮に10,000mまで上昇したとしたら、どうなると思うのじゃ?」
「にゃー? 見晴らしが良くなるにゃ?」




