第22話 『キリル・エア』無双!
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ルジナート連邦南部の大都市ヴォロジが壊滅――いや消滅した。
蒼銀の光塊が落下した爆心地を中心に魔石エネルギーの威力が爆風となって同心円状に広がった。
被害地域は直径にして80km以上。
ヴォロジのみならず周囲の小さな街にまで被害は及んでいる。
鉄槌を下した『キリル・エア』はゆっくりと北上を開始した。
次の獲物を求めるが如く。
―――
ルジナート連邦の東の海上で『キリル・エア』の監視任務に当たっていた、ユースティア海防隊員たちは超望遠機能で観測した映像をモニタ越しに見せつけられることとなった。
誰1人として身じろぎする者はいない。
モニタに見入っている者以外は、次々と観測されるデータの解析を始めていた。
「何だよ、あれは……反則だろ」
海防隊員の1人がようやく絞り出した一言によって、時が動き出したかのようにあちこちから声が飛び交い始める。
「前世界で落とされた魔核兵器よりも遥かに高威力ですね」
先の大戦でユースティアの前身、神聖ユースティア帝國は本土に、大規模魔核兵器と究極大魔法を3つの都市に落とされている。
その際に都市は灰燼と化したが、消滅はしていないし生存者も存在している。
「最初から出せよって感じですがねぇ。量産されたら厄介ですが、どれほどの数を保有しているのか……」
「あのような攻撃を受けたらひとたまりもないぞ?」
観測船の艦長である一等海佐は、あの威力に薄ら寒さこそ感じてはいたものの、戦いようはあると見ていた。
「一等海佐、確か『キリル・エア』でしたか。何か情報はあるのですか?」
「いや、発掘された古代兵器だとは聞いているが……後は魔石を使って動作しているらしいな」
「古代兵器……? 発掘? では量産できない、まさに虎の子と言うことでしょうか」
海防隊員が驚きの声を上げる。
まさにその通りだと一等海佐も考えている。
この時代に古代の兵器に頼っている時点でお察しだろう。
「ふむ、古代は今よりも進んでいたってことですか……」
「この結果が分析されるまでは分からんが、現時点では政府は代えの利かない兵器だと考えているようだ。それにまともに解析もできていないんじゃないか? もしできているなら神聖ヴァルガリア帝國の兵器群はもっと優勢を保っているはずだ」
「一等海佐、放射線など人体の害になるようなものは確認されません」
観測される情報を分析していたオペレータが報告を上げる。
一等海佐もユースティア政府もそれは予想していたことだ。
この観測船だけでなく陸、空からもデータを取っている。
解析が進めばもっと詳細情報を得られるだろう。
「膨大な量の魔石エネルギーを使用すると言う話だ。あの威力から見てもその通りだろう」
この世界で産出される魔石についてもユースティアは研究を進めている。
前世界でもそうだが、今のところは単純な魔法のエネルギーと同様のものらしい。
「恐ろしい金喰い虫の兵器ですね。さぞかし運用も大変でしょうな」
隊員の1人がおどけて言った言葉に、艦内は大きな笑いに包まれる。
「後は陸海空のデータを総合的に分析するだけだ。俺の予想では攻撃を続けながらでは、中央大陸からすら出れないのではないかと思う」
「そうですね。ここに至ってようやく出してきたくらいですし、かなりきついのではないかと」
「恐らく次はランディス空軍との戦闘が見れるはずだ! きっちり見届けるぞ!」
一等海佐の力強い言葉に隊員たちから威勢の良い声が響いた。
―――
「来よったねぇ。煩わしい蠅の大軍が……」
『キリル・エア』の司令室では艦長のオークラルが愉快そうな笑みを浮かべていた。
忌々しいルジナート連邦の1つの大都市をまるまる消し炭に変えてやった。
これまでの鬱憤が晴れると言うものだ。
『レーダー補足しました。戦闘機、500機。距離20km、後続に300機です』
「よくもまぁ短時間で集めたものだね。物量だけは感心するよ。全機爆装かな? 後衛のみが爆撃機かな?」
オペレーターからの報告を聞いて、オークラルは芝居がかった声で感嘆する。
その声からも表情からも余裕しか感じられなかった。
「艦長閣下、10km地点で先制攻撃致しますか?」
その気になれば、敵機など遠距離から一方的に一掃できる。
副官が尋ねるとオークラルは首を横に振った。
「いや、それはしない。皇帝陛下が敵軍のみならず、ユースティアにも戦い振りを見せ付けよと仰せだ。あの程度の攻撃など効かんことを見せてやろうじゃあないか」
「なるほど……この戦闘が済めば、後はルジナート連邦の拠点を1つ1つ潰していくだけですな」
「いや、一気に首都に『キリル砲』を落とす。政府中枢が全滅すれば指揮系統は麻痺する。最早戦争どころではない」
律儀にも副官の質問に答えながらも、オークラルは内心で舌打ちしていた。
何も分かっていないのだ。
所詮は空軍が捻じ込んできた男。
いちいち都市や軍基地を潰していけば、エネルギー不足に陥って動けなくなり下手をすれば落ちかねない。
『キリル・エア』に関する情報は最重要機密であり、皇帝直轄の兵器である。
例え軍部であっても知られる訳にはいかなかった。
「それもそうですな……」
「それに陸空軍にも活躍の場を与えてやらねばならんだろ?」
そう言ってオークレルは機嫌良く大笑いしてみせた。
もちろん嫌味と捉えた副官は苦笑いするしかない。
『間もなく接敵します』
「魔法回路に魔力を流せ。防御シールドを起動。全体を包む」
『魔法回路に魔力注入。防御シールド起動』
オペレーターが復唱し手早く操作が行われる。
魔石から抽出されたエネルギーが魔法回路に流れ込み、『キリル・エア』の外壁に枝葉のように広がって蒼銀に輝いた。
『シアトー655型』の14mm速射機関銃が次々と火を噴くが、展開された防御シールドに阻まれて本体に届くことはない。
蒼銀のシールドが少し撓み、波紋のようなものが広がるのみ。
「そんな物で抜ける訳がない」
「どうやら全く問題にはならんようですな」
『爆撃きます』
機関銃に効果が認められなかったことで『シアトー655型』が急降下爆撃の態勢に入った。
『キリル・エア』は戦闘機に比べれば遅いものの、それでも時速300km以上は出ている。
そう簡単に当たらないようにも思えるが、その実、直径20kmもの巨体である。
逆に当たらない方がおかしい。
『上部にて爆発多数……』
攻撃が命中していても内部には全く振動すら届いて来ない。
絶対の自信を持つオークラルだが、被害報告を聞くまでは油断はできない。
何しろ皇帝から預かった大事な兵器なのだ。
神妙な面持ちで報告を待つ。
『損害を認めず。ですが立て続けに攻撃を受けております』
「これで敵さんの攻撃は抜けないと分かったねぇ……ではそろそろ蠅共を落とそうか」
そう言ったオークラルだったが、思い出したとばかりにオペレーターに告げる。
「あ、そうだそうだ。一応、敵機の情報をインプットしておいてくれ給え」
『はい、問題ありません。既に収集済みです』
考えていたよりも有能なオペレーターだったことに満足感を覚えたオークラルは攻撃命令を下した。
「魔力弾、拡散魔光砲の両方を試したい。各砲は統制システムで敵機をロックし次第殲滅し給え」
オークラルの目の前の超巨大モニタが分割され、幾つもの空域が映し出されている。やがて『キリル・エア』統制システムが敵機を同時に捕捉し、モニタの中にはロックオンされた印が赤く灯っていた
「魔力弾撃て!」
『キリル・エア』本体の頭頂部、側面部など至るところから緑色の魔力弾が発射された。それは一発も外すことなく敵機に命中した。
撃ち漏らしなどない。あるはずがない。
直撃を受け爆散する物、翼に当たり錐もみ状態で地上へと落ちていく物、操縦不能になったのか、防御シールドに激突して爆ぜる物もあった。
「弱い……脆いねぇ……後はある程度まとまった場所に拡散魔光砲を撃ち込め!」
散開しているつもりのようだが、問題はない。
多少の距離など拡散魔光砲であれば、纏めて撃破することなど容易いことだ。
「放てぇ!」
『拡散魔光砲、発射!』
側面部から横薙ぎの閃光が発射されて、空を切り裂いた。
光が通りすぎた後には、次々と爆散するランディス機の姿が。
爆炎と煙が風によって流された後には、最早何も残ってはいなかった。
「ブラボォォォォ!! やはり古代兵器は凄いぃぃぃ!! 奴らが勝てることなど有り得ないぃぃぃ!!」
オークラルは胸の前で両拳を硬く握りしめて雄叫びを上げた。
その目は血走り狂喜に染まっていた。
見よ!
これが神性ヴァルガリア帝國だ!
驚け! 戦慄け! 殲滅してやる!
「ふはははは!……ふん。これでユースティアの牽制にもなったろうねぇ。それに獅子州にも舐められることはあるまいよ」
その後も散発的にランディス機が襲ってきたが、全てを叩き落とした。
まさに無駄。大いなる無駄な抵抗。
『キリル・エア』は一路、ルジナート連邦首都ルジナートグラードへ向けて北上する。
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