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国母セルア  作者: 小松しま
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 イブリンの宮城に入ったセルアは、人々から熱狂的な歓迎を受け、即座に婚礼を執り行ってイブリール史上初の皇妃の称号を賜る。

 本来、皇帝の伴侶は皇后とされるのだが、その戴冠を控えたのは、双方が未成年なため、政治的な配慮もあるが、レスヴィックが、自分の手で、妻にその儀式を執り行いたいと熱望したのが最大の理由だ。

 明確な規定がある訳でないが、暗黙の了解で、神聖な儀式を施行するのは成人の役目とされている。

 王家や皇室の直系が幼子のまま戴冠を受けるのとは訳が違うため、それも当然だろう。

 尤も、最高権力者たる皇帝が、自らの伴侶を皇后に冊立するのに、特別なしきたりなどあるはずもない。

 それでも、幼い身で、年長の王女を正式に娶るのは、何とも格好が付かないのは事実だった。

 レスヴィックの少年らしい見栄……と言っては語弊があろうが、それでも、何とも微笑ましい劣等感は容易に理解できるため、誰もがその判断を笑顔で受け入れた。

 すっかりセルアを熱愛しているレスヴィックなので、いずれ、釣り合いの取れる折に……と望むのは当然だろう。

 イブリール皇室では、かつてのイブリン王家からのしきたりで、一般の国民たちより一年早く、男女共に十五才を成人としている。

 本来、結婚もその年齢を目安に行うものだ。

 それに添う形をとるのなら、まだ十四才のセルアもまた、成人扱いには早いだろう。

 様々な特殊な事情が重なった結果の現状なので、セルアの皇后即位はこれより七年後、レスヴィックの成人の際に執り行われる運びで合意した。

 無論、セルアは立后の日が来ないと達観している。

 二十一才になれば、さすがに性を偽るのも限界に達してしまうだろう。

 いかに性の象徴を失い、成長の形が歪んでいるとは言え、娘らしい柔らかな曲線を、この身が得られるとは到底思えない。

 同性婚は罪にならなくとも、王女として嫁いで来た身だ。

 人々を謀っている事実の前で、厚顔な振る舞いをとても続けられるはずがなかった。

 何より、容易に子を設けられない……それでも希望を持たせるような表現で、セルアとしては心苦しい限りなのだが……身であると、すでに周知されている。

 恐らく、その時を期限に、レスヴィックの伴侶としての日々は終わるに違いない。


(それまでの間……わたくしは、精一杯、陛下にお仕えしよう……)


 レスヴィックと共にバルコニーに立って、詰めかけた人々へ手を振るセルアは、覚悟を新たにする。



 婚礼の翌日、セルアは早速行動を開始した。

 レスヴィックと共に、全ての講義を受け、公務に出席し、公私共に連れ添う覚悟を内外に示したのだ。

 勉学のみならず、乗馬や剣術なども、夫と全く同様の指南を受けた。

 最初は驚いていた人々も、すぐにセルアの決意を受け入れ、温かな眼差しを注ぐようになる。

 郷里にいた際も、神官たちより充分な教育を受けていたセルアだが、さすが国の主が修めるべきレベルの学習には遠く及ばない。

 そして、いかに貧しくとも一応なりとも姫君扱いであったため、武術や戦術に関する知識は皆無の状況だ。

 学ぶべき教えは数限りなくあり、レスヴィックと共に、セルアは真剣にそれらに取り組み続けた。


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