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『一枝(いっし)に宿る、二つの灯火 』
山のふもとの 古びた庵
老いた手がつむぐ 木の命
ある日 嵐が引き裂いた
一本の太き 杉の枝
黒く焦げたる 荒々しさと
青く芽吹いた みずみずしさと
ひとつの身体に 抱きしめて
地面にぽつりと 落ちていた
職人は 刃を当てて 削りだす
焦げた木肌に 宿りしは
嵐を耐え抜く 鬼神力
見開く眼 むき出しの歯
災いを裂き 苦難を蹴散らす
「負けてたまるか」と 吠える盾
青き若葉に 宿りしは
天の恵みの 観音力
閉じた目元に 浮かぶ笑み
涙をぬぐい 怒りを溶かす
「大丈夫」と 寄り添う光
夏に荒れ狂う 泥の海
怯える命を 引き揚げたのは
胸に燃え立つ 鬼神の焔
絶望の底 泥にまみれて
いがみ合う心を 救ったのは
そっと差し込む 観音の露
一草一木 どんな命も
二つの風を 宿している
壁をぶち破る 牙を持て
傷を包み込む 腕を持て
二つの人形は 祠の中で
今宵も 静かに 語りかける
いま あなたの心に 吹く風はどちらかと




