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神に捨てられた最弱少年、実は全魔法を無効化するチート持ちだった件  作者: マサキ


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第十一話 古代の記録

第十一話 古代の記録


 翌朝、ライラに連れられて王都の外れへ向かった。

 セラもついてきた。

「面白そうだから」という理由だった。止める理由もない。

 王都北側。

 貴族街をさらに奥へ進むと、一つの建物が現れた。

 古い石造りの巨大な図書館。

 ――王国立古文書館。

 研究者と上位貴族しか入れない施設だ。

「入れるのか?」

 門の前でセラが言った。

「私の名前で入れます」

 ライラは平然と答えた。

「お前、名前だけで?」

「千年分の寄贈記録がありますから」

 守衛がライラの名前を聞いた瞬間、顔色が変わった。

 深々と頭を下げ、すぐに門を開ける。

 セラが小声で言った。

「化け物か」

 ライラは聞こえていたはずだが、何も言わなかった。

 古文書館の中は迷路のようだった。

 天井まで届く本棚。

 羊皮紙の匂い。

 古い木の匂い。

 ライラは迷いなく奥へ進んでいく。

 いくつか棚を曲がり、最奥の区画にたどり着いた。

 そこは他より明らかに埃が積もっていた。

「ここです」

 ライラが棚の最下段から革装丁の束を取り出した。

 中身は羊皮紙ではなかった。

 透明に近い薄い板。

 その表面に、光る文字が浮かんでいる。

「魔力記録板です」

 ライラが説明した。

「千年以上前に使われていた記録媒体です。魔力を込めて読む」

 指先で触れると、淡い光が広がった。

 文字が浮かび上がる。

 古い言語だった。

「読めますか?」

 僕が聞くと、ライラは当然のように言った。

「もちろん」

 そして読み始めた。

「『私は神に捨てられた』」

 ライラの声が静かに響く。

「『理由はわからない。ただ、この世界で目が覚めた。何も持っていなかった。力も、仲間も、目的も』」

 どこか聞き覚えのある書き出しだった。

「『だが気づいた。魔法が体に消えていく。受けるたびに、自分のものになっていく』」

 セラが眉をひそめた。

「神が捨てた理由だと、後で知った――ってことか?」

「続きがあります」

 ライラが次の板を読む。

「『神は私の魂の構造を見て恐れた』」

「『全ての魔法を飲み込む構造は、神の魔法さえ例外ではない』」

「『神の力の源泉は魔法だ。その魔法を吸収する存在は、神にとって唯一の脅威になり得る』」

 静寂が落ちた。

 セラが低く呟く。

「神が恐れた……だと」

 ライラは続けた。

「『私は三十年かけて力を蓄えた』」

「『七十の魔法属性を吸収し、神の眷属を単独で倒した』」

 そして。

「『神がこの世界を壊そうとしていることに気づいた』」

「世界を壊す?」

 セラが聞く。

 ライラは淡々と読んだ。

「『神にとってこの世界は実験場だ』」

「『失敗すれば壊し、作り直す』」

 ライラの声が少し揺れた。

「『私はそれを止めようとした』」

「『だが一人では神の本体に届かなかった』」

 そして、次の文章。

「『だから取引をした』」

「『私の存在と引き換えに、世界を続けさせる契約を神と結んだ』」

 沈黙が落ちる。

 セラが額を押さえた。

「自分を犠牲にしたのか……」

 ライラは答えなかった。

「続きは?」

 僕が聞いた。

「……最後です」

 ライラの手がわずかに震えていた。

「『これを読む者へ』」

「『もし同じ力を持つ者が現れたなら伝えてほしい』」

「『神との取引には続きがある』」

 ライラが息を止める。

「『私の魂は神の器の中に封じられている』」

「『その器を壊せば、私は戻る』」

「『そして神の計画を、今度こそ止められる』」

「『頼む』」

 記録板が閉じられた。

 重い音がした。

 しばらく誰も喋らない。

 先に口を開いたのはセラだった。

「……整理するぞ」

 指を折りながら言う。

「千年前のヴェインって奴が神と取引した」

「その代わり世界は続いている」

「だが魂は神の中にある」

「それを取り出せば、神を止められる」

「そういう話だな?」

「その通りです」

 ライラが答えた。

「じゃあ問題だ」

 セラが僕を見る。

「神の器を壊すには?」

「神の本体に届く力が必要です」

 僕は答えた。

「今の僕には無理です」

「ダークランサー三体で頭から血が出ました」

「神が相手なら壊れます」

 セラが笑った。

「正直だな」

「できないことをできると言っても意味がない」

 ライラが言った。

「ヴェイン様は三十年かけました」

「貴方も同じように――」

「三十年は待てないかもしれません」

 僕は言った。

「ゼクスが動くと言っていました」

「はい」

 ライラが頷く。

「ゼクスは神の代理人です」

「貴方を消そうとするでしょう」

 セラが腕を組む。

「つまりこうだ」

「ゼクスに殺される前に強くなる」

「そして神を殴れる力を手に入れる」

「簡単だな」

「簡単ではありません」

 セラはため息をついた。

「とんでもない話に首を突っ込んだ気がする」

「巻き込みましたか」

「いや」

 セラは即答した。

「自分からだ」

 古文書館を出た。

 昼の光が眩しい。

 建物の外で目を細める。

 歩きながら、ライラが聞いた。

「怖くないですか」

「何が?」

「神が相手です」

 少し考えた。

「怖いかどうかより」

「やるかどうかの方が大事です」

「答えになっていません」

「じゃあ正直に言います」

 僕は笑った。

「少し怖い」

「でも」

「僕は一人じゃない」

 ライラが黙る。

「……そうですね」

 その声には千年分の後悔が滲んでいた。

「今度は違います」

 僕は言った。

「ライラさんがもっと強くなればいい」

 ライラが足を止めた。

 金色の瞳が僕を見る。

「……変な人ですね」

「よく言われます」

 ライラが小さく笑った。

「千年生きていて初めて言われました」

 王都の大通りに戻る。

 そこで――

 見覚えのある男が歩いてきた。

 金髪。

 豪華な鎧。

 自信満々の歩き方。

 勇者パーティのレイン=バルクス。

 レインの目が僕を捉えた。

「……お前は」

「久しぶりです」

「なぜ王都にいる」

「冒険者登録です」

「適性ゼロが?」

 レインが笑う。

「Fランクで何ができる」

「Sランクです」

 笑いが止まった。

「……何?」

「今日登録しました」

 証章を見せる。

 金色のSランク証章。

 レインの顔が歪む。

「ふざけるな」

「なりましたよ」

 周囲に人が集まり始める。

 野次馬だ。

 レインが低く言う。

「いいだろう」

「いずれ白黒つけてやる」

「いつでも」

 レインは去っていった。

 セラが笑う。

「再会早々やり合ったな」

「やり合ってません」

「見てた奴はそう思わない」

 ライラが静かに言った。

「あれが勇者パーティですか」

「知っているんですか」

「名前だけは」

 ライラが言う。

「貴方の敵になります」

「最初からですよ」

 ライラが首を傾けた。

「怒らないのですか」

「怒ってます」

「顔に出ませんね」

「結果で示す方が早い」

 ライラが小さく言った。

「……ヴェイン様と似ています」

 神。

 ゼクス。

 ヴェインの魂。

 やるべきことは山ほどある。

 それでも。

 不思議と心は落ち着いていた。

 目的がはっきりした。

 それだけで前に進める。

(第十二話へつづく

「王国への招聘」)


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