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電車を降りたらそこは異世界でした 悪役令息と七人の魔女  作者: ゆきあさ


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解放

来ていただいてありがとうございます!



「えっと、とりあえず魔物を何とかしたいんだけど力を貸してもらえる?」

何となく言葉が通じる気がして尋ねてみたけど、手の中の魔法石が強く輝いた。okみたい。後でまた王太子様から怒られるんだろうなぁ。ちょっと気が重くなったけど今はそれどころじゃない。魔法石を両手に握りしめて魔力を込めた。なるべく広い範囲の魔物を一掃できるように目いっぱいの力で。眩しい光が手の中から生まれる。


「うわっ!」

突然、魔物を牽制していたセシルが叫び声を上げた。セシルの剣が今までにない強い光を放ってる。まるでこちらに呼応するみたいに。何が起こったんだろう?気にはなるけど今は周囲の魔物を倒してしまわないと動けない。私はセシルの無事を確認してから魔法を広げていった。光が溢れて周りが見えなくなって、その光が消えると周りが静かになった。良かった!上手くいったみたい。

「ありがとね」

魔法石に話しかけると、星みたいに瞬いた。


「凄いな……。今の光、もしかしたら王都全体を包んだんじゃないかな……」

空を見上げていたセシルに近づくと、剣を握ったままちょっと茫然としてるみたいだった。

「さすがに王都全体は無理じゃないかな。でもこれで少しは時間が稼げたよね」

「ああ。氷の大地の聖堂へ向かおう」

セシルと私は手を繋いで転移魔法を発動させた。




「あれ?転移魔法でここまでは来れないんじゃなかったっけ?」

一瞬の後、私達はチェンバーズさんとチェルシー、アビーが囚われてる魔法石の聖堂の前に立っていた。

「思いつくことはあるけど、今は三人の救出を急ごう」

「そ、そうだね」

私達は聖堂の中へ入った。中には前と同じ棺のような魔法石とアビー、チェルシー、チェンバーズさんが閉じ込められた魔法石…………とたくさんのうさぎ。

「うさぎ?!」

あの時シビルと一緒に飛び込んで来た氷うさぎってあのまま居ついちゃったの?

「っとにかく急ごう!」

セシルも呆気に取られてたみたいだけど、私より先に気を取り直してた。


「流石にこれを砕くと怪我をさせちゃうよね」

時間がかかるけど一人ずつ魔法石を当てて魔力を流し込んでいく。三人を閉じ込めていた魔法石はするすると溶けていくように消えて、三人を元の生身の姿に戻す事ができた。倒れこんでくるのを受け止めて、セシルと協力して壁際に運んで寝かせた。

「息はしてる。良かった。けどすぐには目を覚まさないかな……風邪をひかないといいんだけど」

魔力を吸い取られすぎて消耗してるんだろうな。突然周囲を警戒していたセシルが声を上げた。

「そこにいるのは誰だ!!」


「私ですぅ!攻撃しないでくださいぃ!」

「シビル?!」

突然の声に驚いたけど、聖堂の奥の扉から現れたのは氷の魔女シビルだった。シビルは氷うさぎを何匹か腕に抱いている。

「この子達が逃げ回ってて、やっと捕まえたのぉ。くたびれたぁ……。ああ、こんな所で寝てたら凍死しちゃいますよぅ。うさぎちゃん達に温めてもらいましょうぅ」

言いながらシビルはアビーの上にうさぎ達を乗せた。すると不思議なことにわらわらと他のうさぎ達も集まって来て三人を覆うように温め始めた。驚いた。うさぎ達がシビルの言う事を聞いてるの?試しにうさぎをちょっと撫でてみたら結構あったかい。カイロみたい。これなら三人の保温も問題無さそう。


「よし、あとはチェンバーズ達を連れて帰るだけだけだけど……不気味だな」

「え?」

「静かすぎる」

「あ……」

そういえばずっと夢見の魔女の妨害が無い。

「そうだよね。絶対に邪魔が入ると思ってたのに」

私は棺の中で眠る夢見の魔女の体を見た。いっそこれを壊して夢見の魔女を捕まえられればいいんだけど、そうすると何が起こるかわからないらしく(フィロメーラさん談)、下手をすれば夢見の魔女が死んでしまうかもしれないとのことだった。私にはそんな覚悟も持てなくて、とてもできそうにない。

「とりあえず予定通りに私が一人ずつ王都へ運ぶね」

私は転移魔法を覚えたてで一度に大勢を運んだりは出来ない。もしかしたらできるかもしれないけど、人の命がかかってるから万が一があってはいけない。

「まずは見た目がちっちゃいチェルシーからかな」

チェルシーの体を起こして魔法を発動しようとしたその時、聖堂の中央が強く光り始めた。

「来たか……」

セシルの声にとうとう夢見の魔女がやって来たことがわかった。そりゃそうだよね。突然魔力の供給が止まったんだもん。気付くよね。



『よくもやってくれたわね』

自らの体の上で幽体離脱みたいになって睨みつけてくる夢見の魔女……ちょっと怖い。セシルはすでに剣を構えて私達を守るように立ちはだかった。

「リサ、今のうちに一人だけでも連れて行くんだ」

「うん」

『させる訳ないでしょ!』

光のつぶてのようなものが飛んで来た。以前に魔物からセシルとチェンバーズさんを守った時のように防御する。

「セシル!作戦変更!今のうちにセシルが三人を運んで。ここは私に任せて!」

「リサを置いて行くわけにはっ!」

セシルは嫌がっていたけど、これは事前に話し合ってたことだった。

「セシル!!」

セシルは渋々といった感じでチェルシーを抱き上げた。

「すぐ戻るから!」

そう言ってチェルシーと一緒に姿を消した。それにしてもずっと体の入った魔法石が光り続けてるのは何故なんだろう?不思議に思ったけど考えてる余裕は無かった。


何とか二人を守らなきゃ。ってそうだ!ここにはシビルもいるじゃない!シビルに頼んで二人を逃がしてもらえばいいんだ!

「シビル!お願い!二人を城まで連れて行って!シビル?」

反応が無い。チラッと振り返るとシビルは何故か力が抜けたように座り込んでいた。あれ?さっきより集まって来てるうさぎの数が増えてない?気のせい?

「お願いっ!シビル?!」

「…………」

やっぱり反応が無い。ダメそう。


『あの光はあんたの仕業ね?!あれのせいで召喚した魔物はほぼ全滅したわ!ドラゴンも弱って使い物にならなくなったし魔法石の根も枯れた!!一体何をしたの?!あんたは何者なのよ?!』

「そんなの知らないよ!私はただの日本人だもの!」

しかも異世界(ここ)へ来たのも巻き添えっぽいし。

『そんな訳ないでしょ?!それを言うなら私だって日本人よっ!それなのに……どうして私には「特別」が無いのよ!』

「そんなこと言われても知らないよ……。それにこんなに力があるんだから、十分特別にすごいと思うんだけど」

『私のはずっと努力してやっと身に付けた力よ!最初から持ってたわけじゃないっ!!』

「それってもっとすごくない?」

『え……?』

あれ?攻撃が少し弱まった気がする?




「リサ、無事か?!」

その時セシルが王都から戻って来た。

「チェルシーはフィロメーラさんの所へ届けたよ」

まるで宅急便みたいな言い方に少し笑った。

「大丈夫そうで良かった」

「じゃあアビーとチェンバーズさんも王都へ」

言いかけた私の肩に手が置かれた。その手をそっとセシルが払いのけた。誰の手???

「その必要は無いわ」

「アビー!目が覚めたの?!」

「ええ。おかげさまでね」

アビーは私の横に立ち、夢見の魔女を睨み据えた。寒さのせいか怒りのせいか体が震えて白いツインテールがゆらゆらと揺れてる。見ればアビーの隣で眠っていたチェンバーズさんも身じろぎをしてて、もうすぐ目覚めそう。アビーやチェルシーに乗っかってたうさぎが全部体の上に乗ってるみたいで、もふもふの山になってる。あれってあったかいけど重いんじゃないかな。大丈夫かな?


「二度も遅れをとるとは我ながら情けない……。よくもやってくれたわね、いくら同門の先輩でも許さない。私の魔力、時を遡って帰してもらう!」

アビーが魔法石を杖に変えて振るうと、夢見の魔女の体からなにか白い光の塊のようなものが飛び出してきてアビーの体の中に入っていった。


夢見の魔女の幻影が驚愕して自分の体を見た。同時に光のつぶての攻撃がピタッとやんだ。

『そんな……、私の力が……』

「あんたのじゃないでしょ!……」

アビーがもう一度杖を振るおうとしたけど、それをやめて振り返った。


シビルが氷うさぎに囲まれて何かブツブツと呟いてる。

「うふふふ、やっとみんな使い魔(家族)にできたわぁ。でも困ったわぁ。魔力()が足りないわぁ……。力が抜けてくぅ……」

「あら、ちょうどいいじゃない、シビル。使い魔の魔力()ならあるわ。ここに無限に」

『え?…………』

シビルと氷うさぎ達の目がキラリと光った。

「うさぎちゃん達ごはんですよぉ!!」

過去一元気なシビルの声が聖堂内に響いた。

『ちょっと……やめて!!』

氷ウサギが夢見の魔女の足元に集まって来た。

『やだ……力が抜ける……』

夢見の魔女の幻影がどんどんと薄らいでいき、やがて消えた。

『もうやめて……』

か細い声を残して、魔法石の聖堂は光を失っていった。



「えっと、何が起こったの?」

「ごめん。僕にもよくわからない」

「とりあえずは一件落着なのでは?恐らくもう大丈夫です。ここは寒いのでお屋敷へ戻りましょう。熱いお茶をお淹れしますね」

「チェンバーズ!!」

「チェンバーズさん!良かった!!」

呆気に取られて見ていた私とセシルに復活してきたチェンバーズさんが声をかけてきた。良かったみんな無事で。

「細かい説明は後。私も熱いお茶を頂きたいわ」

アビーも今はもう大丈夫だって言うから、私達は王都に戻ることにしたんだ。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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