ドラゴン襲来
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「え……あれってもしかしてドラゴン?」
夢見の魔女が手を上げると空を飛んでる魔物達が道を開けた。どこからともなく現れたのは赤黒い体と翼を持つ巨大なドラゴンだった。嘘……あんなのどこから来たの?さっきまで姿も見えなかったのに……。思考が停止して体も動かなくなる。他の人達も同じだったみたいで誰一人声も出さない。
王都の城下町から悲鳴が上がる。
我に返ったように動き出したのはさすがというか、バルコニーに出て様子を見ていた国王様だった。
「王都を守れ!!」
城中に響き渡る声。その声に呼応するように王太子様達が動き出して指示を出し始めた。
「ルーク、お前はモカ様、フィロメーラ、魔法使いと共に陛下をお守りしろ!」
「ハーヴェイ、お前は王都の北側、私は南へ!」
そこへ立派な服装の兵士さんが声をかけてくる。たぶん近衛騎士なんじゃないかな。
「殿下!我々が対応いたします!どうか避難を!」
「クロフォード侯爵令息が言った通り、今は火急の時。民と王無しで王国は成り立たない」
きっぱりと告げると兵を率いて城を出て行った。国民の為に危険を顧みないなんて立派な王子様だ。
「すごい……」
統率の取れた動きに感心していると、セシルに手を握られた。
「僕から離れないで」
セシルは巨大なドラゴンから目を離さずにそう言った。
「うん。私達もみんなを助けに行こう」
たぶん空だけじゃなくて地上にも魔物がいるはずだ。
「それも大事だけど、まずは力の供給源を絶とう」
「供給源……あ、そうか!チェンバーズさん達を助けに行くんだね!」
「あんなに大きな魔物を操るにはかなりの魔力が必要だろう。それを絶てればこっちが有利になる」
城を出れば転移魔法が使える。すぐに氷の大地へ行って私の魔力を注ぎこめば三人は解放できる。
「行こう、リサ!」
「うん!」
私達は手を繋いで城を出た。
城を出る時、ドラゴンの炎のブレスが城を襲った。誰かが結界を張ったのかブレスは城に届く前に弾き返されてて、ホッとした。あんなすごいの弾き返せるなんて、たぶん桃佳とフィロメーラさんと学園の先生達だろう。もしかしたらみんなで連携してるのかも。桃佳達がいれば城は大丈夫だ。でもいつまでもはもたないかもしれない。急がなきゃ。
王都は混乱の極致だった。逃げ惑う人達を魔物が追いかけてる。魔物の数は前に南の荒野で見た時とは比べものにならないくらい少なかったけど、それでも魔物一体で十分な脅威だった。セシルと私は見捨てることも出来ずに近くにいた魔物を倒していった。
「急がなきゃいけないのに、これじゃあ……!」
セシルが剣を振りながら汗を滲ませる。焦る私達の目の前で更に状況を悪化させる出来事が起こる。助けた人達の何人かが突然結晶化した。
「これって、まさか……!」
「間違いない、魔法石だ」
結晶化した人を調べる私達の足元を何かが蠢く。慌てて飛びのくと地面からオーロラ色の魔法石が突き出すように飛び出してきた。
「魔力の供給源を増やすつもりか!」
セシルの言葉にハッとなる。夢見の魔女は魔力を持ってる人を片っ端から捕まえようとしてるんだ。ゾッとした。早く夢見の魔女を止めないと大変なことになってしまう。でも目の前で魔物に襲われてる人を見捨ててはいけない。どうしたらいいの?
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「ちょっと!このドラゴン手強すぎっ」
聖女モカは姿に似合わない悪態をついた。
「普通の魔物のようにはいきませんね」
陽光の魔女フィロメーラも焦りの表情を隠せないでいる。
「再生できるなんて反則だよ……」
魔法を宿した剣を構えてドラゴンを見据えるルークにも少し疲れの表情が見える。ステラ学園の教師達や城の魔法使い達がドラゴンに向かって魔法を放つが、傷つけた先から再生してしまう。唯一聖女モカがつけた左目の傷のみ再生が遅れていた。ドラゴンは恨みの籠った右目で聖女モカを睨み据えた。
「ちょっと!魔物を戦わせて自分は高みの見物?!文句があるなら下りてきて自分で言いなさいよ!この悪役魔女!!」
聖女モカは夢見の魔女を指差して怒鳴りつけた。
『私が悪役……?』
「そうよ!セシル・クロフォードを使ってコスモス王国の秘宝を奪いに来たり、どう見ても悪役魔女じゃない!!」
「ちょっと、モカ様!煽らないでください!!」
「だって!思い通りにならないから国を潰すっておかしくない?!」
「それはわかりますが、今は……」
『私は、私は、悪役じゃない!ただのモブでもない!!』
白いマントをはためかせた夢見の魔女はもう一度手を振り上げた。唸り声をあげて現れたのは青黒い体と翼を持つもう一体のドラゴンだった。
「あ、やば、増えちゃった……」
「モカ……」
「ああ、モカ様……」
そばにいたルークとフィロメーラは顔を青くした。
「でも大丈夫!だって私は主人公だから!」
聖女モカは何故か謎の自信を見せて微笑んだ。
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「本当にキリが無い!」
目の前に出てくる魔物を倒しながらセシルが叫んだ。どうしよう……本当にこのままじゃこっちの体力が尽きちゃう。どうにか一瞬だけでもこの辺りの魔物だけでも一掃できれば……あれ?一掃?私、できるかも……。思い付いた私はアビーに貰った魔法石を握り締めた。あれは初めての魔物討伐の時、魔物を閉じこめてやっつけたことがあった。それをやってみよう。時間稼ぎにしかならないかもだけど、その間に転移してチェンバーズさん達を助ける!!
「セシル!ちょっと抑えといて!」
「わかった!」
私は魔法石に魔力を込めた。そして魔力を広げてく。できるだけ大きな白銀の円。限界まで広げて広げて。汗がにじんでいく。やがて近くの魔物達が消滅していく。よし、もう少し範囲を広げて……。突然手の中の魔法石が光を失った。
「え?」
「たぶん魔法石がリサの魔力に耐えきれなかったんだ」
近くに来ていたセシルが驚いたように魔法石を見てる。
「どうしよう……。これはもう使えないの?」
「うーん、僕もこんな現象は初めて見るから……。しばらくすれば回復するかもしれないけど。やっぱりリサはすごいね」
褒めてもらえるのは嬉しいんだけど、今はそれどころじゃない。遠くの方に魔物の姿が見える。一応お城に集められてるけど、住民の避難はまだ終わってないのに。
「仕方が無い。今はあの聖堂へ向かおう。後は王国の兵士に任せて」
「うん」
頷いた瞬間空から魔物が舞い降りてきた。ドラゴンほどじゃないけど大きくて強そう。
「いい加減にして欲しいな」
セシルが苛ついたように剣を構える。私達の後ろでは城に入る為に長い列が出来ていて、小さな女の子が不安そうにこちらを見ていた。ダメだ。今転移したらあの子達が危ない。でも私は今使える魔法石を持ってない。手の中の魔法石は光を失ったまま魔力を込めてもうんともすんとも言わない。
力……、力が欲しい。どっかに魔法石転がってない?セシルが戦ってるのを見てるだけなんて。ん?んん?あの空を飛んでくるものは何?魔物じゃない。あれって!
「自力で戻って来たの?!」
おまたせ!とでもいうように何処からか飛んできて私の手の中にすっぽりとおさまったのは、コスモス王国の秘宝の魔法石だった。
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