特訓
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「もっと魔力の流れを滑らかにっ!」
コスモス王国の地下にある洞窟のような広間。ダンジョンの中のような空間に陽光の魔女の声が響く。
「くっ……」
私の手には光のロッド。魔法石をバットよりも複雑なその形状にするのにはとても集中力が必要だった。
「ふふっ。相変わらずフィロメーラは厳しいわね」
桃佳は金色の髪をかき上げて壁際で私達を見てる。桃佳もフィロメーラさんの厳しい特訓を潜り抜けてきたみたい。
「私も聖なる力のコントロールには苦労させられたわ」
今度は地下広間の天井を見上げて遠い目をしてる。
「しかし、もうレベル3の魔法石を扱えるようになったとは……!リサ嬢の呑み込みの早さには驚かされるのう……」
桃佳の隣、やはり壁際にはノワール先生が七つの魔法石の入った箱を持って立っていた。ちなみにその真ん中のくぼみにあるはずの魔法石は今私が持っているものだ。
「リサ様!!集中が途切れていますわ!」
「すみません!師匠!」
私は王宮の騎士見習いの制服を借りて着込み、アビーからもらった白い魔法石ペンダントを首から下げて、手にはステラ学園のノワール先生達が用意してくれた魔法石を持っていた。今やっているのはそれをロッドの形に変えて魔法を自由に使えるようになるっていう特訓だった。
シビルに氷の聖堂……ううん魔法石の聖堂から連れ出された私は、途中の街で待ち構えていた兵士さん達にコスモス王国のお城に連れて行かれた。すぐにでもセシル達を助けに行こうとしたけど、待っていた桃佳とフィロメーラさんに止められた。今行っても何もできないだろうって。厳しい言葉に泣きそうになったけど、桃佳とフィロメーラさんの言葉で希望が見えて、何とか踏み止まった。
「あんたはまだ全力を出し切れてないわ。私みたいにレベルアップすればあの魔女にも対抗できるわよ」
「クロックフォード様を救出にいかれるのは私の特訓をやり遂げてレヴェルアップされてからの方がいいでしょう」
「もちろん私も行くわよ。あんたのセシルを助けに行くんじゃないわ。この国を守るためよ!この国が壊されちゃったら困るもの」
「力を合わせて夢見の魔女を阻止したしましょう、リサ様!」
緑の魔女グロリアへの事情聴取と桃佳とフィロメーラさんの報告を受けて、夢見の魔女がこの王国を壊そうとしていることが判明し、危機感を持った王国がこの地下広間を私に使わせてくれることになった。戦力は一人でも多い方がいいということみたい。
フィロメーラさんは魔法の鏡で私達を見守っていてくれたんだけど、途中で聖堂が夢見の魔女の支配下にある巨大な魔法石だということに気が付いたらしく、危険を知らせようとしてくれたんだって。ただ、フィロメーラさんは陽光の魔女と呼ばれている通り、お日様の光が届かないと強い魔法が使えない。曇り空だったあの場所には遠く離れた場所から声を届けるのは難しかったそう。途中で晴れ間がのぞいてきてやっとシビルに私達を助けに行くように頼むことができた。お城の兵士さん達にも私達を迎えに行くように手配してくれていて、なんとか無事に王都に戻ってこれた。私だけ……。
「夢見の魔女の力を見誤っていました。考えていたよりもずっとずっと強大な力を持っていたようですね。普通に考えれば魔女一人に対して魔女四人そして使い魔である魔法使いが二人もいれば勝てないはずはありません。こちらの魔女一人が万全の状態で無かったとはいえ、リサ様は聖女でもあるのですから」
フィロメーラさんが苦し気に顔を歪めた。
「夢見の魔女の方が一枚上手だったって訳ね」
「ええ。夢見の魔女は周到でした。魔物を大量召喚するために消耗した魔力を補うためにおびき寄せられたと考えられます」
「そんな……」
聖堂に入った時の少し力が抜けるような感覚は気のせいじゃなかった。セシル達は今も魔力を吸われ続けているんだ……。
「もし、セシル達の魔力が尽きてしまったら……」
「魔力は生命力の一部のようなものだと思われます」
「あまりいい結果にはならなさそうね」
フィロメーラさんと桃佳の暗い言葉と表情に不安で不安で居ても立っても居られない。私はそれから三日間、寝る間も惜しんでひたすらレベルアップを目指した。
ノワール先生が用意してくれた魔法石はレベル1の魔法石が力の増幅。レベル2が四台元素の属性魔法を操る魔法石。レベル3が更なる魔力増幅の魔法石。そしてレベル4が防御魔法の為の魔法石。レベル5がもっとパワーアップを引き出す魔法石。レベル6が魔法の効果範囲を広げるための魔法石。ここまではできた。残る魔法石はあと一つ。レベルマックスの魔法石だけ。
「待ってて!セシル!もうすぐ助けに行くからね!」
慌ただしい足音が響いて来た。一人の兵士さんが走り下りて来て、フィロメーラさんに耳打ちをした。
「何ですって?!クロックフォード様が?」
抑えた声だったけど、私の耳にはその名前がはっきりと聞こえた。
「セシル……?」
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『力が、力がもっと欲しい。そうすればもっと……。そうよ、そうだわ。あの王家の秘宝を手に入れれば……』
夢見るように呟く声。
『お願いね。私のセシル』
夢見るように囁く声。
「はい。我が主」
目覚めるオッドアイ。セシルは剣を手にオーロラ色に輝く聖堂から姿を消した。
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