↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電車を降りたらそこは異世界でした 悪役令息と七人の魔女  作者: ゆきあさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/58

氷の聖堂

来ていただいてありがとうございます!




「さ、寒い……っていうより痛い……」

思ってたよりずっと厳しい寒さだった。正直舐めてた。氷の大地。キンと張りつめた空気が顔を刺してくる。

「きゃああっ!氷うさぎちゃんがいっぱいいるぅっ!」

元気なのは道案内に来たシビルだけ。

「うさぎなんて見えないけど、どこにいるの?」

「ほら!あそこ!」

指さす先に見えるのは限りない雪と氷の平原。そこに豆粒みたいな点々達。シビルに言わせれば遠巻きに私達を見てるらしいけど、うん、全然見えないや。


「リサ、僕から離れないで」

セシルの周囲は温かい。得意な魔法が火と風だと判明して、ずっと制御の練習をしてたんだって。セシルって努力家だよね。セシルの周囲には温風が吹いてて快適な温度になってる。エアコンみたい。

「うん、ありがと、わっ」

手を引かれて抱き寄せられた。

「セシル?!」

「何が起こるかわからない。絶対にそばにいてね」

「う、うん」

「そこ!いちゃついてるんじゃないわよ!」

「いちゃついてないよ」

アビーはここへ来てから妙にイライラしてる。寒いのが苦手なのかな?


「嫌な気配がするわ……」

アビーは額を押さえて曇り空を見上げてる。空からは今にも雪が落ちてきそう。

「近いんだと思う。これは当たりかもしれないわね。懐かしい匂いがするわ」

チェルシーはアビーの隣に立って前方の平原を指差した。シビルも肯定したのでしばらくその方向に歩くとやがて氷で作られたような建物が見えてきた。

「あれですぅ!扉の開かない聖堂。あれのせいで転移魔法も使えなくて困りますぅ」

シビルは氷うさぎの為にこの辺りの雪や氷を自分の作った里に運んでるんだけど、転移魔法が阻まれてこの周辺には転移できないそう。だから私達も歩いてここまで来るしかなかった。

「余程近づかれたくないのね」

「それに凄まじい魔力量だわ」

アビーとチェルシーの緊張が伝わって私はセシルの手をぎゅっと握った。


今回は桃佳(もか)とフィロメーラさんはお城で待機。二人とも一緒に来たがったけど許可が下りなかったんだ。またいつ魔物の大量発生があるかわからないからって泣きつかれたらしい。ただフィロメーラさんが魔法の水鏡で見守ってくれてるんだ。だから何かあれば時間はかかるけど駆けつけてくれるって言ってくれた。ちなみにハーヴェイ王子も来たがってたらしいけど当然のように却下されたみたい。






「びくともしませんね」

「僕の剣でもチェンバーズでも駄目か」

聖堂の扉はやっぱり開かなかった。二人が剣で切りつけても傷一つ付かない。氷でもガラスでもない不思議な素材の建物だった。

「リサ、アビー、力を貸しなさい」

「いいわ」

チェルシーとアビーが扉の前に立った。


「え?私も?」

魔法石を握りしめて焦った。

「えっと、じゃあハンマーとか出せばいい?」

「何を言ってるのよ……」

私の言葉にちょっと脱力するチェルシー。

「扉に三人で魔力を注ぎ込むのよ!」

アビーの言葉にやっと合点がいった。なるほど!三人の魔力を合わせて扉を開けようってことね。

「でも私、封印の解き方なんて知らないよ?」

「大丈夫よ、私が魔力の向きを操るから」

チェルシーは私達の魔力を束ねて扉の開錠を試みた。


やがてパキンッって何かが割れたような音がして扉の何かが壊れた。


「開いたわ」

チェルシーが不敵に笑い、開いた扉から中へ入って行った。アビーが後に続く。

「あれ?シビルは?」

「氷の魔女様でしたら、あちらへ向かわれました」

「もう私の役目は終わったぁとか言ってた」

チェンバーズさんが手で指し示したのは、さっき見た雪と氷の地平線。セシルも同じ方角を見てる。

「一人で大丈夫かな……」

「いつも一人でここに来ているんだろう?だったら大丈夫だよ。僕らも中へ入ろう」

「うん、わかった」


先に入って行ったチェルシーとアビーに追いつくために私達は急いで氷の聖堂の中へ入った。ガランとした大きな空間。天窓からは薄い光がさしこんでる。冷たい氷色の広間の中央には何か氷みたいな箱が置かれてる。恐る恐る近づいてみるとそれは、棺みたいだった。だって……。

「死んでるの?これって……」

そう。その中には私と同い年くらいの女の子が横たわってたんだ。


『何しに来たの』


突然、声が聞こえた。耳に届く音じゃなかったみたい。頭の中に直接響く声?これがテレパシーってやつ?

「この声!!間違いないわ。あんたが、夢見の魔女ね!!」

チェルシーが虚空に向かって怒鳴りつけた。

「そうね、私に話しかけてきたのもこの声だった。この中で眠っているのが夢見の魔女、あんたの体ってことかしら」

アビーは氷の棺に近づいた。

「不用意に触れてはいけません。恐らくそれは魔法道具。巨大な魔法石ではないかと思われます」

チェンバーズさんがアビーを制した。

「わかってるわ。触ったりはしないわよ。何が起こるかわからないもの。でも……」

アビーはそこで言葉を切って少し考え込み、その後私を見た。何?


「似てない?ちょっとリサに」

「え?私?」

私は棺に触らないようにして覗き込んだ。眠ってるのは黒髪の女の子。確かに私と同じ日本人って言われても違和感はないかもしれない。

「似てる……かも?」

「全然似てない」

「セシル?」

「リサの方がずっと綺麗だ」

「セシル、それはちょっと……」

贔屓目に見すぎだよね……。

「確かにリサの方が美人だけど、そういうことじゃないわよ。私が言いたいのはこの夢見の魔女は渡り人なんじゃないの?ってことよ」

アビーまで何言ってんの!って言いかけて止まった。今何て言った?


『渡り人……かつて私もそう呼ばれたことがあったわね』












ここまでお読みいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。