居場所
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「それで?陽光の魔女殿と聖女様がこちらへいらした理由は分かりましたが、時の魔女殿と氷の魔女殿はどうして僕達の屋敷へ?まさか、お茶の時間を狙ったわけでは無いのでしょう?」
セシルは不機嫌顔でアビーとシビルを見た。
確かにチェルシーはチェンバーズさんの妹だから、ここを訪ねてきてもおかしくない。そういえばアビーとシビルはどうしてここに来たんだろう。セシルの棘のある口調にシビルがビクッとなってアビーの背中に隠れた。反対にアビーはセシルの態度をものともしてない。
「聖女サマ達と一緒になったのは偶然よ。夢見の魔女の事を聞いて思い出したことがあって、少し調べてきたの」
「どういうことだ?」
「何か知ってるの?!」
アビーの『夢見の魔女』という言葉に、セシルとチェルシーが即座に反応した。セシルは間接的に、チェルシーは魔力を封印されるっていう実害を伴って迷惑をかけられてるから、そういう反応になるのは分かる。
「先代の時の魔女の弟子の中に夢の研究をサブテーマにしてた魔女見習いがいたの。弟子だったのは短い間だったけど永遠に夢を見るとか他人の夢に干渉するとか、そういうのを研究してたらしいのよ。研究メモと一緒に日記が残ってたわ。もしかしたらその人かもしれない。あと、ほら、シビル!」
アビーに促されてシビルが恐る恐る話し始めた。アビーの背中からちょっとだけ顔を出してる。よっぽどセシルが怖いんだろうね。
「私のぉ、研究フィールドの氷の大地に閉ざされた聖堂がありますぅ。そこには何か強い魔法がかけられていて魔法を使っても開けられませんでしたぁ。氷うさぎちゃん達には関係ないのでほ放っておきましたけどぉ」
「そこが一体なんだっていうんだ?」
セシルは普通に尋ねたんだけど、シビルは「ひっ」って言ってまたアビーの後ろに隠れてしまった。
「ああ、もう!仕方ないわね!その氷の聖堂へ行ってきたんだけど、私でも封印が解けなかったの」
「なるほど……」
「何がなるほどなの?フィロメーラ」
納得したような顔のフィロメーラさんを不思議そうに見つめる桃佳。
「魔法での封印ということになると、解除する為には封印を施した者以上の魔力が必要となります」
「あ、そうか!つまりシビルやアビーに封印が解けないってことは、それ以上の力を持った魔女か魔法使いが関わってるかもしれないってことですか?」
「その通りですわ、リサ様」
「じゃあ、その氷の聖堂とやらの中に夢見の魔女がいるかもしれないってことか!」
「うん」
私はセシルと顔を見合わせて頷き合った。
「それは興味深い情報ね。確かめてみる価値はありそうだわ」
チェルシーの瞳に好戦的な光が浮かぶ。
「神出鬼没な夢見の魔女。声や魔法の気配を追っても、居場所は掴めませんでした。人の住めない氷の大地とは……盲点だったかもしれないですね」
チェルシーとチェンバーズさんはチェルシーの魔力の封印を解くために、ずっと夢見の魔女を探してたんだ。
私も夢見の魔女に聞きたいことがいっぱいある。あなたは一体何を望んでるの?私達の世界の小説と何か関係があるの?もしかして私や桃佳と同じ渡り人だったりするんだろうか。
結局その日は桃佳やフィロメーラさんとも情報を共有して解散になった。氷の大地へ行くとなるとそれなりに装備も準備も必要だから、それぞれに万全の体制でみんなで向かおうって話になったんだ。夢見の魔女はかなり強い魔力を持っていそうだから。
夢見の魔女が小説の事を知ってるかもしれないって伝えると、桃佳は凄く驚いてた。
「じゃあ、私ってその魔女に召喚されたってことかしら?」
「召喚……そうかも」
「やっぱり主役は私!!里沙はおまけね」
「そうだね……」
ちょっと前みたいに話せるようになったとはいえ、やっぱり桃佳は桃佳だった……。
その夜、ベッドに入った私はそれまでも時々考えていたことをまた思い返してた。私が元の世界の家族のことを気にしてることを夢見の魔女には見抜かれてた。弟や妹やお母さんのことを心配な気持ちもあるし、心配されてるだろうなって思ってる。
セシルが最近やけに私にくっついてくるのは私がまたいなくなるかもって不安になってるからだよね。今夜も一緒に寝ようとしてたけど、チェンバーズさんが止めてくれて助かった……。
「私、セシルと婚約してるんだよね」
婚約って結婚の約束なんだよね。近い将来私はセシルと結婚する約束をしてる。私はセシルのことが好きだし、約束を破るつもりは無いし、元の世界へ帰れるとも思ってない。私の居場所はもうここなんだって思ってる。
「でも、それはそれとして!夢見の魔女には是非文句を言ってやりたいわ!私やセシルや他の人達の人生を弄ぶような真似してくれたんだから、きちんと謝ってもらわなきゃ!」
私は元の世界と同じように見える月と星空に向かって決意を新たにした。
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